
川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 240人のビジネスマンに向けて語った“リーダーとしてのコミュニケーション”
6月6日、川崎市内で「篠山竜青選手が語る、チームマネジメント論や組織内コミュニケーション 特別セミナー」が行われた。
2024-25シーズンも川崎ブレイブサンダースでキャプテンを務めた篠山竜青選手が、自身の経験で培ったリーダーとしての考えなどを語った。
(写真 / 文:白石怜平、以降敬称略)
1000名以上の応募から240名のビジネスマンが参加
この日は240名が参加。事前に応募を募集した際には1000人以上の申し込みがあり、抽選で選ばれしビジネスマンが集まった。
大きな拍手で迎えられた篠山は「緊張していますね」としつつも、「オールスターのミッキーを振り返る会じゃないですよね?(笑)」と早速会場の笑いを誘いながらスタートした。
篠山は前身の東芝ブレイブサンダース時代から在籍14年で述べ10シーズン、さらには日本代表でもキャプテンを務めてきた。
在籍年数のほとんどをキャプテンとして過ごしているが、お題に入る前に高校時代の意外なエピソードを披露した。
「僕はどちらかというとキャプテンを困らせる方だったかもしれません。キャプテンと同じ部屋にさせた方がいいって、同部屋になったこともありました(笑)。
ですので、前からリーダーシップがあったとは言えないタイプの人間でした。
このセミナーに応募したということは、きっと何か悩みや行き詰まっていることがある方もいらっしゃると思うので、そんな皆さんの明日につながる話ができればと思っています」

チーム状況の中で変わるキャプテンとしてアプローチ
まずはキャプテンの“違い”についてのお題に。
川崎は今シーズン苦しい戦いを強いられたが、JBL・NBL時代や天皇杯では何度も優勝を果たし、Bリーグ発足後も毎年のようにチャンピオンシップへと進出している。
酸いも甘いも味わっているが、チーム成績におけるキャプテンとしての違いはあるのか。まず強いとされている時の状況を説明した。
「強いときはやはりそれぞれの個性が強かったです。 それぞれのスペシャリストというイメージで、こだわりも強い。試合への準備の仕方であったり、気持ちの持っていき方一つでも個性がありました。
例えば、大事な試合でも普段通りロッカールームで明るく振る舞いたい選手もいれば、1人の世界に入りたい選手もいる。(準備の仕方が)異なる選手たちが2人並んで座っている状況もありましたから」
そんな時に考え、行動していたことは何か。MCの辻大地さんがさらに深掘りをした。
「選手たちを信頼して各々のスタイルでやってもらいつつ、目標は一緒です。“優勝”という頂上がある中で、それぞれ違う登り方をしていいと思うんですよ。 それぞれが考えるルートで行きましょうと。
でも何合目かではしっかり集まって、意思を確認しないといけない。結果が出ない時には、『今ルートあってるか?』『お前登れているか?』といった確認をすることがリーダーとしての僕の役割でした」

一方で変化の比較として、今シーズンはキャプテンとしてどのようにチームメイトと向き合ったか。篠山は以下のように明かしてくれた。
「今年のメンバーはキャリアの中で各チームの主力としてずっとやっていたというよりは、川崎に来てチャレンジする選手が多かったです。
まだ自信を持ちきれていないところもあったので、僕が先頭に立って引っ張るっていうよりも、後ろから『大丈夫だから行け!』『失敗してもいいから走れ!』って言葉をかけていました。
背中を押してみんなで登って行こうというイメージでしたね」
上司や先輩・後輩にも大切な「タイミング」
キャプテンを“中間管理職”とも語った篠山。特に実業団だった東芝時代がそうだったと言い、当時のエピソードを披露してくれた。
「週の頭に一回、ヘッドコーチたちとのミーティングがあるんですね。 その前に選手たちの意見を吸い上げて持っていくんです。それを持ち帰って展開してというのを繰り返していました」
ここでは「失敗もたくさんありました」とし、何が大事かを参加者に向けて明確に示した。
「タイミングってすごく大事なんだなと。言うタイミングを間違えて逆鱗に触れてしまうこともありました。
アウェーの試合で勝って『今がチャンス!』だと思って帰りの空港で打診したら、思った反応とは違ったとか(笑)。いつこの話を持っていくべきなのかをすごく考えるようになりました」

首脳陣とのやりとりの中で得た、伝えるタイミングの大切さ。これは、後輩へのアドバイスでも同様だと語る。
「自分の中で思い悩んでいる時ってアドバイスしても本人の中に入って来ないんですよ。相手から『どうすればいいですか?』って来た時に、“待ってました!”と助言を送る。
ここではスポンジ状態になってるので、少し水をあげると広がるように入っていくんです。
後輩の選手たちにおいてもタイミングはとても大切だと感じますし、コミュニケーションを取る・会話を重ねることも大事なんですけども、それを“いつ取るのか”という部分を、僕はすごく気にして実践するようになりました」
「共有すること」で足並みを揃える
セミナー内では事前に集めた質問の一部を篠山に答えてもらうコーナーも設けられた。
その中の一つに「何か新しい取り組みを始めるときに、どのように進めていけばみんなが同じ熱量を持って取り組めるか」という問いが寄せられた。
ここでも「思い出したんですが」と、逸話を明かしながら答えてくれた。
「ラグビーのワールドカップで盛り上がってる時に、代表選手がロッカーから出て行く際に、スローガンをみんな触ってピッチへ出ていくルーティーンがあって、それで1つになってるのが伝わってすごくカッコいいと思ったんです。
なので、『BE BRAVE』というクラブアイデンティティの横断幕をホームでもアウェーでもロッカーの前に貼って、僕らもこれをやりましょうと提案したのですが、反応がイマイチだったんです」

キャプテンとしてエネルギーが沸いている時は、特にアイデアがたくさん浮かんでくるのだという。ここで質問に立ち返り、新たな取り組みの際にベクトルを向ける方法を述べた。
「まずはメンバーに“共有すること”ではないでしょうか。『これをやってみたいんだけども、どう思う?』と事前に伝える。つまり、 温度感をまず揃えることですよね。
あとは自分もその温度感に合わせることも必要だと思います。 自分がもし盛り上がってたとしても、他が冷静だったら自分も一度冷静にならなければならない。
その温度感を揃えた上で、それでもやる意義であったり、目的だったり、根拠を説明できるようにしておくと、足並みは揃いやすいのかなと感じています」
セミナーは瞬く間に1時間を経過し終了を迎えた。最後は来シーズンに向けての意気込みを語って締めた。
「ベテランになればなるほど、数字に直結する仕事ができれば試合に出られますし、直結できなくなってくるとプレータイムが減っていくと感じています。
今季よりシュートを多く決められれば自ずと出場機会は増えていくと思いますので、来季はたくさんシュートを決めます!」
選ばれし参加者は篠山の経験からなる金言を聴き逃すまいと、ノートを取り続けていた。
篠山が10季にわたって築き上げたキャプテンとしての経験は、今後のキャリアそしてモチベーションに大きな力を与えた。
(おわり)
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