身体障害者野球 「第23回全日本身体障害者野球選手権大会」開催。初出場そして連覇チーム、それぞれの物語

名古屋は選抜で優勝投手となったエースの水越大暉が両脚の手術のため約3年のリハビリに入っており、この試合は藤川泰行が先発。

甲子園経験者や日本代表選手が名を連ねる百戦錬磨の岡山桃太郎打線相手に、堂々の投球を見せる。

お互い譲らず2回以降ゼロ行進となりそのまま最終回に。マウンドには早嶋が上がる。2アウトながら走者を3塁に置き、球場に緊張感が包み込む。

スタンドで応援しているサポーターの面々が手を合わせて祈る中、早嶋の渾身の1球に相手打者のバットは空を切った。

1-0で試合終了。早嶋が最後までマウンドを守り岡山桃太郎に選手権連覇をもたらした。

連覇を果たした岡山桃太郎ナイン(提供:NPO法人 日本身体障害者野球連盟)

2日間の熱戦は怪我人を出すことなく幕を閉じた。当日発熱した関係者は0、現時点で感染者は出ていない。

5月の選抜に続き選手権においても開催実績をつくり、2021年を完走することができた。

山内理事長は昨年からのコロナ対策を念頭に置いた大会運営を行えたことに安堵の表情を見せながら、

「昨年からコロナ対策を念頭に感染対策に努めてきました。逆風のなか、11月の全日本選手権では2日間の通常日程で開催ができたことは大きな喜びです。

グラウンドで活躍する選手たちの生き生きした姿は見ている者を非常に勇気づけてくれました。特に決勝は1点を争う緊張した良い試合で、両チームともコロナ禍でも練習を積んできたことが伺えました。

今後も厳しい状況も予想できますが、来年は青空の下、ほっともっとフィールド神戸で16チームと会えるよう、我々も選手やご家族の皆さんに安心して参加できる工夫をし、努力をして参ります」

と語り、来年5月の選抜大会開催へ意欲を見せた。

また、前述の岡山桃太郎・杉野さんにおいても「長年連盟にご協力いただきましたので、訃報は悲しく、今大会の晴れ姿も見てほしかったという気持ちはあります」とコメントを寄せた。

現在、身体障害者野球では実話を基にした映画「4アウト」の制作を、コロナ禍の中断から再開されようとしている。これに先立って日本プロ野球名球会協力のもと、身体障害者向けの野球教室が11月より開始した。

11月14日には愛媛県で山田久志氏と駒田徳広氏、12月5日には香川で土井正博氏が講師となり、1日かけて指導を行った。

年明けには身体障害者野球のルーツで名門チームである「神戸コスモス」発足のきっかけをつくった福本豊氏(同連盟名誉理事長)が兵庫で開催するなど、今後全国へ展開する。

2022年、身体障害者野球はさらなる盛り上がりを見せ、パラスポーツに新たな風を吹き込んでいく。

(取材 / 文:白石怜平)

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