
リコーブラックラムズ東京 メイン平 貪欲な姿勢と強みで掴んだ日本代表の座 「ランを活かしてアグレッシブに相手を抜きに」
現在リコーブラックラムズ東京でプレーするメイン平選手。
20歳での入団ながら「1年目から勝負」と臨み、2年間レギュラーとして戦った。その姿勢と実力が評価され、2022年の夏には日本代表へと召集された。
かねてから目標にしていた桜のジャージに身をまとい、翌年のW杯をも視野に入れるようになった。しかしその目標は現実味を帯びる一方で、同時に長き試練への道も迫っていた。
(取材 / 文:白石怜平 ※以降、敬称略)
「代表の15番はどんな選手が必要か」
2年目となった2022年のシーズン終了後、その実力と将来性を兼ね備えた男に吉報が届いた。将来の日本代表に選ばれる可能性のある人材が召集されるナショナル・ディベロップメント・スコッド(NDS)。
21歳にしてチームの中心を担いつつあったメインの活躍は評価を集めた。召集の連絡を受けた時のことを語った。
「シーズンオフで自主練のためにグラウンドに来た時に、選ばれたから準備してくれと話をいただきました。開始4日ほど前に言われたのですが、それまで体を動かしていなかったのでリフレッシュになっていい状態で臨めました(笑)」
常に高みを目指していたメインにとって日本代表は自然に置いていた目標でもあった。
「やるからに選ばれたいと思っていましたし、W杯に出たいという想いが強かったです」
NDSに合流後は持ち前の積極性を発揮し、各所にアドバイスを請いに行った。
「その時は田村優さん(横浜キヤノンイーグルス)やベテランの先輩方もいらっしゃったので、話を聞きに行って『新人だったらこうした方がいいよ』『コーチに質問に行きな』などとアドバイスをいただきました」

そのアドバイス通りコーチにも自ら助言を求めるとともに、早速練習でアピールを重ねた。
「今15番はスキルセットの部分などにおいてどんな選手が必要なのかを聞きました。その時は『ロングキックができる15番が必要』と話されていたので、練習から率先して取り組んでいました。
それを実行しつつ、自分の強みであるランを活かして練習の時もアグレッシブに相手を抜きに行きました」
チームに必要なピースであることを示し、晴れて日本代表のメンバーに選出。代表初キャップは、22年6月18日のウルグアイ戦だった。
目標にしていた桜のジャージを着てついにピッチへと立った。
「もう緊張よりもワクワクしていましたね。疲れることなく楽しいという感情でラグビーができたので、嬉しい思い出しかなかったです」
次なるステップは翌年に開催されるW杯への出場。秋のNDSにも招集され、徐々に目標へと近づいた中で試練ともぶつかることになる。
「無駄ではなかった」欧州遠征での経験
6月に代表初キャップを獲得したメインは、9月下旬に再び日本代表合宿の参加メンバーとして名を連ねた。
この結果については、チームに必要なピースを理解している男からは意外な言葉が返ってきた。
「NDSでも最後に呼ばれていたので、あの時の召集は正直驚きました」
6月では代表経験豊富な先輩たちやコーチに助言を求めながら吸収していった。しかし、この秋の合宿では全く雰囲気が違っていたという。
「ここはW杯に向けてポジションを奪う場でもありました。練習ではみんながライバルになりますので、選手にもコーチにもアピールしないといけない。なので、自然とそういう雰囲気がつくられていたのだと思います。
特に国際試合では一つのミスが命取りになるので、より実戦の雰囲気に近づくように当時ジェイミー(・ジョゼフHC)が意図的にそうしていたのだと思います。練習から再現するようにやっていたので、大きな勉強になりました」

22年は日本代表として続けてプレーした(提供:ブラックラムズ東京)
自身はメンバー入りを果たせなかったが、イングランド・フランスと戦った欧州遠征に帯同。ここでも国と国が戦う雰囲気をその場で体感する機会になった。
「ツアーに参加しましたがメンバーには入れず正直悔しい思いもありました。その一方で国を回って日本と違う雰囲気であったり、何万人も入る場所かつアウェイの中での試合でしたので、スタジアムにいるだけでも価値がある経験ができました。
テストマッチに向けてどう準備するべきかを肌で感じられたので、決して無駄ではなかったです」
ポジションを変えて臨むも、怪我で無念の離脱
世界で戦う経験を積んだ後に臨んだ2022-23シーズン。この頃からメインにとって大きな試練が待ち受けることになる。
日本代表の活動を通じて「練習の質一つひとつが変わった」と語るなどさらにレベルアップし、開幕からレギュラーで出場。チームの勝利と共に、あの目標に向けても並々ならぬ想いを抱いていた。
「FBからWTBで臨んだシーズンでした。秋の日本代表でWTBに取り組む機会があり、しっくり来た状態でブラックラムズでプレーする年になりました。あとはこの後にW杯もあるので、アピールしたいと意気込んでいたシーズンでした」
これまでFBそしてCTBとポジションを変えても順応し続けた男は、ここでもクレバーさを発揮した。
「FBの経験が活きているのは間違いないです。僕はFB寄りのWTBを目指しています。自由に動いて、積極的にボールを受ける動きをたくさんしようと思っているので、これまでの経験が引き出しになっています」

しかしそんな中、3月4日の第10節 NECグリーンロケッツ東葛戦で最初のアクシデントに見舞われてしまう。
「10節での怪我は、左ハムストリングの肉離れでした。タックルに行く時に疲労が残った状態で左足を踏み込んでしまい、その時に足を広げてしまいました。
大きい怪我だなというのはやった瞬間に分かりました。積極的にアタックにも行っていたのですが結果怪我をしてしまい、不完全燃焼で終えてしまったので悔しいシーズンでした」
全治半年という大怪我となってしまい戦線離脱。このままシーズンを終えてしまった。そして、目指していた9月のW杯代表の座も目の前から離れてしまう。
ただ、大会は悔しくて見れないといった感情はなく「純粋にみんなを応援しましたし、頑張りたいとまた思えました」と気持ちは切り替わっていた。
再起をかけて臨むことになった2022−23シーズン、開幕も間近に迫った最後のプレシーズンマッチでさらに長いトンネルへと入ることになってしまう。
(つづく)
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