「2年計画でNPBへ行く」関西独立リーグ希望の星 兵庫ブレイバーズ 柏木寿志 5年越しに描く夢の実現へ
飛躍を遂げた2年目のシーズン
多くの壁に直面した1年目だったが、NPBへの目標は決して揺らぐことはなかった。柏木にとってこの1年は”想定内”であったからだ。
「僕は入団が決まった時から”絶対にNPBに入るぞ”という目標を持ちながら2年計画を立てていました。1年目は準備期間と言いますか、2年目にしっかりとアピールできる意識で取り組んでいました。なので、シーズン中に打撃フォームを変えたりなど、いろんなことを試した時期が1年目でした」
そう語り迎えた2年目は目標に向けた勝負の年。柏木は打撃・守備ともに前年の経験を踏まえテーマを設定し、シーズン通してやり通すと決めて臨んだ。
年間通じて取り組んだこととは何だったのか。
「技術面では打撃で僕は右バッターなのですが、スイングの時に体の使い方、特に肘の使い方に重点を置いて練習に取り組むようにしていました。主に右肘の使い方を重点に置きました。金属バットでしたら多少遠回りしても打球は飛びますが、木製だと全く飛ばないので。
あと意識の面では全てにおいて、どんな場面でも積極的に”狙って行く”気持ちで臨みました。打撃も初球からとか狙った球という意味で、守備もアグレッシブに怖がらず思い切って前へ行くことを意識してプレーしました」
結果は数字として確かに表れた。45試合に出場して打率.263、安打数も前年の20本から47本と2倍以上になった。そして盗塁は33を記録しリーグ盗塁王に輝いた。
この結果には、自身の目標と設定したテーマが詰まっていた。
「昨年は例えば打撃で結果が出なかった時でも、『どうにかNPBのスカウトに見てほしい』と考えていました。そこで何ができるかと考えたら、四球でも塁に出たら盗塁でアピールをした方がいいと思いました。走塁からリズムを掴んで打撃や守備に繋げる意識でいたので、塁に出たら”絶対に走ろう”という気持ちでいました」
もちろん塁に出たらむやみに走った訳ではなかった。打席に立つ味方の打者も柏木と同じ想いを持って打席に立ちアピールする立場でもある。試合展開や流れなども読み、チームの状況に応じたプレーというのも心かげていた。
「カウントから配球を予測して”変化球の時に走ろう”といった状況とかを読んで次のプレーをすることができてきたと思います」と頭を使ったプレーも2年目の成長の証であった。
結果も伴いつつあり、NPBスカウトからの評価は上がってきていた。10月上旬には巨人から声が掛かり、入団テストを受けるなど、機運が高まっていたのは事実だった。
また、メディアも柏木に注目していた。ドラフト当日の特別番組では特集が組まれ、家族とのエピソードも紹介され中継も繋がっていた。
本拠地であるアメニスキッピースタジアムでは、ドラフト会議のパブリックビューイング会場が設けられた。チームメートも一緒にユニフォーム姿で集まるなど、家族・地域の方・関係者の皆が指名を待ち侘びた。
しかし、育成ドラフトの終了まで名前が呼ばれることはなく、目標がまた遠のいてしまった。
(つづく)