千葉ドリームスター 佐倉市「パラスポーツと心のフェスティバル」に参加 パラスポーツと地域をつなぐ場に

24年12月、千葉県佐倉市の志津コミュニティセンターで「パラスポーツと心のフェスティバル」が開催された。

同県を拠点に活動する身体障がい者野球チーム「千葉ドリームスター」が、地域や地元の少年野球チームと交流を深める時間になった。

千葉県唯一の身体障がい者野球チーム

千葉ドリームスターは09年に誕生し11年に本格始動した身体障がい者野球チーム。設立したのは、千葉県出身の元プロ野球選手・小笠原道大さん。

巨人での現役時代から続けている社会貢献活動の一環で、少年野球大会に続いて開始し現在も脈々と続いている。チーム名は”夢を持って野球を楽しもう”という想いから自ら名付けた。

神戸で行われた全国大会には小笠原さんも挨拶を務めた(昨年5月撮影)

選手・スタッフ合わせて30名を超えており、年代も中学生から50代と幅広く在籍する。また、選手の親もチームを支えたいと一緒に入団するなど輪が広がっている。

障がいは先天性・後天性問わず選手それぞれ。車いすの選手が打席でフルスイングすると、片腕でプレーする選手が全力疾走で打者走者を務めるなど、互いの特徴を活かしてグラウンドで躍動している。

特徴の一つである打者代走制度

昨年8月に浦安市で行われた「第30回 関東甲信越身体障害者野球大会」で優勝を果たし、毎年全国大会へと出場。

一昨年にはバンテリンドーム ナゴヤで行われた「第5回世界身体障害者野球大会」の日本代表選手を初めて輩出し、現在主将を務めている土屋来夢選手が日の丸を背負い、世界一に貢献した。

この日も来夢選手は「JAPAN」のユニフォームを着用し、少年野球チームとの交流を楽しんだ。

JAPANのユニフォームで登場した土屋来夢選手

パラスポーツの体験や試合を通じて市民と交流の機会に

本イベントは「家族で障がいについて考える」をテーマに佐倉市が主催したもので、昨年から行われている。

VR機器を活用する発達障がいの疑似体験をはじめ、誰でも楽しめるボッチャやフライングディスクといったパラスポーツの体験コーナーも用意された。

昨年からイベントを企画から運営まで行っている一人が佐倉市の職員で、ドリームスターに在籍している土屋大輔選手。

イベント開催に尽力した千葉ドリームスターの土屋大輔選手

土屋選手は高校3年時の交通事故で右腕神経叢損傷(引き抜き損傷)となり、右手は動かすことができず左腕のみで生活している。

ドリームスターには11年に入団し、チームの初代主将として約8年務めた。現在も打線ではリードオフマン・守備でも中堅や二遊間といったセンターラインを固め、攻守に欠かせない存在である。

グラウンドでも攻守に存在感を放っている

この日は佐倉市在住のパラアスリートをゲストに招き、市民と交流を深めた。佐倉市の西田三十五市長も参加し、会場を回って各競技を体験した。

西田市長も各競技を体験した

ゲストは千葉ドリームスターに加えた3選手。

陸上競技やり投げで2大会連続パラリンピックに出場中の山﨑晃裕選手や全国障害者スポーツ大会の「フライングディスク」で金と銅メダルを獲得した片岡昭雄選手、同じくフライングディスクで銅メダルの石塚真也選手が参加した。

ゲストの左から山﨑選手・片岡選手・石塚選手

山﨑選手のパラスポーツとしてのキャリアは身体障がい者野球からスタートしており、2014年の「世界身体障害者野球大会」では日本代表として準優勝し、日本代表最優秀選手に輝いた経験もある。

パラリンピックで入賞している山﨑晃裕選手

イベントでは室内と屋外で数々のコーナーが設けられた。

センター内では山﨑選手のトークショーに加えてボッチャ・VRの体験コーナー、グラウンドでは千葉ドリームスターと地元の少年野球チームである間野台ジャイアンツとの交流試合が行われた。

ドリームスターは少年野球チームと交流試合が開催された

試合前にはやり投げの練習に使われるジャベボールの投てきやフライングディスクの実演も行われた。ゲストがそれぞれの技を披露すると共に、ドリームスターと間野台ジャイアンツの選手たちも体験する機会に。

山﨑選手が実際に投げる時には手拍子に包まれ、高く遠く飛ぶやりに子どもたちも目を奪われた。

山﨑選手による実演も盛り上がりを見せた

バックネット裏ではフライングディスクの体験コーナーが設けられ、訪れた家族に片岡さんが丁寧に解説するシーンも多く見られた。

フライングディスクの実演をする石塚選手(写真上)と投げ方を教える片岡選手(同下)

子どもたちからドリームスターの選手へ質問

試合後は間野台ジャイアンツの選手から、障がいがあることについて千葉ドリームスターへたくさんの質問が。

「どうやって野球をやっていますか」
「野球をやりたいと思ったきっかけは何ですか?」

などの問いに、自身が経験してきたことを伝えた。

ドリームスターの選手が質問に答えた

また、「障がいがないことを羨ましいとか辛いと思ったことはありますか」という問いには「いい質問!」と選手たちはリアクション。

「手が片手しかなくても両手でやっている選手に負けない気持ちを持つ原動力になりました」などと、子どもたちも前向きになれる回答や、

「自分も病気になる前はみんなと同じように生活して仕事もしていました。でも、病気になって半身がまひになった後は思うように体が動かせなくて、『なんで自分が』っていうこともありました。

でも、そう思っても以前に戻るわけじゃない。辛いことがあるのはみんな一緒だから、切り替えて”どう楽しく生きていくか”を考えるようになりました」

などとメッセージを添えて答えた。

半日かけて行ったイベントを終えて土屋選手は、「会場にお越しいただいた方が、さまざまな体験を通じて障がいを身近に感じるきっかけになったのではないかと思います」と語った。

また、千葉ドリームスター担当者は「我々は千葉県唯一の身体障がい者野球チームなので、選手の講演や小中学校での体験授業などを通じてパラスポーツの普及や『障がいがあってもスポーツができること』を発信していきたいです」と語った。

この日志津コミュニティセンターに集まった方たちにとって、スポーツそして障がいについて理解が深まる機会となった。

【関連記事】
千葉ドリームスター「第30回 関東甲信越身体障害者野球大会」2年ぶりの優勝!主将と監督の”父子鷹”が描いた成長の一年

井口資仁さん 「皆さんの野球熱と一生懸命さに心が動きました」身体障害者野球の選手約50名に指導 〜MAXIV LIEN PROJECT〜

身体障害者野球日本代表 土屋来夢選手 講演会に登壇 高校生に向けて語った「失ったことで得られたこと」

関連記事一覧