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「TOKYO UNITE」東京の15チームが”一緒だからこそ”創りあげるパワーで数々の社会課題の解決に

東京に本拠地を置くスポーツチームや団体で結成された「TOKYO UNITE」。

2022年7月にスタートした本プロジェクトは競技の垣根を超え、社会課題へのアプローチや子どもたちの可能性を育む活動を行っている。

歴史も種目も異なるチームが一つに結束し続けている要因や、これまでの取り組みについてなどをここでフォーカスしていく。

(取材 / 文:白石怜平)

発足のきっかけは北島康介さんからの相談から

現在「TOKYO UNITE」には78競技145チーム・団体(※)が参加している。

”スポーツの力で、東京を世界でもっともエネルギーに満ちた都市に。”

上記をコンセプトに掲げ、各チームや競技が持つ経験や知恵を結集させた活動を行っている。

(※)参加チーム

野球:読売ジャイアンツ・東京ヤクルトスワローズ
男子サッカー:FC東京・東京ヴェルディ・FC町田ゼルビア
女子サッカー:日テレ・東京ヴェルディベレーザ
バスケットボール:アルバルク東京・サンロッカーズ渋谷
ラグビー:東京サントリーサンゴリアス・東芝ブレイブルーパス東京・リコーブラックラムズ東京
ハンドボール:ジークスター東京
卓球:木下マイスター東京
水泳:Tokyo Frog Kings
相撲:日本相撲協会

TOKYO UNITE誕生の発起人は水泳界のレジェンド・北島康介さん。

20年に北島さんは、アジア初のプロ競泳チームである「Tokyo Frog Kings」のゼネラルマネジャーに就任し、チーム運営に携わっている。

競技者としては2度の金メダルに輝き世界一となったが、運営側に回るのは初めてのため、手探り状態からのスタートだった。 

Tokyo Frog Kingsは競泳の国際プロリーグである「インターナショナル・スイミング・リーグ(ISL)に参画していることから、海外リーグ組織との関わりやプロスポーツチーム運営について相談したいと考えていた。

そんな中、ベーブ・ルースさんの時代からMLBと深い関係にある読売新聞社の関係者と出会い、21年に話をする機会があった。

その会話の中で北島さんから、「東京にある他のプロスポーツチームと、競技の垣根を超えたチーム同士の連携は今あるんですか?」と質問が挙がる。

当時はまだ連携がなかったことから、「東京のチームが一つになってやっていけば、何か大きなこと・面白いことができるのでは?」という話があり、実現に向けて動き出した。

発起人である北島康介さん(写真右:TOKYO UNITE提供)

事務局を務める井上哲さんはTOKYO UNITEの立ち上げから尽力し、発足時現在の14チーム・団体を直接訪問して回った。話を聞いた全チームは「ぜひやりましょう」と快諾し、始動前から結束の機運が高まっていった。

「皆さんへはそれぞれ、『一つのチームで限界があったとしても、多くのチームが結集すればいろいろなことができるのではないか』と話していました。それが賛同いただいた一つです」

TOKYO UNITEへの参画から携わっているBリーグ・アルバルク東京の取締役 兼 経営企画部 部長の浅野英朗さんも、提案に賛同した理由を明かしてくれた。

「東京もさまざまなスポーツ・エンタメがありますので、地域と一緒に何かやるとしても一つのクラブでは難しい部分もあります。

人口がたくさんいますし、『ウチだけお願いします』ではないことは各団体共通認識でした。ですので、『みんなで手を取り合っていろんなことができるのは素晴らしいこと』と感じました」

アルバルク東京もTOKYO UNITEに様々な形で関わっている(昨年12月撮影)

加えて井上さんはもう一つ賛同を得られた要因があると続けた。

もう一つは『社会貢献をやりましょう』となって、実際やるにも資金や人的リソースはかかりますよね。プロスポーツの組織ですから、どんなに慈善活動をしても自らの体力を削がれてしまっては続かなくなります。

ですので、プロスポーツ組織として経営の健全化をするために、横での連携を通じて『東京からスポーツ産業を活性化させよう』というのも魅力に感じていただきました」

浅野さんも、まさに井上さんが話していたことを挙げていた。上での話に続いてこのように述べている。

「アルバルク東京の社内では”社会的責任活動”と言っています。背景はコロナ禍で無観客試合となったりして、我々メンバーは危機感を抱いていました。

産業的に生活必需品ではないので、『僕らが貢献します』ではなく『地域そして社会の責任を果たさないといけない』と。

地域の皆さんに会社として『アルバルクさんはいてくれないと困る』と認めてもらわないと将来の発展はないと考えています」

約1年の準備期間を経て、22年7月7日にTOKYO UNITEが正式に発足。

この日東京ドームで行われた巨人-ヤクルトの”TOKYO シリーズ”で14チームの代表選手らが集結し、始球式が行われた。

「TOKYO UNITEだからこそできる」取り組みの数々

発足以降、活動の軸として置いているのは「社会貢献活動」と「マーケティング」。

社会貢献活動については未来を担う子どもたちにアプローチしており、いずれも後述する『「#your_shoes」プロジェクト』と『キッズスポーツフェス 』の2つが中心的な取り組みとなっている。

前者は、参加チームの選手らが実際に使用したシューズなどに直筆サインをいれたアイテムをチャリティオークションに出品し、手数料を除く収益金の全額をシューズ購入費に充てる取り組み。

経済環境の悪化など様々な事情によってスポーツをあきらめてしまう子どもたちに向けてスポーツシューズを届けることで、スポーツを始め、続けていく機会を持ってもらうことを目的にしている。

事務局の後藤理央さんは、「#your_shoes」プロジェクトに向けた想いを語ってくれた。

「新型コロナの影響や部活動の習い事化が進んだことなどにより、数年の間にも経済格差が大きく広がっていると感じています。これらの理由で子どもたちがスポーツする機会を失ってほしくないという想いがあります」

発足初年度から3年連続で実施し、1000足以上のシューズを届けることができた。

キッズスポーツフェスは小学生を対象にしたマルチスポーツ体験イベント。

野球やラグビー、バスケなどボールを使って競技を体験する他に、現役力士による四股踏みや体力測定も行うことができる。

こちらも3年間開催しており、今年度は7月と12月の2回開催に拡大した。

昨年12月に行われた「第4回スポーツキッズフェス」

マーケティング面では試合の相互招待を行い、チームにとっても競技の垣根を超えたつながりが創出されている。

例えば読売ジャイアンツのファンクラブ会員をアルバルク東京の試合に招待することで、会員の応援するチーム・競技のシーズンがオフでもスポーツを楽しむことができる。

加えて試合会場にマスコットキャラクターが来場し、グリーティングやハーフタイムショーにも参加するなど、観戦に訪れたファンにとっては他競技のチームをより知れるきっかけになる。

読売巨人軍 ファン事業部でファンクラブの運営を担当する後藤史旭さんは、「(ファンクラブ名である)CLUB GIANTSのメリットとしては、野球のオフシーズンでもチームに関われる。そういった機会を提供できていることに手応えを感じています」と意義を語った。

キッズスポーツフェスなど様々な企画に参加している(写真は佐々木俊輔選手)

また、TOKYO UNITEでの取り組みを通じて「面白い経験ができています」と感じた一つとして、浅草で活動するユニット「東京力車」とのコラボ企画を挙げた。

公式マスコットキャラクターのジャビットらが人力車に乗り、クリスマスの表参道を颯爽と走るというもの。

イベントが開催された22年12月17日は、秩父宮ラグビー場ではリコーブラックラムズ東京が、代々木第一体育館ではアルバルク東京が、それぞれ試合を行うことから実現したものでもあった。

「秩父宮から代々木体育館まで、マスコットキャラクターを人力車で移動させようというのは、TOKYO UNITEがなければ実現しなかったと思います。そういった面白いことができるパワーがあるんです」

クリスマスの表参道をジャビットが人力車に乗り移動した(提供:読売ジャイアンツ)

東京のスポーツチーム・団体が一致団結して立ち上がったTOKYO UNITE。チームが横串になること以外でも、地域との密な連携も欠かすことはできない。

つづく

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