川崎ブレイブサンダース ニック・ファジーカス 引退試合「NICK THE LAST GAME」共に川崎を支え続けた戦友それぞれの想いとは

5月30日、とどろきアリーナ（川崎市）で「NICK THE LAST GAME」が行われた。川崎ブレイブサンダースで12年のシーズンを送ったニック・ファジーカス選手の引退試合。

川崎そして日本代表で共に戦ったスタープレイヤーが一同に集結し、”NICK THE LAST”のフィナーレを飾った。

（表紙写真©KAWASAKI BRAVE THUNDERS、取材 / 文：白石怜平 ※以降敬称略）

「NICK THE LAST」を飾る豪華な面々に加え、サプライズゲストも

この日はファジーカスの功績そして人柄を表す、そうそうたるメンバーが集まった。

2023-24シーズンを戦い抜いた川崎のチームメイトや、かつて”ツジーカス”として川崎の得点源を担った辻直人（現：群馬クレインサンダース）も参加。

加えて、日本代表で一緒に日の丸を背負った田中大貴（サンロッカーズ渋谷）や竹内譲次（大阪エヴェッサ）、Bリーグを初年度から盛り上げ続けてきたベンドラメ礼生（サンロッカーズ渋谷）などもラインナップに名を連ねた。

そして、サプライズゲストも登場。それは渡邊雄太だった。田中や竹内らとともに日本代表で共闘した渡邊は「今日はニックのために来ました」と、とどろきへと駆け付けたのだ。

ファジーカスも知らなかったそうで、その時に会話したことを試合後に明かした。

「今日アリーナに着いたら彼の名前だったりとかユニフォームがあったのを見たので、これは特別なことだと思いました。

彼とは試合前にも少し話したんですけども、『来年B.LEAGUEに帰ってきたらプレータイムも伸びるし、絶対疲れるよ』と。僕も彼自身がリーグにどれだけの影響与えられるか、これから見守っていくので楽しみにしています」

試合はTEAM REDとTEAM WHITEに分かれ、REDは川崎の北卓也GMがヘッドコーチ（HC）に。来日した12年から19年まで、ファジーカスは北HCのもとでプレーしており、5年ぶりにHCと選手に戻った。

WHITEは今季まで川崎を率いた佐藤賢次 前HCが指揮を執る。ファジーカスは前半TEAM RED、後半からTEAM WHITEに移ってフル出場した。

川崎で10年以上にわたり共にしたメンバーたちの言葉

試合は、出場選手がそれぞれの持ち味を発揮した。ファジーカスとは12年全て、そして日本代表でも一緒に戦った篠山竜青は、第1Qなかなかシュートが決まらないシーンもあったが、第2Qで3Pシュートを決めるなど存在感を放った。

篠山はファジーカスの引退について改めて、

「12年一緒だったので自分の人生を振り返った時に必ず出てくる顔と名前だと思いますし、本当に特別な存在です。”寂しい”という一言では表しようがないですが、あえて言葉にするとすれば今は寂しい思いでいっぱいです」と率直な想いを述べた。

また、この試合について問われると

「引退試合をとどろきアリーナでやって、多くの方で会場が埋まって、バスケットLIVEで配信までされることは当たり前ではないので、そこでも改めてニックの凄さを感じます。

川崎・東芝に所属していたメンバーだけでなく代表メンバーもこれだけ集まってくれたところは、彼のプレーヤーとして、人としての人望があってこそだと思うので、すごい選手だと感じました」と、リスペクトの意を表した。

ファジーカスと同期入団で同じ時を刻んできた長谷川技も第2Qで4本の3Pシュートを決め、長年共に攻撃をけん引してきた藤井祐眞も試合を大いに盛り上げた。

長谷川は昨年9月の出陣式で言葉を詰まらせるシーンもあった。そしてついに来てしまった最後のユニフォーム姿。この試合についてこう述べた。

「今日の引退試合をやっていく中で、12年間一緒に過ごした、楽しいとき、優勝した瞬間、悔しい瞬間を思い返して寂しいなという気持ちになりました。

この12年間ニックが川崎ブレイブサンダースでプレーをして、最後川崎でバスケット人生を終えるということがニックにとって最高の選択だと嬉しいです」

また、藤井も14年に入団してからずっとファジーカスと共にプレーしてきた。

「素直に引退してほしくないです。ニックと一緒にやってきて今の自分があると思うので、またニックとプレーをする機会があったらやりたいですし、僕もまだまだ現役を続けていくので、またいつかニックが日本に来たり、映像で僕のプレーを見てくれたら嬉しいです。そのために全力で頑張り続けたいです」と率直な心境を語った。

そして、感謝のメッセージを寄せた。

「ニック、ありがとう。右も左もわからないままスタートしたプロキャリア生活で、ニックのおかげで沢山の優勝を味わうことができて、沢山いい思いをさせてもらいましたし、自分自身も成長させてもらったので、ニックがいなければ今の自分はいないです。ニックには感謝しかないです。本当に10年間ありがとうございました」

後半はダンクシュートも飛び交い、アリーナが何度も沸いた。ジョーダン・ヒースやロスコ・アレン、トーマス・ウィンブッシュが次々に魅せると、渡邉もファジーカスから受け取ったパスから豪快なアリウープダンクを決めた。

後半に、ファジーカスのいるチームで指揮した佐藤HC。ファジーカスへの印象について改めて語った。

「結果を出すためにどう取り組んで、どう自信をつけて、どう準備していくかを誰よりも真摯に自分と向き合って、毎年パワーアップしていた姿が一番印象に残っています。結果を残すとは、こういうことなんだなと毎年毎年教えてもらっていました」

最も活躍した選手はもちろんファジーカス。 40分間フル出場し、一人で73得点・16リバウンドを決めた。 

試合終了残り22.2秒となったところで、代名詞ともいえるフローターシュートを成功させ、さらに残り2.2秒での最後のプレーで辻の3Pシュートをブロックするなど、背番号にちなんだタイムでそれぞれハイパフォーマンスを見せた。

北HCは試合後の会見で、「後半疲れてきたかなと思ったんですけど、4Qに盛り返したので、ここまで（シュートを）入れられるんだと思って見ていました。『まだ引退しなくていいんじゃない？』って言いました（笑）」

とそのプレーに感心するほどだった。試合後にはセレモニーが行われ、ここで重大発表が行われた。

（つづく）