
ソフトバンクホークス初のOB戦開催!常勝軍団の歴史がつながる試合は笑いと感動に包まれたストーリーに
3月23日にみずほPayPayドーム福岡で行われた「SoftBank HAWKS 20th ANNIVERSARY SPECIAL MATCH」。
ホークスの歴史を彩ってきた数々のOBが集まった特別な試合は、笑いと感動が詰まったものになった。
(取材 / 文:白石怜平、表紙写真:©SoftBank HAWKS)
ソフトバンクホークス初、誕生20周年を記念したOB戦
ソフトバンクホークスとして初のOB戦。チケットは瞬く間に完売し、球場は40,142人の観衆が集まった。チームは秋山幸二監督率いる白鷹軍と工藤公康監督率いる黒鷹軍に分かれて編成された。


選手が一人ひとりコールされると、往年の活躍を知るファンは都度大歓声でグラウンドへと送り出す。試合は14時に開始し、ソフトバンク初代監督の王貞治・代表取締役会長が「プレーボール!」と高らかに宣言してスタートした。

白鷹軍は攝津正・黒鷹軍は新垣渚がそれぞれ先発投手の大役を務めた。攝津は「ブルペンから球数を投げ込んでいました」と準備万端で臨み、現役時代と変わらない制球力を見せた。
その1回表に早速ハプニングが起きる。内川聖一の放った打球を左翼・宮地克彦が捕球後スタンドへ。しかし、フェアだったため走者の進塁を許し失点に絡んでしまう。
「本気でファールだと思いました(笑)内野陣の僕を見る顔がすごい表情でした」
宮地はイニング終了後の攝津のインタビュー時に釈明し、直接謝罪するという一幕で始まった。

本塁打を放った内川と松田との”W熱男ポーズ”
3回には秋山〜工藤政権時の最盛期を牽引した2人がダイヤモンド上で共演した。
白鷹軍は引退登板から中7日で登板した和田毅の後を受け、走者1人を置いて森福允彦が登板。黒鷹軍は李大浩の安打でチャンスを広げ、内川が打席に立った。
森福が投じた124kmの球を振り抜くと打球は伸び、ホームランテラスを超えてスタンドへ飛び込む3ラン本塁打に。

球場のボルテージは最高潮となり、三塁を守っていた松田宣浩と”熱男ポーズ”を見せ、打たれた森福そして工藤監督も帽子を取って迎えた。


その直後の長谷川勇也の打席では、三塁カメラマン席付近に飛んだファールフライを松田がスライディングキャッチを見せ、球場の熱気が冷めることはなかった。
ホームランダービーは”謙虚さ”で松田が優勝
3回表終了後にはホームランダービーが行われた。白鷹軍からは松田とフリオ・ズレータ、黒鷹軍からは内川と李大浩がエントリー。7スイングで本数を競った。
内川さんはその直前に試合でホームランを放っていたことから、「僕はあれがいっぱいいっぱいです」と笑ってみせた。松田から「勝負しましょう」とオファーがあったそうで、「マッチには負けない」と目標を3本に設定した。
李大浩からも「4本打って勝ちたい」と名前を挙げられた松田は目標を聞かれると「2本!」と謙虚に回答。ズレータは7本と宣言し、スタートした。

結果は、3本を放った松田が優勝に。序盤スタンドへは届かず0本もよぎった中、後半に次々とスタンドへ放り込み逆転での王座となった。
試合前の打撃練習でも軽々と柵越えを連発していた松田。
ケージの真後ろで見ていた秋山監督は「元気だなぁ。体動くね」と感心すると、和田も自身の頭上を何度も見上げ、「現役と変わらないなぁ。今日狙っていますね」と驚きの様子を見せていた。
松田は優勝という結果に「2本と言ったのが良かったと思います」とその謙虚さを要因に挙げた。
黄金バッテリー復活と”降板阻止劇”の裏側
試合が再開した3回裏にあのバッテリーが復活し、感動から笑いへと変わるシーンがあった。
マウンドには斉藤和巳。背番号「66」を身に着けてマウンドに帰ってきた。
そして捕手は、03年に20勝で投手3冠・沢村賞にも輝くなどの活躍を支え、13年引退時にセレモニアルピッチで最後の投球も受けた城島。
この日本一バッテリーの復活に場内はここでも大きな歓声が沸いた。

西田哲朗を見逃し三振・柴原を中飛に抑えたところで斉藤はマウンドを降り、工藤監督もベンチから出てきたため交代かと思われたが、城島がこれを制止。
工藤監督は投手出身らしく打者一人終える都度状態を確認し、斉藤も柴原との対戦を終えたところで降板の合図をしていた。

ただ、城島は工藤監督に「いいんですよ。壊れたら壊れたで別に明日から使うわけじゃないんで」(工藤監督談)と話し、斉藤にも説得し続投。
次打者の江川智晃の中前に抜けそうな打球を明石が見事に捌き、1イニングを無失点で終えた。

工藤監督はその時のやりとりについて試合後の監督インタビューで明かし、
「次の投手は用意していましたし、僕も投手の気持ちが分かるので変えてあげようと思いで一度(ベンチから)行きました。でもあの2人は黄金コンビですから、城島くんの言うことは和巳くんも納得するはずですから。そうだよな?」
とベンチに向けて確認し、斉藤は納得した表情を見せていた。
最終回は両軍監督による直接対決
そして最終回となる5回裏、ここまでも大きかった歓声が最高潮となる瞬間が訪れた。
まずは”リリーフ・俺”とビジョンに映し出され、工藤監督が自らマウンドに。師弟関係を築き、一流の捕手へと育てた城島とのバッテリーも復活を遂げた。
来月62歳になるが、現役時代と全く変わらない滑らかなフォームで観る者を惹きつけた。

昨年も数々のOB戦で先発投手として投げていることや、またこの日に備えて年末からトレーニングを重ねてきた工藤監督。
その相手として”代打・俺”と再びビジョンに映し出され、秋山監督が打席に立った。「俺が立つしかない」と、昨年3月の西武OB戦以来1年ぶりの対戦となった。

「やりすぎて腰が痛いのと、投げすぎて肩が痛いです」と試合前には明るく語っていたが、いざマウンドに上がると勝負師の顔に戻った工藤監督。
今もなお120km/hを超えるストレートと伝家の宝刀・カーブを駆使し、秋山監督を遊ゴロに打ち取った。
常勝ホークスを選手・監督の両方で築き上げた2人の英雄がベンチへ戻る時には惜しみない拍手が送られた。
MVPには内川とズレータが選出
試合は黒鷹軍が7−1で勝利。MVPは両チームから1名ずつ選ばれた。
まず白鷹軍からはズレータが選出。ここでムードメーカーでもある田口昌徳が”通訳”として共にお立ち台へ上がった。
ズレータの話を聞き入る田口から、インタビュアーから笑いながら「ちゃんと伝えてください!」とツッコミを受けるシーンも。最後は本塁打の際に行っていたパナマ運河のパフォーマンスを久々に披露した。

続いて勝利した黒鷹軍からは本塁打を放った内川がMVPに選ばれた。
「この後はやりづらいので、むしろ隣に田口さんいてほしいです(笑)」とスタートしたMVPインタビュー。
「現役と同じようなプレーはなかなかできないですが、今日現役と同じいいバッティングをしたのは僕だけだと思います」と活躍を誇った。
OB戦の参加についても、「嬉しいですね。子どものころから見ていた選手がいて、共に日本一を目指した仲間がいて、後輩もいて胸が熱くなりました」
と、この貴重な時間を楽しんだ内川。そして最後に自身が野球人として今後伝えたいことを交えながらインタビューを締めた。
「先輩方が見せてくれた『プロ野球選手ってかっこいいな』という姿を今の子どもたちにも感じてほしいですし、僕も同じ思いを伝えるために現役時代頑張ってきました。僕は現役を引退しましたが、どのような形でも野球って楽しいんだと伝えたいです」

初となったソフトバンクホークスOB戦は盛大に幕を閉じた。チームそしてファンにとっても過去と未来がつながる特別な1日となった。
(おわり)
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