
ソフトバンク初のOB戦 工藤公康監督は最終回に登板 秋山幸二監督との直接対決で現役さながらの投球を披露
3月23日、みずほPayPayドーム福岡で行われた「SoftBank HAWKS 20th ANNIVERSARY SPECIAL MATCH」。
白鷹軍と黒鷹軍に分かれたホークスOB戦は、監督にそれぞれ秋山幸二氏・工藤公康氏が就任した。工藤監督は指揮を執ると共に試合前から入念な調整を行い、自らマウンドへと上がった。
(取材 / 文:白石怜平 表紙写真: ©SoftBank HAWKS)
昨年末から登板に向けトレーニングを重ねる
ソフトバンクホークス初のOB戦。2005年に誕生してから20年の節目を迎えた。前身のダイエー時代から35年以上の年月を重ね、常勝ホークスとしての地位を確立した。
OB戦を通じてその歴史を振り返りながら、また新たに築き上げる一日となった。この試合の意義を以下のように述べた。
「僕らプロ野球というのは、先人の方たちの知恵や力があってのものです。球団の歴史においても今後どのように伝えていくかを考えると、このような形でお伝えできるのはとても大切なことですよね。
ファンの人たちは現役時代の記憶や思い出がしっかり残っている部分もあると思いますし、それも球団の歴史の一部です、なので、今日の試合が皆さんと継承できる機会になればと思っています」

常勝軍団の形成に大きな力となった一人が工藤監督である。現役時代は西武左のエースとして黄金期を築き、95年にダイエーへ移籍すると99年日本一の原動力に。今につながる常勝軍団の礎を築いた。
その後巨人でも2度の日本一に貢献するなど、現役時代は14度のリーグ優勝・11度の日本一を達成し「優勝請負人」としても名を馳せた。
そしてソフトバンクの監督として14年オフにホークスに復帰すると初年度から日本一へと導くと、17年からは日本シリーズ4連覇。在任7年で3度のリーグ優勝・5度の日本一と監督でも「優勝請負人」ぶりを発揮した。

ソフトバンクの指揮を執るのは21年以来約4年ぶり。監督時代に指導した選手や、城島健司CBOをはじめダイエー時代に共にプレーした選手など懐かしい顔ぶれが並んだ。
「それぞれの人生を頑張っていると思いますし、久々に会って語る選手もいますよね。当時のようにハツラツとしたプレーは見せられないかもしれないですが、できる限りの動きを見せてもらって、ファンの皆さんが『現役の時をこういう動きしてたな』と思い出してもらえるように頑張ってほしいです」

試合前練習では遠投を重ねるなど汗を流した。この試合に臨むにあたっての想いを問うと、
「僕は投げなきゃいけないので、どちらかと言うと現役の感じです(笑)」と早くも投手・工藤としてのスイッチが入っていた。
昨年は西武のOB戦やサントリードリームマッチ、そして名球会ベースボールフェスティバルの3試合に全て先発投手としてマウンドに上がった。
そして、発表会見で「しっかり変化球も含めて投げて練習していきたい」と語った通り、昨年末からこの日に向けて練習を重ねてきたという指揮官。
「やりすぎて、腰が痛いのと、投げすぎて肩が痛いです。ちょっとやりすぎました(笑)」と言うほどの準備を重ねた。試合前の最後には、ファンに”お願い”をして締めた。
「体は動かしていますが、だからと言って僕の球がだんだん速くなるわけじゃなく、年齢とともにだんだん遅くなっていきますので、その辺はご容赦お願いをしながら見ていただけたらなと思います」

最終回、大歓声を背にマウンドへ上がる
試合は自身が率いた黒鷹軍が7−1で勝利を収めた。試合後は監督インタビューが行われ、秋山監督と共にお立ち台へと上がった。
「勝負の世界でずっと生きてきましたし、勝ちに行って勝ったので大満足です。練習の時から選手も気合いが入っていて、試合が始まると闘争本能丸出しで行ってくれたので、それに応えられるよう選手起用を考えていました」
そして、この試合最大にボルテージが上がったのが”リリーフ、俺”と”代打、俺”の監督対決。最終回に満を持して工藤”投手”がマウンドに上がると、ネクストバッターズサークルから秋山”選手”も打席へと向かう。

工藤ー城島の師弟バッテリーも復活し、球場全体がこの時を噛み締めながら戦況を見守った。
工藤投手は現役時代と全く変わらないフォームで62歳という年齢を感じさせない投球を披露。今もなお120km/hを超えるストレートと100km/hのカーブを織り交ぜ、秋山選手を遊ゴロに打ち取り工藤投手に軍配が上がった。

「打者一人だったので秋山さんに立ってもらって、勝負になったかなと」
そう笑顔で振り返った。監督インタビューの最後には超満員のファンに向けて、「今年こそ日本一になれるよう、ファンのみなさんでホークスを支えてください」とメッセージを送った。
ホークスの歴史を彩ったレジェンド左腕は監督そして選手として、その歴史の1ページを新たに刻んだ。
(おわり)
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