
ミズノ「宇野昌磨スペシャルトークLIVE2024」宇野さんが明かすスケートを通じた表現の変化「自分で自分のプログラムをプロデュースするようになった」
9月14日、都内で「宇野昌磨スペシャルトークLIVE2024」が開催された。総合スポーツメーカー・ミズノ主催のイベントで、同社のブランドアンバサダーを務める宇野昌磨さんが今年も登場。
抽選で選ばれたファンを前に、表現者としての変化や引退を決めた理由などを語った。
(取材協力:ミズノ株式会社 写真 / 文:白石怜平)
アイスショーで圧倒された宇野さんの姿勢
今年で3回目を迎えた同社のトークライブ。今回はスペシャルゲストに小林宏一さん、司会は中野耀司さんが務めた。
このキャスティングは「とても仲がいい2人」という宇野さん自らが行った。


中野さんが”ド緊張している”という小林さんに挨拶を振ると、「普段見れないような盛り上げ方をしますので、みなさん楽しんでください!」と元気に挨拶した。
そして2人から紹介され、宇野さんが登場。大きな拍手で迎えられた。

最初の話題は3人も共演した「ワンピース・オン・アイス」について。この日はちょうど公演を終えて約一週間後のタイミングでもあった。
まずは宇野さんからショーを終えた感想を語った。
「とても楽しく、反響もよかったです。一年越しではありましたが、みんなの努力が合わさっていいワンピース・オン・アイスができました」

2人もショーを振り返り、それぞれの言葉には宇野さんへのリスペクトが込められていた。
「めちゃめちゃ楽しかったです。座長として昌磨がルフィをやってくれて、その背中を見ながら追いかけました。練習の時から120%で臨んでいたので、リハーサルから圧倒されました」(中野さん)
「今耀司が言ったリハーサル。僕たちは10ヶ月ほど空いた上でのリハーサルなのですが、普段なら位置を確認してから始めたりするのですが、昌磨はすぐに曲をかけて120%の状態でスタートした。
『え、リハでこんなにできるの?』と感じましたし、動画を見て予習してやっていたので、見習わないとと思いましたね」(小林さん)

競技者とプロスケーターで変わった表現の違い
続いての話題は引退後の生活に。5月に表明後、何か変化があったかを中野さんに問われると次のように答えた。
「ここまでは嬉しいことに、アイスショーに出させてもらっていたので例年通りでした。ただ、もう一段落したので今までと違う生活へと変わっていく時期になると思いますし、楽しみです」

プロスケーターとして引退表明直後からアイスショーに出演もしていたことから、2人にとっても宇野さんとの共演機会が増えていくのではないか。
そんなことを中野さんが小林さんに問うと、
「僕的には待っていましたね。現役の時から昌磨くんの表現が好きで、今回のワンピースでショーのエキシビジョンナンバーでも”魅せること”に特化している方だと思ったので、これからの活躍をもっと見たいです」
と返し、その期待を寄せていた。

この”変化”の面については、イベント終了後に改めて伺うことができた。
昨年は競技生活と両立しており、深夜まで稽古をして翌日すぐ公演に向かうというハードスケジュールをこなしていた。前年を振り返りながら違いと問うと、
「ここから競技生活が待っていたのかと思うと、すごい考えられないです(笑)」と笑顔ながらも驚きを見せた。
また、表現に変化が表れたのかについてはこのように述べた。
「今までは競技者だったので”点数”がついてました。今回プロになってからは、アイスショーを通じて『難しいことをやっています』と見せるのも大事と考えています。
表現の難しさを自分でどう出せるか、皆さんに盛り上がっていただけるようにどうやって見せるかといった『自分で自分のプログラムをプロデュースする』ことに変わってきました」

宇野さんのスケートで憧れる「音」の表現
ここからは質問コーナーに。事前募集そしてこの場からの質問に宇野さんたちが答える特別企画。寄せられた質問に3人が丁寧に答えた。
事前募集で集まった中で挙がった質問の一つが「お互いのすごい点と、もし入れ替わったらやりたいスケートの技は何か」
宇野さんは2人の人柄を真っ先に答えた。
「宏一くんのすごいところは、年齢関係なく慕われているのがすごくわかります。僕もそういう人間になりたいなと前からずっと思っています。
耀司くんは小さい時から同じ試合に出ていて、エンターテイナーとして素晴らしいスケーターでもあるし、こうやって司会として話すことができる。
僕も今後いろいろな仕事をする上で、真っ先に見習わないといけないなと思っています」

スケートの技においては、小林さんが以下のように語った。
「昌磨は気持ちよさそうに飛ぶジャンプ。あのジャンプを経験したいのはあります。4回転フリップやループもそうですし、あとは音の表現ですね。音に合わせるんじゃなくて、昌磨が表現したところに音が出ている」
小林さんが語った”音”。ここに中野さんが「そうそう!」と即座に賛同し、さらに付け加えた。
「(宇野さんの)音の取り方が、例えば右手を出すという一つだけでも他と違うんです。宇野昌磨になってみてプログラムを滑ってみたい。音がどう聞こえているのかなとか」

「2年前から考えていた」自ら明かす引退への決断
質問は会場からも寄せられた。複数あった中の一つとして、「昌磨さんの今履いているスケート靴は世界選手権と同じものでしょうか?」という質問。
「靴に関しては世界選手権と同じ靴を履いていて、3年以上履いています」との答えに対して、
「すごいですよね?4回転飛んでいて?」(中野さん)
「僕も現役を引退して練習環境が限られてしまうので、それでも1、2ヶ月で違和感を感じるのですが、3年というのはびっくりですよ」(小林さん)
と驚きのリアクションを見せた。

宇野さんからは、「紐を引っ掛ける場所が破れて『こんなところ破けるんだ』というのもあります」と現在の姿が明かされた。
長く苦楽を共にしているその相棒。パフォーマンスに直結する大切な道具であることから、競技生活を送る中で常に向き合ってきた。そんな話から、5月の決断について自ら切り出してくれた。
「現役生活で苦労したと言いますか、スケート靴については常に考えていたと思います。
実は僕が現役を引退した理由として、自分のやりたい練習と目指したいスケートが離れていったことがありました」

2人が「この話、初めて聞くかもしれない」と言いながら、宇野さんの引退秘話を聴き入った。
「競技でいい成績残したいでったり、ゆづくん(羽生結弦さん)やネイサン(・チェンさん)に匹敵したい想いを持って続けてきました。
でもいつしか、スケートと向き合って自分を磨き続ける日々というのが”頑張らなければいけない”感情になっていたこともあって決断しました。ただ、振り返ってみて後悔がないのは今も変わらないです」
引退を考え始めたのは2年ほど前からだったそう。その間に日本男子初の世界選手権を連覇するなど、フィギュアスケート界のトップを走ってきた。そんな中での心境の変化があった。
「世界選手権を優勝して、一番最初に感じた気持ちが”良かった”ではなくて終わったことに安堵して、”練習厳しかったな”と今までにない感情が沸いたんです。初めて1ヶ月スケートから離れてワンピースと出会って、いろんなスケートの形があるんだなと思いましたね」

「多くのことを経験していきたい」今後に向けて
会では宇野さんたちが使用しているミズノのウェア紹介や、参加者お待ちかねの抽選会も行われた。
オリジナルグッズの当選者には終了後に直接手渡しを受けるなど、ファンにとって貴重な交流の時間となった。

約1時間のトークライブは瞬く間に終了となった。最後に3人から今後についての想いが述べられた。
「ショーの世界を盛り上げていきたいですし、現役生活を終えた後のセカンドライフとして活躍の場を作っていきたいです」(中野さん)
「引退してアイスショーをやりたいという人が増えてくるといいですよね」(小林さん)
「僕はプロになって一年目ですので、多くのことを経験して取り組んでいきたいです。競技が盛り上がることも喜ばしいですが、フィギュアスケートの魅力を存分に発信するにはアイスショーも素晴らしい場所だと思います。
皆さんのおかげで成り立っていますので、僕たちは皆さんが楽しんでいただけるものを届けられるよう、ここにいるお2人の力も借りながら進んでいきたいです」

競技生活にピリオドを打ちリスタートを切った宇野さん。
質問時には参加者の方々が一同に「ありがとうございました」「お疲れ様でした」の言葉とともに、「これからも応援しています」と添えた。
トークライブでは、宇野さんの新しい挑戦をみんなで背中を押す場にもなった。
(おわり)
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