身体障害者野球 「第23回全日本身体障害者野球選手権大会」開催。初出場そして連覇チーム、それぞれの物語

千葉ドリームスターが発足10周年の節目に初参加

今大会注目は2チーム。1つ目は選手権初出場となった「千葉ドリームスター」。

千葉ドリームスターは、千葉県唯一の身体障害者野球チームとして2011年に本格始動。

同県の出身で今秋、読売巨人軍の2軍打撃コーチに就任した小笠原道大氏が現役時代に「夢を持って野球を楽しもう」という想いを込めて創設した。

10年の節目を迎えた今シーズン。昨年からのコロナ禍でも感染者を1人も出さずに活動を継続してきた努力が実り、9月の関東甲信越大会を初制覇。初の選手権出場となった。

選手は片腕の欠損や神経損傷といった上肢障害から、片足の義足や両脚の下肢障害そして半身麻痺の選手など種類はさまざま。お互いの障害を補い合いながら、ほぼ毎週練習や試合を積み重ねている。

また、「初めて練習参加した時に明るい雰囲気に惹かれた」と入団を決める選手が多いことから、常に活気ある雰囲気が特徴の1つである。

初戦は北海道・東北代表の「仙台福祉メイツ」との対戦。

先発投手はエースの山岸英樹。左半身麻痺の障害を持つ山岸は現在、パラ陸上(走幅跳・やり投)にも挑戦する競技の”二刀流”。23年のパリ大会を視野に入れている。

途中ランナーを出しながらも、後続を絶つなど粘りの投球で「0」を刻んでいく。

先発した千葉ドリームスターの山岸英樹

一方、仙台福祉メイツも譲らず試合はお互いに緊張感に包まれた1点の重い試合に。2回裏、2塁牽制の際に仙台の3塁走者がホームインした際は両者で意見が割れるシーンも。お互いに主張がぶつかり合い、審判そして連盟理事も交え協議するなど30分近く中断した。

今大会では試合時間が100分の規定があり、時間を迎えた時点で打ち切りとなる。試合が重い雰囲気で進む中、千葉ドリームスターが1点ビハインドの5回、残り20分を切った中での土壇場で意地を見せる。

内野ゴロの間に土屋来夢が三本間で挟まれながら、捕手をかいくぐり本塁へのヘッドスライディング。まさに執念で1点をもぎとった。

裏の攻撃を抑え、同点のまま100分に。その場合大会規定で、スタメン9人が打順ごとにじゃんけんを行い5勝先取で決着をつける。ここでも4勝4敗と最後の9人目まで互角の勝負となるが、惜しくも敗れてしまう。翌日の5位決定戦へと回ることになった。

5位決定戦では、同じく初出場の龍野アルカディア(西近畿)と対戦。ここでは、投打で主軸を担う城武尊(たける)が悔しさを爆発させる。

地元広島県の身体障害者野球チーム「広島アローズ」時代に何度もこの地を訪れ、”もうひとつのWBC”と呼ばれる「世界身体障害者野球大会」の日本代表としても名を連ねる24歳の若武者はここでも投打に躍動。

ランニング本塁打を放つなど、2試合で打率.667。また、いずれもリリーフで登板し1本の安打も許さなかった。

本塁打を放った千葉ドリームスターの城武尊

試合は千葉ドリームスターが6-3で制し、大会初勝利。初の選手権大会は5位となった。

初出場となった大会、チームを率いた小笠原一彦監督は「「初めての球場、初めての対戦相手に空回りしてチカラを出し切れなかったのは残念でした。次こそ!があるように、まずは関東を勝ちきるチカラを付けていきたいですね」

と再度この地に戻ることを誓った。

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