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「社会課題を解決するためにスポーツや施設がある」アメリカの事例から見るスポーツ産業の近未来〜横浜スポーツビジネススクール最終回①〜

アトランタの事例から検証する球場からの街づくり

一方、アメリカの場合はどうか。球団と球場の関係性について鈴木さんはこう説明した。

「球場と球団は”事業パートナー”の関係が築かれています。球場にとって収益を増やすためには球団は欠かせない存在なので、球団の収益は球団に渡すとともに、観戦体験をプロデュースする権利も全て渡しているんです」

また、球場と球団の一体経営以外にも「アメリカは日本よりも進んでいる」と語る。

「アメリカでは、スタジアムやアリーナはエンターテインメントを提供する場所にとどまらず、街づくりやイノベーションを起こす場として活用される。そういうフェーズに入っています」

アメリカでの事例としてアトランタ・ブレーブスでの取り組みを挙げた。ブレーブスが現在本拠地としているトゥルーイスト・パークは、郊外のコブ群に新たに建設されたもので、2017年に開場している。

なお、16年まで借用していたターナー・フィールドは、中心部のダウンタウンに立地していた。この事例は、球団自らが街をつくったケースであると解説する。

「建設前はほとんど雑木林だったエリアに球場ができ、そしてその周辺に”街”ができたんです。ホテルやオフィス、インキュベーションラボなどができた。オフィスに本社を誘致したり、ラボではVC(ベンチャーキャピタル)と組んだりもして、イノベーションを創り出すなどしています」

アトランタ・ブレーブスの例で日米を比較した

このエリアは球場と街の関係を野球の投手と捕手になぞらえて”The Battery Atlanta”と名付けられている。

鈴木さんは、自治体と球団の関係性についても説明を加えた。

「ここでは、球場運営は球団で担っています。一方で自治体がその収益を球団に渡す代わりにどこに着目をしているかです。それが周辺エリアなのです。社会資本を集積させて地域を活性化させたいというのが自治体の考え。なので、街づくりの主体は自治体になります」

球場ができ、その周辺に施設ができることによって新しいビジネスや観光、生活圏が形成される。何もなかった場所に経済が回り栄えることで、新たな価値が生まれる。

「住んでいる方や働く方が、街に誇りを持てるなど、お金では測れない社会的な価値も自治体は重視します。球団は収益、自治体は社会資本という整理が明確にできると街づくりにおいて好循環ができます。そういう関係性が日本でもできてくるとスポーツの施設を起点にした街づくりはよりやり易くなってきます」

シアトルで創られた新しいアリーナ運営の形とは

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