
西川愛也・滝澤夏央・渡部聖弥そして山田陽翔 西武若手陣の飛躍に秘められた共通項とは?
2025年シーズンを戦っている西武では、開幕から多くの若手選手が台頭している。
故障以外でスタメンや一軍メンバーからほぼ外れることなく名を連ね、一人ひとりが戦力としてチームの勝利に貢献してきた。
その台頭してきた選手たちは、なぜ今季一軍で戦い続けることができているのか。前回に引き続き、眞山龍・本部長補佐に話を伺った。※全4回の第2回
(取材 / 文:白石怜平、表紙写真:©SEIBU Lions)
ファームで試行錯誤し続けた経験が今の礎に
主に投手を中心とした守り勝つ野球で勝利を掴んでいる今季の西武であるが、野手も次々に新戦力が登場し、レギュラーの座を掴もうとしている。 特に例として挙げられるのが西川愛也と滝澤夏央。
7年目の西川は昨年104試合に出場し、得点圏打率.347をマークするなど終盤には3番も担った。
現在は右肩の違和感で戦線を離脱しているが、開幕からリードオフマンに定着し、8月2日には球団70年ぶりの1試合6安打を放つなどリーグ最多安打を争う活躍を見せている。

滝澤は21年ドラフト育成2位で入団し、1年目の5月に支配下登録を果たす。昨季は68試合に出場し、今季は二塁と遊撃の両方をこなしスタメンを張り続けている。
ファームでもがいていた時から間近で見ていた眞山さんは、今の2人をこう評している。
「西川や滝澤はまだ1シーズン通じて出場していないので、今レギュラーとしての活躍をしようとしている途中の段階です。
西川は高校時代の大怪我がありながら入団して、一軍でもヒットが出なくて苦労した時期も長かったですが、それを克服して今があります。滝澤も育成で入って、恵まれた体格ではない中でも自分が生きる手段を見つけて一軍にいますよね。
2人に共通して言えるのは、ファームの試合に出続けたことです。その中で成功した・失敗した取り組みがあって、『なぜ良かったのか』・『自分の課題をどう解決するか』の試行錯誤を重ねました。それを一軍でも継続しているからだと感じています」

さらに野手においては渡部聖弥がルーキーながら主軸としての働きが光っている。5番・左翼で開幕スタメンの座を掴むと、クリーンアップで勝負強い打撃を見せている。
渡部が一軍で早速力を発揮しているのにも、先に挙げた話と共通していた。
「渡部は新人合同自主トレの時から、バッティングがいいのは一目で分かりました。ただ、野球以外の面で彼はすごく落ち着きがあるんです。
即戦力と言われる大学・社会人の選手でも、プロに入るとなると戸惑うと思うんですよね。そんな中でも彼はキャンプでどっしりと構えて入ってきてくれました。
獅考トレーニングにもあった、自分がチームの中で何を求められ・どう結果を出していくのかをしっかり話せていてすごく頭のいい選手です」

山田陽翔に訪れた昨オフの転機
ここまで西武の若手選手を数々挙げてきたが、強力投手陣を語る上でも欠かせないのが山田陽翔。高卒3年目の21歳は今季一軍デビューを果たすと、ここまで35試合に登板し、防御率は0.76である。
ストレートの平均球速は140km/h台前半ながら打者を翻弄するのが山田の投球スタイルだが、眞山さんはここについても触れながら、技術以外に大きな要因があると語る。
「近年の投手像で言いますと、先発・中継ぎ・抑え問わず常時150km/hを超えた速球があって、ウイニングショットも合わせ持つようなパワーピッチャーをイメージされると思います。
ただ、山田はそのタイプには当てはまらないですよね?彼が一軍で投げ続けられている一番の要因は“気持ちの部分”なんです」

近江高時代は松坂大輔らと並ぶ歴代5位タイの甲子園通算11勝・同4位の108奪三振をマークするなど、甲子園のスターとして注目を集めた。
大器の片鱗は高校時代からすでに見せていたが、培われた度胸に加えて自己理解がさらに実力を磨いていった。
「高校時代から大舞台も経験していますし、体も入団時にはプロ平均ぐらいの体組成はありました。
一軍の舞台で大観衆の元で登板して、さらにプレッシャーがかかる場面で毎日投げています。そんな中で今の自分の持っているもので何ができるかを彼は理解しているんです。
器用な選手なので、変化球を同じ腕の振りで振って相手打者を惑わせることができますし、ストライク先行でどんどん相手に向かっていく姿勢もあります。
あとは低めにボールを集めて丁寧に投げるといった、自分の特徴を知って活かせていることが、今の山田の好調の要因ではないでしょうか」

眞山さんは加えて、飛躍のきっかけがあったことを明かした。それは昨季後半からオフにかけてのことだった。
「実は2年目(24年)の前半までは球団としては先発での可能性を見たい考えがあったのですが、同年の後半ごろリリーフとしてのポテンシャルを感じたので見てみたいと。
ファームでリリーフを経験させて、オフシーズンに台湾のウィンターリーグに派遣したのですが、そこでリリーフとしての心の持ち方や準備の仕方を彼なりにしっかりと習得してくれました」
山田は昨オフ、台湾で行われた「2024アジアウインターベースボールリーグ」に参加。9試合で11イニングを投げ防御率0.82の成績をマークし、日本でも当時話題を呼んでいた。
この結果もあって春季キャンプから一軍メンバー入りし、現在まで活躍を継続している。
「今季は春のキャンプからオープン戦、そしてシーズンで着実に結果を出して今に至っていますが、昨年台湾のウィンターリーグで得た経験が飛躍の要因になっているのだと思います。
ただ今季が実質一年目で、この夏の時期が体の疲労も蓄積して精神的にも応えてくると思うのですが、ここが乗り越えるところです。あとは怪我をしないのが一番ですね」
人財開発に力を注ぎ、若手選手を一軍へと送り込んでいる西武。思考力の他にも、制度改革も選手の成長を促す要因となっていた。
(つづく)
【関連記事】
「ライオンズ整形外科クリニック」“動かしながら治す“運動療法で切り開くスポーツ界の未来