
新球場「ジャイアンツタウンスタジアム」が開業!スポーツとエンタメが融合する魅力あるまちづくりの中心地に
3月1日、巨人の新しいファームの活動拠点である「ジャイアンツタウンスタジアム」が開業した。昨季球団創設90年を迎え、ここからさらに新たな歴史を刻む日となった。
(取材 / 文:白石怜平)
巨人の歴史を築いてきたOBたちも参加
ジャイアンツタウンスタジアムは、東京都稲城市南山エリアに完成した新球場。
京王よみうりランド駅から徒歩約15分に位置し、地上3階建ての構造で約2900の席数がある。中堅122m・両翼100mというのは東京ドームと同じで芝は人工芝、サブグラウンドも隣接している。
よみうりランド遊園地に隣接するエリアで計画が進んでいる「TOKYO GIANTS TOWN」の中心地としてこの日開業を迎えた。
セレモニーでは主にこの球場で指揮を執る桑田真澄二軍監督を始め、阿部慎之助監督と駒田徳広三軍監督がユニフォーム姿で参加。

また、原辰徳前監督や堀内恒夫氏・高橋由伸氏という歴代監督に加えて、村田真一氏・槙原寛己氏・斎藤雅樹氏という名だたるOBも新たな歴史のページを共に刻んだ。

山口オーナーが挙げた一つが”多摩川グラウンドの再現”
午後12時半から始まったセレモニーでは、巨人の山口寿一オーナー(読売新聞グループ本社社長)・小池百合子都知事・稲城市の高橋勝浩市長から祝辞が寄せられた。
山口オーナーはこの球場で目指しているものとして3点を挙げた。1つ目は”多摩川グラウンドの再現”。
1955~98年に巨人の練習拠点として使用していた同グラウンドは、長嶋茂雄氏や王貞治氏などのV9戦士や、原氏や村田氏そして”先発3本柱”も泥にまみれながら猛練習を重ね、スター選手への階段を駆け登った場所。
ファンとの距離の近さが何よりの特徴で、時には多くの列をかいくぐりながらグラウンドを後にするシーンもたびたび映し出されている。
ジャイアンツタウンスタジアムはその距離の近さを再現した。2・3階のスタンドは客席を最大4列までにしており、選手のかけ声も聞き取れるような距離感で設計された。

一塁側のコンコースからはブルペンと打撃練習をガラス越しに見ることができ、合わせて多摩川グラウンド時代の懐かしい写真と共に楽しめる。
グラウンドレベルで1・3塁側にせりだしたエキサイトシートも設置されるなど、その距離感というのは各所に工夫が凝らされた。
山口オーナーも「若い選手たちがファンの皆さんの声援と激励を力に変え、明日のジャイアンツを担う選手になってほしい」と願いを込めた。
球団と地域を連携し、”まちづくり”を促進する
2つ目に挙げたのが地域貢献。試合やイベントがない日は近隣の方々が公園のように散策できるよう、コンコースや内外野のスタンドが一般開放される。
時にはグラウンドも解放される予定で、散歩やキャッチボールを楽しむとともに防災拠点にもなると山口オーナーは述べた。
セレモニーでの挨拶では、高橋勝浩・稲城市長も参加した。同市は、巨人軍と地域活性化の推進に関する包括連携協定を昨年8月に締結。
TOKYO GIANTS TOWN構想を中心とした、地域の活性化や魅力あるまちづくりに協力していくことを目的とした協定で、地域と球団が一体になって取り組みを進めている。
本球場は稲城市南山地区の土地区画整理事業である87haという広大な開発区域の一角に所在しており、球団からは約10年前に「この一角を球場用地として活用できないか」と相談があったことがきっかけだった。
「その後、関係各所と協議を重ねながら誘致する計画に至りまして、読売新聞さまからも球場にとどまらず、『TOKYO GIANTS TOWN』構想のもとに”まちづくり”をしようと願ってもない提案をいただき、ここまで拡大できまました」

今季から夏の高校野球大会の会場になることも決定しており、稲城市そして多摩地域の発展に尽力していきたいとも語った高橋市長。
「男子チーム・女子チームを通じて、将来のジャイアンツを支えるスター選手を育成する発信基地になっていくことを願っていると同時に、緑豊かな町づくりに向けてともに公民連携でがんばっていきます」
と最後に語り挨拶を締めた。
スポーツとエンタメが融合する場に
そして山口オーナーが挙げた最後の3点目が「スポーツとエンタメの融合」。
2年後の27年にレフトスタンド後方に、直結した関東最大級の水族館がオープンする。芝生の外野席からコンコースを通り、水族館へとアクセスが可能となるように建設が進められている。
また、同年には多摩丘陵からの眺望を生かした立地に飲食施設も展開される予定であり、これらの完成によって「TOKYO GIANTS TOWN」がグランドオープンとなる。
セレモニーでは山口オーナー、高橋市長に加えて小池百合子・東京都知事も登壇した。小池都知事はスタジアムを通じた地域発展について取り組んでいることを受け、このように挨拶。
「多摩地域はさまざまなポテンシャルを有しております。個性の色とりどりをもっと活かしていく『緑の玉手箱』になっていくよう一緒に取り組んでいきます」
加えて、東京ドームでの活躍を目指す未来のスターを育む場であることを踏まえ以下のように続けた。
「スタジアムにおいてはイースタン・リーグの若い選手たちが夢を追いかけ、そして新たな挑戦を続けることが野球界全体の発展につながる確信をいたしております。
みなさんの努力と情熱が次の世代のスター選手を生み出し、そして野球の魅力を高めてくれることを楽しみにしています。
スポーツとエンターテイメントは人々を結びつけて地域を活性化させます。この多摩地域の新たな活動拠点が東京全体に活力をもたらせてくれることを願っております」

現役監督陣がメッセージを送り、歴代監督が始球式に登場
巨人の監督3名もセレモニー後にファンの前で、新球場の印象を語った。
まずは一軍の指揮を執る阿部慎之助監督。
「この球場を初めて見てびっくりして素晴らしいですし、感動しましたし、羨ましさもありました。ここで戦った選手が一軍で近い将来、ジャイアンツを背負って立ってくれる選手が育ってくれることを願うばかりです」

このスタジアムを最も多く使用することとなる、桑田真澄二軍監督も続けてコメント。
「本当に素晴らしい球場ですし、僕もマウンドで投げてみたいですね。主に試合で使わせてもらいますが、この素敵な球場での試合を通じてたくさんの経験を積んで、そして成長していく選手たちをファンの皆さんも暖かく見守っていただきたいと思います」

そして最後は駒田徳広三軍監督。育成選手中心の選手たちを預かる立場として、やや厳しさも込めたコメントを寄せた。
「三軍の育成のチームには勿体無いです。もちろん上に上がってもらいたい気持ちもありますが、苦悩や挫折もあるかもしれないので、そういうところもファンの皆さんに感じてもらって、『ジャイアンツってこうなんだ』というのを見て応援していただけたらと思います」

そしてこの日と翌日は記念試合として、ヤクルトとの”東京ダービー”を開催。セレモニー後の初戦に先立って始球式が行われた。
投手は栄光のV9時代にエースを務めた堀内恒夫氏、打者には原辰徳氏そして捕手には高橋由伸氏と3代で受け継ぎ合った元監督の面々がグラウンドに再び登場した。
堀内氏がまっさらなマウンドに立ち、打席には原氏が立つ。グラブを持った高橋氏に向けて投げ込むと、原氏は現役時代を彷彿とさせる華麗なスイングで大きな拍手を呼んだ。


輝く歴史と現代が融合された新スタジアム。その巨人軍の新たな歴史の1ページが刻まれた価値ある1日となった。
(おわり)
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