スポーツ×福祉 野球ボールが繋ぐ障がい者の社会貢献への道筋

集中力を鍛えて就労へとつなげる

翔裕園では、身体・知的・精神の主に3種類の障がいのある方が通所する。

ボールの修繕もそれぞれ自分の能力に合わせて作業している。1球全て完成させられる方もいれば、縫うのみ・糸を切るのみなど役割分担をしながら行う。回数を重ね、習熟していけば糸を縫い直すエコボールに加えて革自体を張り替えるアゲインボールの両方を担当するなど作業の幅が広がっていく。

また、基本は1人1球を担当するが、学校から送られるボールの数も通所する方も日によって異なる。そのため、その日に通所した利用者に合わせて割り振ったりするという。

現在、翔裕園で就労支援員を務める佐々木潤さんはあるエピソードを披露してくれた。

「以前通所していた知的に障がいがある方で集中力に課題がある利用者がいました。エコボールに参加してもらったのですが、最初上手く出来ずにすぐ諦めてしまったんです」

通所する方々に合わせて分担している

当初は糸通しを使ってもボールの糸が通らない。しかし、本人には”自分でできるようになりたい”という強い意思があった。それは佐々木さんにも伝わっていた。

「集中力をつけるために、『まず15分がんばってみよう』次に20分というように、できるようになったら徐々に時間を伸ばしていく。これを積み重ねていきました」

このように佐々木さんも真剣に向き合うことで、できることが増えていった。結果、1人でボールを全て縫い切るところまで到達することができた。

そして、エコボールよりも難しいアゲインボールも担当。

「成長できたシーンを見れた、これは本当に嬉しかったです」と当時を思い出し、笑顔で語った。そして最終的には大手飲料メーカーに就職。自動販売機に設置しているダミー缶の洗浄などを中心に従事しており、今もエコボール活動で培った経験が活かされているという。

また、また、昨年度就職した方は4名おり、半年経過後の定着率は100%と現在も会社の大きな戦力となっている。

1つ1つ作業を積み重ね、就職した人数も増えて定着していっている(写真右上が佐々木さん)

関連記事一覧