• HOME
  • 記事一覧
  • 指導 / 教育
  • 東京ヤクルトスワローズ ベースボールアカデミー 住田尚都コーチ 子どもたちと笑顔で向き合う日々を語る「一人ひとりの成長を見ることができる素敵な仕事です」

東京ヤクルトスワローズ ベースボールアカデミー 住田尚都コーチ 子どもたちと笑顔で向き合う日々を語る「一人ひとりの成長を見ることができる素敵な仕事です」

22年4月に開校した「東京ヤクルトスワローズ ベースボールアカデミー」。

コーチには、度会博文さん・村中恭兵さんという元選手に加え、子どもたちへの指導実績が豊富なメンバーが揃っている。

その一人が住田尚都コーチ。指導歴は7年を超え、今も日々子どもたちの成長に向き合っている。今回は住田コーチに、指導者としての歩みを振り返ってもらった。

(取材 / 文:白石怜平)

専門学生時代、研修で受けた驚き

住田コーチは高校卒業後の14年に、東京YMCA社会体育・保育専門学校へ進学。スポーツトレーナーへの道を志した。

小学1年生から高校卒業まで野球を続けてきたことから、将来も大好きな野球に携わる仕事がしたい想いを抱いていた。

その想いはすぐに現実へと向かっていく。同校では実務研修として、読売巨人軍が運営する「ジャイアンツアカデミー」に学生を派遣していた。

住田コーチも研修に参加しており、ここから指導者として第一歩を踏み出した。

指導者としてのルーツは専門学校時代にあった

グラウンドに初めて立ち、指導の光景を見たときの印象は今も鮮明に覚えているという。

「第一印象はとにかくびっくりしました。特に道具や距離にですね。塁間を狭めるであったり、安全で柔らかい素材のバットを使うとか知らなかったので。野球を始めるにあたっては、こういう教え方があるんだという新しい発見がありました」

卒業後、正式にアカデミーコーチに就任

ジャイアンツアカデミーでの研修で実践経験を積んだ住田さんは、球団からアカデミーコーチとしてオファーを受け、卒業後に読売巨人軍へ入社した。

正式にコーチとしてのキャリアをスタートし、主に小学1・2年生を担当することになった。当時の心境を訊いた。

「1エリア20人以上生徒がいて、それを一人で指揮を執ることになります。

小学校低学年で野球をやったことある子・ない子がいる中、1対20でやることが初めてでしたので最初は特に緊張しましたね。それでも、周りの先輩コーチに支えていただきました」

たくさんの子どもたちを一手に旗振りをしている

その中でも「感謝してもしきれないくらいです」という恩人を挙げてくれた。

「一番お世話になったのは、倉俣徹(現:巨人軍 野球振興部長)さんです。指導のノウハウや子どもたちとの接し方など、今につながる全てを教えてくださった方です」

アカデミーコーチとして、指導に励む傍らで実は一つ学生時代に”忘れ物”があった。

「専門学校入学時に目標だったトレーナーの試験、実は在学中に受験して失敗していたんです。悔しかったので絶対に取ろうと入社後に勉強しまして、合格できました」

パーソナルトレーナーとしての資格を取得を活かし、アカデミーでもその知識を注入しているという。

「今後もずっと語り合える」スワローズでの道のり

ジャイアンツアカデミーには5年在籍した。同じ場所・同じ時間で生徒を見ており、グラウンドでその成長を実感することができた。

「最初小さかった子が大きくなってできることが増えていくので、成長の過程を見れるのは一番嬉しいですよね。年中の子がまだ野球というのを知らずに入学して、そこからいろいろ理解して楽しくやってくれて、試合を観たりチームに入って続けている。一人ひとりの成長を見ることができる素敵な仕事だなと感じています」

述べたやりがいは今でも変わらず持っている

この5年を区切りに、21年からはアカデミー創設に向けて動き出したスワローズへと移籍する。この移籍も倉俣さんの力添えによるものだった。

ただ、当時はまだ開校準備を開始した頃。定期開催ができるグラウンドを確保するところから始める必要があり、住田コーチらも奔走する日々を送った。

「都内各所のグラウンドに電話して、直接説明にも伺いました。区役所にプレゼンテーションしにも行きましたし、ひたすら足を運びましたね。

コーチたちとは『誰一人欠けても(開校)できなかったよね』と今でも話しています。今後もずっと語り合える、そんな時期でした」

開校後は巨人での経験を活かし、コーチとして指導を再開した。

コーチ陣も誰一人欠かせない戦力である

住田コーチならではの工夫とは?

グラウンドでは常に笑顔で明るくコミュニケーションを取っている住田さんらコーチ陣。自身でいつも心がけていることについて話した。

「野球を楽しんでもらうことを第一に考えています。もちろん上手くなってほしいのですが、技術だけが先に行くと混乱してしまうと思います。”できた”という喜びから始まって、友達や家族とのキャッチボールそしてチームに入団することにつながっていくので、一番は”楽しく”ですね」

子どもたちに”楽しい”を伝えている

スワローズに移籍後、これまでの経験を踏まえメニューにある工夫を加えたという。具体的な内容を明かしてくれた。

「1・2年生で必ず毎回試合を入れるようにしました。これまで3回に1回試合を入れていたのですが、試合だと特に子どもたちの目が輝くんですよね。

楽しそうに打って・守って・走って。レッスンが終わってからも上手くなろうと、自主的に残って練習しているんですよ。なので上達のスピードも速いと感じています」

ホームランを打った生徒を迎える住田コーチ

今はインターネットを通じて誰もが新たな技術や考え方を手軽に得られる時代。生徒はもちろんコーチも情報を得ながら引き出しを増やしている。

「情報に迷っていたらサポートするようにしています。アプローチは1つではないですし、たくさんある情報を与えすぎても逆に良くないですから。

例えば、プロ野球選手のフォームの真似をする子がいたとします。真似はいいんだけれども、固執してしまわないよう”なぜそういうフォームなのか”は伝えるようにしています。ただ、強要するわけではないですので子どもたちに的確なアドバイスできるよう引き出しは常に増やしています」

球団事務所で取材に答えてくれた住田コーチ

レッスンを通じて感じてほしいこと

ジャイアンツ時代を通じて8年目を迎えたアカデミーコーチとしてのキャリア。東京の子どもたちに野球の魅力をグラウンドで伝え続けている。

生徒たちには、レッスンを通じてどんなことを持ち帰ってほしいか。日々レッスンに臨むうえでの想いを訊いた。

「毎度”来て楽しかった”・”できなくて悔しかった”というのを感じてほしい。帰ってからご家族に『僕ヒット打ったよ』・『遠くに投げられたよ』というような野球の会話が増えていくと嬉しいです」

今も子どもたちと共に充実した日々を送っている

最後に自身そしてアカデミーの今後について語っていただいた。

「子どもたちには夢をもって野球をしてほしいという想いがあるので、みんなと向き合っていきたいです。アカデミーについては、ぜひ幼児コースから参加していただきたいです。

野球を通じて体を動かすだけではなく、集団生活での礼節もお教えできるので、ぜひそれを知ってもらってたくさんの子どもたちと野球ができたらと思っています」

(おわり)

【関連記事】
ユニバーサル野球 東京開催「挑戦している仲間がいたら、たくさん応援してあげましょう!」 東京ヤクルトスワローズ・三輪正義さんと共に喜び、笑いあった”夢の空間”

【特集】戦場への帰還 ~不屈の精神と長き闘いの記憶~埼玉武蔵ヒートベアーズ 由規兼任コーチ 第2回 神宮のマウンドにカムバック。1771日ぶりの復帰と1786日ぶりの勝利

五十嵐亮太 日米23年のキャリアから語る日本野球の現在地〜後編〜「アメリカでは全て自分で決めなければいけない」

関連記事一覧