「力を合わせて野球界・スポーツ界を変えていきたい」筒香嘉智が語るスポーツマンシップと将来のための制度とは?
「将来のために学べる制度」リーグ戦の導入
最後のテーマは「リーグ戦の導入」。
筒香は19年11月25日、日本外国特派員協会で開いた記者会見で「一発勝負のトーナメント制をやめ、リーグ制を導入する必要があると思っています」と提言。会見以降もリーグ戦導入について様々な場で発信してきた。
現在、プロ野球では12球団によるリーグ戦である一方、アマチュアの大会はトーナメント制が敷かれている。
”負けたら終わり”の一発勝負。負けられないという独特の緊張感での試合は、誰も予想できない選手のプレーを引き出し、観るものも魅了させる。
しかし、日程的にタイトになり身体へ負担がかかり、負けられないがためにレギュラーしか試合に出場できないなど、そのデメリットも大きい。
敗戦の経験から学ぶと考えた場合でも次の大会まで長い期間を要し、さらに勝たない限り次のチャンスは訪れない。
筒香はその点に触れ「プロ野球の優勝チームでも勝率は約6割です。勝ち負けを通じて成長していけるリーグ戦は子どもたちのためになると考えています」と話し、改めてリーグ戦導入について述べた。
筒香の数年にわたる提案もあり、昨年から新たな動きが生まれ始めた。
全国各地で行われるリーグ戦形式の「LIGA Agresiva」が開始されたのだ。『選手たちの未来にフォーカスする』ことをコンセプトに全国14都府県・約90の高校が参加している。
サイト内では参加している高校の指導者もコメントしており、本イベントに参加した森林貴彦・慶應義塾高校監督も「目の前の選手においては、ミスを恐れぬ積極的なプレーや心構えを身につけること、そして今まで以上に野球が好きになることを期待します」と寄せている。
LIGA Agresivaに賛同する学校が増えており、今後さらに普及する機運が高まっている。
本イベントを開催した、NPO法人BBフューチャーの阪長友仁理事長も賛同し、「もちろん勝利を目指すが、負けたとしても新たな気持ちでチャレンジできたり、課題を克服するなど、特に負けた後の次にどうするかが大事ですよね」と筒香にさらに問いかけた。
「プロの選手でも打てる日もあれば打てない日もある。いい感覚で打てたとしてもチームの勝利につながらないこともたくさんあります。大事なのは、常に次の試合でベストなパフォーマンスを発揮するために、心や技術の整理をすることだと思います。
この考えは野球・スポーツだけでなく私生活にもつながります。こういったことを学べるのはリーグ戦ですし、野球を通じて将来のために学べる制度にしていくべきだと僕は考えています」(筒香)
また、リーグ戦の導入について指導者からも筒香に向けた感謝の意があることを聞くと、
「こういった価値に賛同してくださる指導者が全国にいてくださっている。皆さんのような素晴らしい考えを持つ方が一人でも多く、子ども達のためにより良い野球界・スポーツ界になったらいいなと思います」
と更なる展望に期待を込めた。