
子どもたちの夢を叶える「レンタル岸岡智樹」が始動!トップ選手が自ら出向く特別企画は社会性向上と出会いの場に
現役ラグビー選手によるユニークなサービスが始動した。その名は「レンタル岸岡智樹」。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイに所属する岸岡智樹選手が発案したサービスで、『岸岡智樹をレンタルすることができる』取り組みが8月に初めて行われた。
今回はスタートまでの経緯を岸岡選手に伺いながら、第1回の模様をお送りする。
(取材 / 文:白石怜平、以降一部敬称略)
子どもたちの夢を叶える特別企画としてスタート
岸岡はこれまで現役選手における既存の概念にとらわれない、独自の活動を展開してきた。毎年シーズンオフには「岸岡智樹のラグビー教室」を主宰し、全国の子どもたちにラグビーの楽しさを伝えながら普及活動を継続。
さらに、スピアーズ入団後はラグビーサークルで「トモラボ」を立ち上げ、20代〜60代までの約40名の方が参加するファンコミュニティを築いている。
シーズン中、グラウンドでの活躍を見せながら試合のないオフのタイミングでサークルのメンバーを対象にラグビー体験会を開くなど、ラグビーの伝道師として世代問わずその魅力を発信し続けている。

そして今回ラグビー教室プロデュースの元、新たな企画が生まれた。それが上述の“レンタル岸岡智樹”である。
ラグビー教室として21年の発足から節目の5年目を迎える今期、ラグビー教室をさらに価値あるものにするため、より多くの人に活動の場を与えられる環境づくりにも注力したいと考えたのが始まりだった。
そこで、今年4月に「岸岡智樹のラグビー教室」に実施してもらいたい・実施したいイベントの企画をSNSに募集。集まったアイデアを岸岡ら運営メンバーで精査し、同月末に本施策を採択した。
「レンタル岸岡智樹」のコンセプトは、“子どもたちの夢を叶える特別企画”。
これまで全国の子どもたちに多様なプログラムを提供してきたが、「本当に子どもたちが望んでいることや悩んでいることは何か。それは本人たちにしか分からない」という疑問が沸いていた。
だからこそ、子どもたちには進んでその望みや悩みを岸岡にぶつけることで、一歩踏み出す力を身につけてほしいという想いがスタッフの間で芽生えて行った。
スタッフを始め大人の視点では気づけなかった新たな課題を直接見つけ出し、「岸岡智樹のラグビー教室」のネクストチャレンジへと繋げる意味が込められている。
地区や場所を限定せず、全国各地からオンライン・オフライン問わず実現できる可能性を高められるように企画化を行ってきた。岸岡は実現できた要因そして価値をこのように語ってくれた。
「全国各地にて実施してきた移動型ラグビー教室だからこその知見を活かせること、その経験が多岐に渡る依頼に対して答えることができる幅の広さが我々だからこそ実現できることの価値だと考えています」

キックティーを選びに横浜へ
レンタル岸岡智樹の希望者は全国で20件が集まった。その中で選ばれたのが横浜でラグビーをやっている小学生・タクミくん。
チームでキッカーを務めており、自分に合うキックティーの選び方が分からないという悩みがあった。この度タクミくんが誕生日を迎えるということで、そのプレゼントにキックティーを一緒に選びたいという要望が寄せられていた。
「レンタルする内容の想定は多岐に渡りしていましたが、誕生日プレゼントを一緒に選んで欲しい、その中でもキックティーという専門分野への悩みをレンタル企画で解消できればという想いが一致しました」

そう語った岸岡は横浜へと足を運び、タクミくんと対面した。事前にオンラインで顔合わせはしていたものの、憧れのトップ選手を前に最初は緊張した面持ちもあった。
まずは選手としての悩みや嬉しかったことなどを引き出しながら、タクミくんに寄り添った。リーグでも屈指のキック力を持ち、そのコントロールからチームを勝利へと導いてきた岸岡はこの上ない存在だった。
「キッカーは孤独な場面が多く、なかなか自分の意見を聞いてもらえなかったり、相談できる相手がいなかったりすることもしばしばあります。なので、まずは本人の考えを聞いて尊重しながら自身の理想像に向けて必要なことを段階的に伝えました。
具体的には、理想の蹴り方に対して、どのキックティーがマッチするのか、その理由はどこにあるのかをアドバイスしました。
その他にも印象に残っている試合のシーンで、仲間がトライした後にゴールキックを決めて勝利した試合の話もしてくれました」
約1時間かけ、誕生日プレゼントのキックティーが決まった。最初は緊張で表情も固かったタクミくんからは自然と笑顔が溢れた。
一緒に同行した保護者からも後日感謝と喜びの言葉が寄せられた。
「事前にオンラインで日程等相談していた時から本人は緊張とワクワクが入り混じっていましたが、とても良い誕生日プレゼントになりました!」
タクミ君は早速次の練習からキックティーを活用。岸岡も一緒に練習を行った。現役のトップ選手から直接技術指導も受けられるという夢の続きが待っていた。

第1回を経て感じた収穫と伸びしろ
岸岡はまず第一回を終えて感じたことを以下のように振り返った。
「この取り組みは非常に社会性が強く、価値の高い取り組みであると感じています。『レンタル岸岡智樹』が新たな出会いを生み出してくれた確かな事実があるなと。これらは我々運営サイドにとっても非常に喜ばしいことだと思っています」
今回は対面で直接コミュニケーションを重ねながら、タクミ君に最も合うキックティーを選ぶことができた。
だからこそ、今後に向けてブラッシュアップしていきたいことが頭に浮かんだ。伸びしろについても以下のように述べている。
「遠方の方々への接点を持つにはどうすればいいか、規模の拡大という点においては考える余地があると感じます。
オンラインを活用することでその障壁を軽減することはできますが、届けられる価値も減少してしまう恐れがありますので、その塩梅を考えていく必要があると思いました」

現在第2回の募集が行われ、再び子どもたちに光を照らそうとしている。岸岡は上記を踏まえて今後の展望を最後に語った。
「まずは気軽に応募いただき、我々も立案者の想いにあります『自己効力感を高める』ことにこの企画が寄与していきたいです。
ご応募いただくアイデアに関しては、斬新であることやお互いにとって価値のある時間になることが採用のポイントになります。ぜひこのようなアイデアをたくさん考えて、応募いただけたら大変嬉しいです」
これまでもユニークなアイデアと行動力で常に新しい風を吹き込んでいる岸岡。この企画もまた、ラグビー界の未来に向けて、1本の道筋をつくりあげようとしている。
(おわり)
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