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「優勝した時に自問自答していた」埼玉武蔵ヒートベアーズ 角晃多 若き指揮官が悩んだ”正解のない”答えとは?

その裏での自問自答、監督としての苦悩

しかし、この優勝については角自信は「この優勝の意味について自問自答しているんです」と語った。その真意を訊いた。

「優勝して何が残ったのか。BCリーグとしても一生懸命プレーをして地域に出向いて貢献をしていく・地域を活性化させることがリーグとしても大事にしていることだったりするので、この辺はすごく考えさせられるものが去年はたくさんありました。

スポンサーさんとか地域の方にすごく喜んでもらえたんですけれども、もっと盛り上げられるんじゃないかとか…ただ、これは各球団やリーグ全体が活性化しないと優勝の価値も大きくなっていかない。僕の自問自答からは正解は出ないんだろうなとも思いました」

地区優勝を達成した当時も苦悩があった(写真:球団提供)

角の自問自答は選手としての立場を考えたときにも感じたという。その目線においても考えることがあると明かした。

「自分が選手上がりなので感じる部分なのかもしれないですが、選手一人ひとりで見たときに優勝の価値はどこにあるのって言うと思った時にも難しいなと。優勝してもNPBに行けなかったら『うん…』ってなりますし。

毎年チームを卒業する選手もたくさんいるのですが、ここの正解も何なんだろうと考えるんです。チームに残った選手もいますし、選手の思いを尊重することと、どこかで線を引く中で1つ優勝という目標に向かってみんなでやっていくことなのか。何が正解なのかなっていうの感じていました」

”選手の想いを尊重する”

これは、独立リーグを率いる監督としての役割・苦悩にも繋がってくる。前述の通り、NPBを目指して門を叩く選手が多い中で、監督が選手の引き際を決めなければならないケースもある。

それは、NPB入りが厳しいと判断した選手にはユニフォームを脱ぐ決断をさせるという意味である。角も自身が監督に就任して「一番重いところです」と即答していた。

「毎年あるのですが、優勝した時も難しいと感じたのが選手一人ひとりの野球人生の判断。野球人生を終わらせることも必要なので、しっかりと向き合う時間を作ってきました。

優勝した時は偶然(NPBからの指名が)多かったのですが、”今年ダメだったら辞める”と覚悟して臨んだ選手の方が本当に頑張れるんです。

一球に対する想いといった姿勢もスカウトに伝わりますし、結果的にそれが数字として表れるんです。仮に誰かが叶うと他の選手も『もう一年やったらできるんじゃないか』って思うんですよ」

監督当時に抱いていたジレンマを明かした

しかし、それでも現実は厳しいということもある。監督に就任してから昨年退任するまでの5年間、選手の意志を尊重することと他の道を勧めることの2つのジレンマで戦っていたのだ。

「組織であり、そこから個人に落とし込むということをしないと、何のために来たのか途中で見失う場所でもあるので、独立リーグの難しい点だと思います」

そして、21年末には球団社長に就任。グラウンド内外でフル回転することになった。

(つづく)

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