福岡ソフトバンクホークスの”まちづくり” PayPayドームと「BOSS E・ZO FUKUOKA」から創られる福岡の新エンターテインメント拠点

野球の枠を超えたさらなるニーズの発掘へ

「BOSS E・ZO FUKUOKA」は18年11月に建設が発表され、約3年近くかけてつくり上げてきた。この構想は17年ごろに始まったという。池田さんはその経緯について解説した。

「球団としては、野球における演出などエンターテインメント性を長く追求しており、次は野球の域を超えて新たなニーズをつくりたい想いがありました。と言いますのも、PayPayドームは野球の試合を開催していない日でもコンサートを開催したりなど、年間ほぼ100%稼働しています。ビジネスにおける先の展開として、野球で培ってきた”エンターテインメント”を強みとして、何かできないかというのが始まりです」

球場の外へとチャンスの拡大を目指した中、そのヒントは野球そしてエンターテインメントの本場・アメリカにあった。

「球団幹部をはじめこれまで発信してきたこととしては、ラスベガスやアトランタのような”街中がエンターテインメントになっているような空間”というのを描く理想として考えていました」

福岡ソフトバンクホークス 池田優介広報室長

参考の一つになったのがアトランタ・ブレーブスの事例。1997年からは前年アトランタオリンピックのメイン会場を野球用に改修したターナー・フィールドを使用していた。

16年に20年間借用期間満了に伴い、17年からは郊外のコブ群に位置するトゥルーイスト・パークを本拠地としている。注目すべきは、球場と周辺一体のエリアを球団が”街”につくりあげたことにある。

PayPayドーム周辺も多くの方が集まる”まち”になっている©SoftBank HAWKS

元々はほぼ雑木林だった土地を球団が買取り、球場を建設。その周辺にオフィスやホテル、インキュベーションラボなどができていった。これらのエリアは球場と街の関係を野球の投手と捕手になぞらえて”The Battery Atlanta”と名付けられている。

野球観戦という観光・娯楽に加えて、新しいビジネスやイノベーション、そして生活圏が形成される。何もなかった場所に経済が回り栄えることで、新たな価値を球団が生み出している。

球団も野球に限らずヨーロッパなどにも足を運び、視察を重ねて現在の形をつくっていった。

「まさにここもドームの隣にはショッピングモールがあり、周辺にはヒルトン福岡シーホークさらにマンションもあります。このエリアが昼夜問わず365日楽しめるエンターテインメントの空間を求めた形が今に至ります」

次ページ:コロナ禍まっ只中のオープン、約2年半は忍耐の期間に

関連記事一覧