
山内ジャヘル琉人 1年目は課題を強みへと転換「チームを変える選手に」理想へと挑んだ成長の軌跡
2024-25シーズンに特別指定選手として川崎ブレイブサンダースに加入した山内ジャヘル琉人選手。190cm・96kgという恵まれた体格を活かし、SGとして川崎に新たな光を照らしている。
ただ決して順風満帆に行っているわけではなく、試行錯誤の連続で大きな成長を掴み取っていた。
ここではルーキーイヤーを終えての山内の今シーズンを振り返る。
(写真 / 文:白石怜平)
最終戦で見せた真骨頂
山内はシーズン最終戦後、自身の今季をこう振り返った。
「(米須)玲音と僕が一番若いので、チームに新しい風を吹き込められるよう臨みました。
ネノさん(ロネン・ギンズブルグHCの愛称)は速い展開でバスケをつくるのですが、それを良い形でできた部分もありました」

大学最後の公式戦を終え、Bリーグ初出場を果たしたのが昨年12月28日の第15節茨城ロボッツ戦。以降、チャンスを勝ち取っていき34試合に出場した。
山内が得意としている一つがドライブ。北卓也GMは山内獲得の理由を発表会見で明かしていた。
「山内選手はドライブの速さ。走り出しの初速が速いので、ディフェンスからオフェンスに切り替えた時に山内選手が初速で走り抜いてくれることを期待しています」
山内自身も「得意分野として磨いてきたところですし、学生時代から徹底的にやってきたので自信があります」と語るプレー。
その言葉通り、真骨頂とも言えるプレーが最終戦の三遠ネオフェニックス戦でも表れていた。
最終Q残り5分を切った場面で、ディフェンスリバウンドでボールを奪うとそのままドライブし、見事なダンクシュート。満員のとどろきアリーナが大歓声で山内を讃えた。

「自分はダンクを常に狙っているので、それを出せたのは良かったです。自分の強みでもあるので。
ただ、その前までにチームとして努力したからこそ得点に繋がったと思っています。ディフェンスが頑張った結果、自分のところにボールが回ってきての結果です」
と、先輩たちへの感謝も忘れなかった。
転機となった2月の試合
「滋賀戦が一つの転機になったと思います」
山内が語ったこの試合とは、2月1日の第20節。ホームとどろきアリーナで行われた滋賀レイクス戦である。
「得意なプレーができてチームも勝てた。自分が何ができるかを少しでも証明できた試合でした」
13得点に加えてオフェンスリバウンド4本を決めるなど、勝利へ導く活躍を見せた山内はこの試合のMVPとして表彰された。

ここで実践できたのが的確な判断を持ってプレーできたことだった。オフェンスリバウンドを数々決められた要因について、この試合後に振り返っている。
「ディフェンスが戻るのか戻らないかで判断しました。できるタイミングは奪いに行って、でも相手に走られたくないので考えつつ、冷静にジャッジしながらできたプレーでした」
最終戦後にシーズンを通じて成長できたと感じたことを伺った際、より頭を使ったプレーについてを挙げていた。持ち前のフィジカルに加えて、咄嗟の判断力や考えといったクレバーさが着実に合わさっていた。
「相手がどのように攻撃するか予測して動く。相手の特徴をしっかり掴んでポジショニングを取る。そこが成長できた部分です。あとは、ディフレクションの仕方だったりポジションの取り方。これらも学んだことを体現できたと思います」

ディフェンスからリズムをつくる
山内の持ち味はスピードだけでない。それは、強いフィジカルから成される強度の高いディフェンス。
コートに入る上で、ディフェンスを意識することは大事な要素だと語る。
「自分はスタートではないので、途中から入った時に何が必要かと常に考えているのですが、ディフェンスとリバウンドから自分のリズムをつくっています。
オフェンスマインドとなるとディフェンスがルーズになったりリバウンドを相手に取られてしまいます。
ディフェンスとリバウンドから自分のリズムができれば、それがチームのリズムにも繋がるので、それが自分の役割だと思って強く意識しています」

リズムをつくることに加えて、ディフェンスは山内にとって一つの大きな武器となった。
「守りでもアクティブに行くことで、ディフェンスで脅威を与えられている手応えがあります」
自身が語った相手へ与える脅威。具体的なポイントを2つ挙げた。
「オンボールとオフボールで相手にボールをもらいたいポジションで渡させない。ピックを使いたい場所で使わせない。いずれも相手のミスを誘発することにつながるという脅威。
僕は腕の長さを活かしてスティールやブロックをするのが得意です。その能力を活かしながら、頭も使って相手の得意なことをさせない。この2つです」

4月16日の横浜ビー・コルセアーズ戦では、その言葉通りスティールとブロックを2本ずつ決めた。スティール1本以外は全て第4Qで成功させており、終盤に競った展開で確かな存在感を放った。
「自分の良さはアタック」課題が強みへと変わる
シーズン最終戦後、川崎の指揮官として会見に出席した勝久ジェフリー アシスタントコーチ(AC)は山内の成長をこう評していた。
「さまざまな判断を瞬時に行うことにおいて、ミスを恐れないようになったと思います」
当初はシュートを放つことやパスを回すなどといった判断がうまくできないことがあったという。そのことについて山内に問うと、「確かに最初はありましたね」と答えた。
元々は「受け身で様子見で入るタイプなんです。エンジンかかるのが遅いって親にも言われました(笑)」と、その恵まれた体格からは意外だが、シャイな一面を持つ。
しかし、その迷いはジェフリーACが解き放ってくれた。
「ジェフリーさんが言ってくれたのは、『自分がどこまでできるかを知るためには、まず自分がアクティブにプレーするようにならないといけない。
ミスからも学べるから、まずはこのシーズンをしっかりアタックマインドで取り組もう』と」

ジェフリーの助言を実践し続けた結果、いつしか「自分の良さの一つはアタックするところです」と長所へと変わっていた。
大学時代には山内以上のフィジカルを持つ選手との対戦はそうなかったが、Bリーグではそんなビッグマンとのマッチアップは毎試合と言っていいほど発生する。
そんな過酷な場面でも、向かっていく姿勢を持って臨んでいった。
「そこで怯むことなく自信を持って、自分ができる最大限のプレーをやることを出そうと。一回でも相手を止めればチームも勢いづくので、負けない気持ちを出しながらやっています」

ビッグマンとの対峙以外でも、一つひとつのプレーにチャレンジし続けていき、次第に大きな活躍を生み出していった。
「ミスしても次に繋がる経験として積み重なっていきました。3Pシュートも自信を持って打てるようになったと感じています」
特にそれが表れていたのが、4月27日に行われた第35節のアルバルク東京戦。この日はプレータイムは自己最多の28:12で、11得点をマーク。うち9得点は3本の3Pシュートだった。
Bリーグトップクラスのチーム相手でも臆することなく、培っている実力を発揮した。
このように成長を見せた山内だが、その過程は「変えようという意識を持ちながら、試合を重ねる中で変わっていったと思います」と振り返る。
出番は試合が始まればいつだって発生しうる。さまざまな状況に適応しようと一瞬一瞬を大事にしていった結果、積極性が築き上げられた。
「どんな状況でも『自分は何をしなければならないか』を考えて、試行錯誤を重ねてきました。
ミスしたからと言ってマイナスになったわけではなく、その都度『ここでは自分の良さをどう出さないといけないか』を学べた。
それで試合で自分が貢献できた部分もあったので、挑戦していった中で一つ一つ感じられたのだと思います」

来シーズンの山内にもジェフリーACは大きな期待を寄せている。
「彼のサイズや身体能力、ウイングスパンはすごく良いものを持っています。迷いなくディフェンスで激しくできれば、オフェンスでも迷いなくできることに繋がります。
今日(最終戦)もそういうシーンが見れて嬉しかったです。これからもミスを恐れずどんどんトライして欲しいと思っています」
経験と挑戦の一年目を終えた山内。
「アクティブさを出してチームを変えられる選手になりたい。チームの中心選手になりたいという想いがあるので来シーズンも必ず続けたいです」
こう力強く語った。米須とともに吹き込む新たな風はさらなる旋風となってとどろきアリーナを沸かせる。
(おわり)