「野球をする上での”技”を持っている」元メジャーリーガー 川上憲伸さん 身体障害者野球を観て感じた工夫の数々とは?

9月9日〜10日、バンテリンドーム ナゴヤで行われた「第5回世界身体障害者野球大会(WORLD DREAM BASEBALL、以降WDB)」。

”もうひとつのWBC”と称される身体障害者野球の世界大会では、プロ野球史を彩ってきた名プレイヤーや元メジャーリーガーが駆けつけ、開催を祝った。

その一人が開会式で始球式を務めた川上憲伸さん。

中日ドラゴンズのエースとしてここバンテリンドーム(当時ナゴヤドーム)を主戦場に最多勝2回(2004年、06年)、沢村賞・MVP(ともに04年)を獲得するなどチームの黄金期を牽引。08年オフにアトランタ・ブレーブスに移籍し、メジャーリーグでもプレーした。

今回は、国際試合ということでブレーブスのユニフォームで登場し、慣れ親しんだ球場で第一球を投じた。始球式後、川上さんにお話を伺った。

(写真 / 文:白石怜平)

川上さんが語る身体障害者野球を実際に観た印象

名古屋で初めて行われたWDBの始球式。その大役を終え、「緊張しました」と最初に述べた。

始球式でストライク投球を見せた

身体障害者野球ではパラリンピックのように上肢・下肢などでのクラス分けや年齢、性別などの制限がなく、同じグラウンド、統一したルールで行うのが魅力の一つ。

第一試合の台湾ーアメリカ戦を観戦していた川上さんは、感じた印象を語った。

「みなさんそれぞれ工夫をされていますよね。今アメリカのキャッチャーの選手が投げましたけども、片手ですぐ持ち替えて投げるといった”技”。野球をプレーする上での技を持っているので、見ていてレベルが高いと思います」

川上さんが挙げた米国のショーン・ドノヴァン捕手は右手でミットからボールに持ち替えている

川上さんが感銘を受けた”工夫”。身体障害者野球ならではのルールである打者代走(※)のシーンを見てこう続けた。

「今このように打者の代わりに走る選手を置いていますけれども、”走れないから辞めよう”ではなく、”打つことはできるから走れる選手を置こう”というアイデアが素晴らしいですよね。

僕は小学校の時に野球をしたくてもグラウンドがなかったり、スペースが限られていた時に、ベースを2つにしてルールを考えてみたり、野球版のようにやったりして工夫をしてやっていたのを思い出しました」

身体障害者野球ならではのルールである「打者代走」

(※)打者代走とは下肢障害の選手に適用可能なルールで、三塁と本塁を結ぶファールラインの延長線からバックネット方向へ1メートル後ろの地点で、打者の代わりに走ることができる。

想像し、感じた身体障害者野球の意義

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