「第18回 小笠原道大杯」閉会式 小笠原さんが「大きなことを成し遂げるために必要」と説いた大切なこととは?

12月8日、千葉県市川市の妙典少年野球場で「第18回小笠原道大杯争奪 市川市少年野球大会(以下、小笠原杯)」の決勝戦と閉会式が行われた。

名を冠する小笠原道大さんが開会式に続き姿を見せた。今年も子どもたちにとって未来の道標となるメッセージが送られた。

(写真 / 文:白石怜平、以降敬称略)

改革を行い続けている市川市少年野球連盟

小笠原杯は主に小学5年生の選手を対象とした市内の少年野球大会。2007年から始まった大会は今年で第18回を迎えた(※20年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止)。

第20回の節目が近づいてきた小笠原杯

大会を主催する市川市少年野球連盟は、コロナ禍を機に改革に着手。21年に「新しい野球のスタイル」を掲げ、練習時間の効率化や運営でのオンラインツールの積極導入を実施してきた。

22年に現在の球場がオープンして以降、現在に至るまで常に改善を図っている。連盟の五嶌(ごとう)誠司理事長は今年の取り組みについて語った。

「猛暑対策を行いまして、試合ではナイターを入れるなどして対策を計りました。あと県の大会は8月を除いて行うようにしました。

さらに大事なのは昨年に引き続きハラスメントの撲滅。指導者こそ勉強しないといけないですし、コミュニケーション能力を磨かないといけないことが分かったのが成果です。

昨年市川市から講習を始めまして、それをベースに県全体に発展しました。来年の2月には2500人規模で県全体で講習会をやることが決まりまして、それは市川が起点となって実現したものです」

4番のバットが火を吹き、新浜野球部が頂点に

決勝戦が行われたこの日は快晴の下、寒さを吹き飛ばすほどの熱戦が繰り広げられた。今季は新浜野球部と平川レッドスターズが頂点を争うことに。試合は初回から大きく動いた。

先発投手としてマウンドに上がり、三者連続三振で上々の立ち上がりを見せた新浜野球部の佐々木秀成。打線では4番に座り、走者を置いて迎えた打席で振り抜いた打球は左中間へと上がった。

そのまま伸びていきフェンスオーバーに。豪快な一発で2点を先制した。

柵越えの本塁打を放った佐々木

佐々木は2回もマウンドに上がり、無死満塁のピンチを背負うも再び三者連続三振の投球を見せ、自ら挙げた2点を守った。

しかし、平川レッドスターズも3回に反撃を見せる。先頭の1番・鈴木陸が四球で出塁すると相手の隙を突き3塁へと進む。

続く2番・廣瀬惟人が三塁方向へゴロを打った際に走者の鈴木が一塁への送球を確認すると、本塁へとスタートを切った。クロスプレーになると捕手をかいくぐりホームイン。こちらは機動力を活かして1点をもぎ取った。

1番・鈴木陸の好走塁で1点差に迫った

対照的な点の取り方でシーソーゲームの様相を見せた決勝戦。

試合を決めたのは4番のバットからだった。再び打席に立った佐々木が低めの球をすくい上げた。打球はライナー性の軌道を描きながらポール際へと飛び、またもやフェンスを超えた。

2打席連続のフェンスオーバーで喜びを表す佐々木

この日2本目の柵越えを放ち、ベンチそして応援に駆けつけたスタンドが大きく沸いた。

4回・5回とお互いに1点を確実に取りに行く野球を見せた。平川レッドスターズは4回表に1点を、新浜野球部も4回と5回に1点ずつ全てスクイズで点を加えた。

スクイズで前打席に続き走者を本塁に還した廣瀬

5−2で新浜野球部が3点リードで迎えた最終回、2回で一度降板し5回から再びマウンドに上がった佐々木が最後を締めゲームセット。24年度は新浜野球部が市川市の頂点に立った。

新浜野球部が小笠原杯の優勝を果たした

決勝で2本塁打の佐々木がMVPに

試合後には3位の宮久保野球部を交えて閉会式が行われた。

例年と同様に3チームには小笠原さんのサインが入った賞状とトロフィー、選手全員に金・銀・銅のメダルが用意された。

選手全員に贈呈されるメダル

個人賞も例年と同様に、優勝チームからは大会最優秀選手(MVP)として小笠原さんのサイン入りバット、2位・3位チームから現役時代の折れたバットから再利用してつくられたサイン入り木製メダルが各1名に贈られる。

MVPの選手に贈られるバット

小笠原さんはこの日も球場へと駆けつけ、プレゼンターを務めた。また、MVPには決勝で2本塁打を放ちチームを優勝へと導いた佐々木が輝いた。

ここで、連盟からもサプライズプレゼントが。柵越えを放った際のホームランボールが佐々木本人へと贈られた。

賞状を渡し(写真上)、MVPの佐々木にバットが贈呈された(同下)

成功し続けるために必要な”基本”

贈呈の後は小笠原さんからの挨拶。毎年選手たちにとって将来の成長につながるメッセージを送り続けており、今年も子どもたちの心に自然と入っていく言葉が届けられた。

「選手の皆さん、お疲れ様でした。ゲームセットの瞬間のみんなの表情、本当にいい姿を見れたと思います。みんなが力を合わせて勝ち取った優勝だと思います。おめでとうございます。

ただ、両チームとも素晴らしい戦いでした。

今回は勝利に届かなかったとしても、みんなで取り組んだ・力を合わせたことが大事です。負けることによって生まれる感情・悔しい気持ち・次は勝つ。こういったさまざまな感情も必要です。

勝つことも大切ですが、みんなで協力して力を合わせて試合に臨むこと。また敗戦を通じてさまざまな気持ちを感じられること。

全てが皆さんの成長に必要なことだと思います。この経験を大事にしてください。

この先も、すごいプレーをしたい・大きなことで成功したいなどの想いを抱くかもしれません。それを成し遂げ続けるために必要なことがあります。

それは”基本”です。基本がしっかりしないとみんなが喜ぶようなプレーや、感動するようなプレーを毎回することは難しくなります。

それは野球だけではないです。学校の勉強にしても一番最初に始めるのは基本になります。そこをまずできないと、先へと進んだ時にいろんなことでつまづいてしまいます。

今一度基本を思い出して、そこから先のステージに向かってくれたらと思います」

野球を通じて”考え”、行動する

終了後に改めて子どもたちへ野球を通じての成長について語った。その際に行動に向けたヒントも添えた。

「野球で人間関係なども勉強できると思いますし、野球を通じてさまざまなことを考えることによって他のことでも”考える”。そこから行動に移すことを養ってほしいという想いがあります。

最近、野球人気が再び盛り上がっていると感じていますが、今以上に野球を知らない人たちに野球の良さを知ってもらい、これからの子どもたちにも野球を通して成長してほしい。私も少しでも力になれたらと思うので、来年以降も開催を継続したいです」

子どもたちの成長を願うと共に、大会も継続していく

2024年は初めて外から野球を見る年になった。23年の第17回大会の際は、「自分探しの旅ではないですけれども、新しい発見のある1年にしたい」と語っていた。

執筆活動や解説そしてOB戦への出場を重ねるなど、活躍の場を広げていった一年を以下のように振り返った。

「ユニフォームを脱いだ年が今年初めてだったので、自分自身も勉強になったし、今まで経験したことのない発見の年でした。

ですが、まだまだ自分で描いていた現実と差があるので、しっかりと来年も自分で勉強していきながら、みなさんに経験を還元していきたいと思います」

今年、小笠原杯出場経験者からプロ野球選手が誕生した。10月のドラフトで広島から5位指名で入団した菊地ハルン選手(千葉学芸高)。

ここで「プロに入ることはゴールではなくスタート。市川市のスターになれるよう頑張ってほしい」とエールを送った。

小笠原さんが還元し創り上げているこの舞台は、市川市の希望が集まる場所になっている。

(おわり)

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