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”ダブルアニバーサリーイヤー”福岡ソフトバンクホークス 球界のモデルケースになった歴史と30年以上大切にしているホークスの伝統

地域密着を表現するメディアとの絆

南海電鉄からダイエーへ球団が譲渡され、福岡へ本拠地の移転が発表されたのは昭和最後の年の88年。

当時は12球団のうち関西に4球団、首都圏に6球団と集まっていたが、ホークスは九州唯一のプロ野球チームとして、移転してから地元福岡そして九州に根付いた企画やファンサービスを行ってきた。

やがてホークスは九州のシンボルとも言える存在になるとともに、04年には日本ハムが北海道へ移転、05年に東北で新球団の楽天が誕生し、両チームとも地域に愛される球団となった。

今シーズンも多くのファンが声援を送った

プロ野球における地域密着は、ホークスが35年前からその礎を築いた。地域密着についての取り組みや事例は数多くあるが、特に地元メディアとは強い絆で結ばれている。

「特にテレビは民放各局に加えてNHKも試合中継だけでなく、毎日朝の情報番組や夕方のニュースなどに5分から10分ほどホークス情報を放送していただくなど、すごく応援してくれる文化があるんです」

その文化と広報の方々のアイデアが融合し、斬新な取り組みを今年生み出した。それは、毎年6~7月頃に行われる「鷹の祭典」プロモーションでのことであった。

現在では毎年全球団で行われている来場者へのユニフォーム配布。これは04年に同イベントで行われたことから始まったのだが、特筆すべき点はそれだけではなかった。今年のイベントでメディアとの絆が強いことを象徴するエピソードがあった。

「今年は絶対勝つということで、必勝祈願をやりたいと。出荷前のユニフォームに祈願するという企画だったのですが、我々広報としては、チケットを発売するタイミングをうまく合わせて、どう盛り上げるかを考えていました」

そこで出たアイデアが、県の民放5局のレポーターが一堂に集結し心をひとつに必勝祈願を行ったことであった。

”ファン代表”として民放全5局のリポーターが参加した ©SoftBank HAWKS

「”ファン代表”という形で、ホークスのコーナーを持ってらっしゃる各局のリポーターさんに必勝祈願の参加をオファーしたら全局快諾いただいたんです。それで5局のテレビカメラで同じ出来事・同じ並びを一斉に撮っていただいて、それぞれの局で編集して放送してくれるといったとても斬新な企画をやりました」

同じ企画でありながら違う角度で観ることができ、かつどの局を選んでもホークスの必勝祈願の様子を知ることができるという、メディアを巻き込んだ地域一体の企画となった。

「各局の垣根を越えたコラボレーションもありますが、ホークスを起点に5局絡むという企画は業界的にもインパクトを与えられたと手応えを感じています」

この必勝祈願はホークスを起点に局の垣根を超えた ©SoftBank HAWKS

球場との一体運営も早くから実行へ

球場周辺のまちづくりや、地域密着といった活動の他にホークスが球界で早くから実現させたこと。それは球場との一体運営である。ホークスは12年の3月に約870億円でシンガポール政府投資会社(GIC)から買収することを発表。

これにより、本拠地のPayPayドーム(当時は福岡Yahoo!JAPANドーム)が球団の持ち物になった。

PayPayドームは球団の所有である

この10年の間、横浜DeNAベイスターズが横浜スタジアムの運営会社である「株式会社横浜スタジアム」を買収したり、北海道日本ハムファイターズによる「ES CON FIELD HOKKAIDO」の建設・移転など、プロ野球界でも各球団が努力を重ね、自前で球場を持つ動きが行われてきた。

ホークスはすでに10年以上前から一体運営を実現。買収前は年間約50億円もの使用料を支払っていたが、それが不要となる以外にも、様々なメリットを受けられるようになった。

「球場と球団が別での運営だと、施設や座席を新しくつくり変えるであったり、広告看板を新規に入れる際には調整ごとが難しかったり、時間がかかったりしてしまいます。

それが自社になることで、社内の判断ですぐに実行できます。なので、いろんなアイデアを集めてユニークな広告看板ができたり、これまでとは違うスポンサーを獲得するなど、フットワーク軽く動くことができます。

あとは何より物販とかグルメなども自社でできることで大きな収入源になるので、球団が自分たちの施設を持ってやることはすごくメリットがありますよね。それは他球団さんも同じ考えを持って実行されているのだと思います」

ビジョンやフェンスなどの広告も幅広いかつ迅速な掲載ができているという

PayPayドームでは快適かつユニークな席種が新たに設けられたり、球場内の広告が毎年リユーアルしている。それは、一体運営ができているからこそ迅速にファンのニーズに応えることができているのである。

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