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横浜DeNAベイスターズ 「最強投手育成シンポジウム」開催!小杉陽太コーチも参加した豪華プログラムに

5月某日、横浜市内で「最強投手育成シンポジウム」が行われた。横浜スタジアムでの熱気そのままに、抽選で選ばれた約150人の受講者が参加した。

試合後も熱い参加者で盛り上がった模様を前後編にてお送りする。

(取材 / 文:白石怜平)

試合を終えた直後に現役コーチも参加

本企画は試合以外にも未知の世界を体感できる「裏ベイチケ」の一環として開催された。

裏ベイチケは、これまで選手のスカウトを提案する企画や選手が手作りしたチケットなど、新たな観戦体験を提供する企画を行なっている。

今回のシンポジウムは企画する担当者たちの想いが形になった。ベイスターズのチケット部に所属する吉村優さんは背景を語ってくれた。

「近年野球界もデータ化が急速に進んでいます。さらに発展させるためにプロ野球、そしてベイスターズが牽引することでそのステップになりたい想いがあります。

指導や分析の現場で携わっている方に加えてファンの方も知ることで、チームへの還元や観戦体験の変化ももたらすことができる。

これをきっかけにスタジアムに来る楽しみを増やしていきたいと、考えました」

その言葉通り、この日はファンに加えて指導者やアナリストを志す学生など幅広い方々が集まった。

試合後の熱気が会場を包んだ

シンポジウムは、横浜スタジアムでのホームゲーム後に行われ、現役コーチを含む以下の5名が登壇した。

・吉川健一 チーム統括本部ゲーム戦略部部長
・小杉陽太 一軍投手コーチ兼投手コーチ
・田中洋 チーム統括本部ゲーム戦略部R&Dグループ
・四角純哉 チーム統括本部育成部S&Cグループ
・田村大聖 チーム統括本部ゲーム戦略部R&Dグループ

進行は公募時に示されていた予定議題や事前に集められた質問に沿い、5名それぞれの視点から解説が行われた。

投手を測る2つの指標

最初のお題は「良い投手の定義」について。

ここでは、データ活用や分析を強みとしているベイスターズだからこそ聴ける内容で紐解かれていく。

吉川さんは投手を評価する指標として「Pitching+(ピッチングプラス)」と「Stuff+(スタッフプラス)」を挙げ、それぞれの定義を説明。

「Pitching+」は能力を定量的に示す指標で、トラッキングデータ(ボールの軌道や変化の割合、球質など)やロケーション(ボールがどこに行ったのか)、カウントなどを加味し、「一軍の環境でどんな投球ができたのか」を評価している。

その評価プロセスを説明するにあたり、1球投げた際に起こりうるイベントを明示した。

「投手が投げると大きく分けると7つのイベントが起こります。①打者が見逃しをするか、スイングをするか。見逃した時にボールであればイベントは終わりです(=ストライクの場合イベント②)。

スイングをかけると③空振りかボールに当たるか。空振りすれば終わりですが、当たったらファールかインプレーか。⑤ゴロ・⑥ライナー・⑦フライのいずれかに分かれます」

指標の解説を行った吉川さん

挙げた7つのイベントに、トラッキングデータで抽出した球質やロケーションなどを加味する。これらを踏まえてできたモデルを使うと吉川さんは続けた。

「例えば“この球質のボールを投げたら見逃しが40%、スイングをかけてくる確率は60%になります”というモデルを使うのですが、それが各イベントの予測確率というものです。

あとは、各イベントによる得点への寄与度。プロ野球で統計的に広く出されているものなので、それを掛け合わせたものが「Pitching+」と言うものです」

解説がなされた「Pitching+」の定義

続いて「Stuff+(スタッフプラス)」の定義についても吉川さんから述べられた。

「『Stuff+』はロケーションの情報を抜いて計算したものです。つまり、純粋に球質だけで打たれたのか抑えたのかなどを評価しています。

打者との対戦結果は、どこに投げたかに依存します。良い変化球だけど、真ん中に行ったら打たれやすくなってしまいますし、多少変化が甘くても相手の苦手なコースにハマれば抑えられるためです」

解説を終えると、参加者に向けて丁寧に質問コーナーが設けられた。

ユニフォームを着ながら参加したベイスターズファン、また仕事や指導の現場で活用している社会人そして学生たちからも多くの手が挙がった。

質問の一つが「『Pitching+』や『Stuff+』を選手たちにどのように説明をしているか」

これは毎日選手たちと向き合っている小杉コーチから、数名の選手とのやりとりが紹介された。今季復帰したあの元サイ・ヤング賞投手とも丁寧に会話を重ねており、会場も興味津々で耳を傾けていた。

「バウアーからは、『Stuff+』をイチから説明してくれと言われたので、話をしました。フォーシームの数値を上げるにはどうすればいいかと相談を受けたので、(前回在籍していた)2年前のデータを比較して伝えたんです。

彼も自分で様々なデータを持っているので、指の力の差だったりも遡って深掘りして、何が課題なのかを自分で見つけて取り組んでいます」

現場での指導の様子を垣間見ることができた

球速は正義?

続いてのトピックは球速について。

「球速は正義か?」という問いに対して、ユニフォーム組の小杉さんは“YES”と即答。

「投手の球速が速ければ速いほどカウントが進むにつれて打者の打球角度や速度は下がります。投球の速さに依存するということです」

そのため、球速を上げることによるデメリットは「現場サイドはないので」(小杉コーチ)としたため、健康面の視点を聞くために田中さんへと話を振った。

田中さんは、球速が上がることに伴う身体面のリスクを挙げた。

「負担は間違いなく体にかかります。肘の内側に負担がかかるため、特にトミージョン手術のリスク。この割合は球速に関係するものなのでリスクは高まっていきます」

球速が上がることによる負担を述べた田中さん

選手たちのコンディションを最大限に考慮し、三浦大輔監督ら首脳陣とも連携して継投に活かしていると語る。

「球数1球ごとに負担がかかります。限られた人数でやりくりしないといけないので、1試合投げた投手を何日も使うのは健康維持に関わります。

継投として皆さんは疑問に感じる場面があるかもしれないですが、とても大切なことなのです。

選手が離脱してしまえば戦力ダウンになってしまいますし、選手生命にも関わってくる。なのでリスクを取れない場合がどうしても起こり得ます」

また、故障の予防にも力を入れている。ある動きから注意していることを四角さんが明かしてくれた。

「私達はジャンプ動作から得られる動きの質や数値をチェックしています。急に高くなるととリスクが高くなる。その時はアラートを立てて、声をかけるようにしています。

調子が良くて上がってるならいいんですが、『あまり良くないな』という時にジャンプ高などの数値が上がっていたら注意して見るようにしています」

四角さんたちが中心に故障の予防を徹底して行っている

その後はベイスターズが球速を上げるために行っている取り組みも紹介。ここでしか聞けない、選手に行った具体的なアプローチが特別に語られた。

新たな変化球習得で見極めることとは?

前半最後のトピックは「良い変化球とは?」

小杉コーチは、ベイスターズならではの定義として「平均から外れた投手」と述べた。

ここでの“平均”とは、球団が独自に抽出している指標と照らし合わせての平均値。ここでも選手の投球を元に受講者のイメージに色付けした。

「佐々木千隼のスライダーのように回転数が少ないけど、落ちずに横の曲がりが大きく、SSW(シームシフトウェイク)の影響を受けている投手や、中川虎大のように、サイドスピンで一定シュート成分があり、且つマイナス方向までボールが落ちる投手が平均から外れている投手です」

ここで区切り、受講者から質問を募った際に「1つの球種を習得したことで、他の球種に関わる影響はありますでしょうか」と問われると、「すごく良い質問ですね」と小杉コーチがすかさず答えた。

「実はすごく影響があります。私も選手が何かを覚えようとした時、本当に今習得する必要があるのか・他の球種に影響ないかを必ず見極めています。

特にカットボールは、かなりフォーシームに影響を与える球種です。

なので、自分がどういう投手なのかを踏まえて、フォーシームの質を落としてでもカットボールを習得してゴロピッチャーになりたい。そうであればOKといった見極めが必要になります」

盛り上がりを見せたシンポジウムは後半もさらに加熱していく。

つづく

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