「桜のジャージとは、ラグビー人全員にとって特別なもの」三重ホンダヒート 近藤雅喜 究極の選択の末に選んだ世界の舞台(全5回 #2)
トップチャレンジリーグからのスタートも全勝で昇格へ
”トップリーグで活躍する”その想いを胸に飛び込んだ最高峰のリーグ…
だったはずが、それは卒業間際に一転する。2016−17シーズンでホンダヒートは16位に沈んでしまい、トップチャレンジリーグに降格となってしまった。
ルーキーイヤーは、トップリーグへ復帰するための1年となった。近藤はこのシーズンを「純粋に楽しかったです」と笑顔で語ってくれた。
「ネガティブなことは正直なかったです。トップリーグに必ず戻らないといけない想いがチームにありましたし、いいプレッシャーの中で1年目から試合にも出させていただいたので、本当にいい経験になりました。試合に出続ける中で勝ち方を掴んできて、トップリーグへ復帰できたので達成感が強かったです」
チームは10勝負けなしの全勝でトップリーグへ昇格。近藤も6試合に出場し、その躍進に貢献した。
トップリーグかセブンズ、究極の選択に
2018−19シーズン、かねてから目標にしていたトップリーグの舞台に立つことが現実味を帯びた。憧れのピッチに立つことに心を躍らせながら、開幕を迎えた。
ただ、その直後に思いもよらぬオファーが近藤の元へ舞い込んできたのだ。
18年11月に開催の「HSBC ワールドラグビー セブンズシリーズ」の日本代表に選出されたという知らせだった。
”セブンズシリーズ”、つまり7人制ラグビーの代表選出である。中学生から目指し、高校・大学と着続けてきた”桜のジャージ”を7人制ながらまた身にまとうチャンスが来た。
しかし、全ての歯車がうまく合うわけではなかった。チームは9月にトップリーグのシーズン開幕を迎えており、翌年1月の順位決定トーナメントまで試合は続く。
セブンズに参加する場合、10月には合宿代表に参加する必要があるため、チームを離脱しなければならない。
究極の選択をすることになった近藤は当然ながら悩みに悩んだ。1年でトップリーグ再昇格を果たしたチームへの想い、そして自身の憧れなどが交錯した。
熟考を重ねた末に近藤が出した結論は「セブンズへの挑戦」だった。
「やはり桜のジャージというのは、ラグビーでキャリアをつくってきた人全員にとって特別なものだと思います。限られた選手しか着ることができないものですし、自分のラグビー人生も一度きりですので挑戦することにしました。ただ、今振り返っても難しい選択だったと思いますね」
近藤にとってのセブンズデビュー戦はドバイで2日間にかけて6試合行われた第1回大会。
初日は2試合の途中出場を経て、カナダ戦には先発で出場した。この試合でチーム唯一のトライを決めるなど奮闘。2日目のケニア戦でもトライを決め日本の大会初勝利に貢献した。
セブンズとして戦った日々についてこう振り返った。
「小さい頃から映像でドバイでのセブンズというのをずっと見ていたので、(セブンズの)聖地と言われるドバイでプレーした時は身震いしました。『今自分がここに立っているんだな』と感じたことは5年前ですけれども鮮明に覚えています」
近藤が感じた15人制と7人制の違いとは?