身体障がい者野球日本代表 土屋来夢選手 講演会に登壇 高校生に向けて語った「失ったことで得られたこと」

3つの「失ったことで得られたもの」

昨年の世界大会当日、会場となったバンテリンドーム ナゴヤには各日4000人以上の観客が訪れた。

その中には家族はもちろん、ドリームスターのメンバーなどこれまで関わってきた多くの”応援団”が駆け付けた。現在勤めている職場の同僚は特製の横断幕を作成し、スタンドで掲げ声援を送った。

スタンドには特製の横断幕が掲げられた

自らも世界一に貢献し、感じたのは安堵だけではなかったという。

「今までは勇気をもらう立場だったのですが、あの時は僕たちが勇気を届ける番という想いでした。応援に来てくださった方々が『勇気をもらった』などと声をかけてくれました。発信する立場になったのだとさらに自覚を持てたと思います」

これまでを振り返ったのち、テーマである「失ったことで得られたもの」について3つ挙げた。

「まずは『”当たり前と思うこと”が”当たり前ではない”こと』に気づきました。怪我をする前はあまり考えたこともなかったのですが、物ごとの考え方が変わって、そう気づいてから一層”ありがとう”の想いが強くなりました。

次に今の自分を知り、受け入れること。過去の自分ではないですし、戻ってくるわけでもないです。であれば今自分のあるもので勝負しようと。向き不向きより、前向きに”今”を受け入れる。できないとなったら何も進まないです。

得たことは大きく3つあると語った

そして3つ目、みなさんは自分のことを考えたりしたことがありますか?僕は正直怪我する前までは考えたことはこれまでなかったです。

でも、あの時から自分と向き合い続けることで、見えなかったことが見えてきましたし、一番は自分の可能性に期待できるようになったのが大きいです。

これからもそんな前向きでいる人でいたいし、周囲が手を差し伸べたり協力もしてくれるんですね。そうやって今たくさんの人と出会うことができましたし、経験も全てが財産だと胸を張って言えます」

最後に挙げた「2つの伝えたいこと」

そして約1時間の講演の最後、2つ伝えたいこととして会場の全員に話した。

「障がいを持つ人の代表として言えることは、もちろんなってほしくはないですが、いつ自分たちが障がいがある状態になっても不思議ではないということです。近いようで遠い・遠いようで近いと思うんです。

あとは、皆さんが将来いろいろな世界に羽ばたいた時、障がいがある人と出会うことがあるかもしれません。

その時、一つ覚えておいてほしいのは『不便なだけであって不幸ではない』。みなさんと変わったことは全くないですし、困ったときは助けてほしい。そんな人になってほしいと思います。

あと、私個人として大事にしている事は『自分で決断をすること』。これまで、大きな”決断”を何度もしてきました。指を切断をすること・チームに入団すること・プレースタイルを変えること。これらは全て自分で決めてきたというのがあります。

最後に伝えたいことを2点挙げた

どちらかを選ぶということは捨てる。それだと苦しいと思うんです。そうではなくて、選んだ方が正しいと思えるように行動して結果を出すという考えが大事だと思います。

これからいろいろな選択を迫られる場面に出会うと思います。その時はたくさん悩んで、相談してもいいです。時には誰か参考にするのもいいと思います。

ただ、最後は自分で責任を持って決めてほしい。それが自信につながっていきます。一歩踏み出した先に待っている人や事にワクワクしながら、自分自身の可能性を信じて応援してあげる。そんな人になってほしいと願っています」

最後は実演会が行われた。片手グラブを持ち替えて投げる動作や土屋が実践している両投げを野球部員と共に体験した。

最後には実演会も行われた

後日生徒たちからは、

「自らの障がいと向き合い、発想を変えてこんなことが出来る・こんな利点があるとポジティブに捉えていける姿に感動しました」

「自分のできないところはむしろ、自分ならではの戦術であると捉えて野球をする姿を見て、簡単に物事を諦めてはいけないと自身を見つめ直すきっかけにもなりました」

などと数々寄せられた。当日も質問が挙がり続けるなど、生徒にとって普段得ることのできない体験となった。

(おわり)

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