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ブルーウェーブ日本一から25年 色あせない”がんばろうKOBE”の記憶 小川博文氏「神戸市民と一緒に勝ちとった優勝」

96年は本拠地神戸で連覇、そして悲願の日本一

「今年こそ神戸で仰木監督を胴上げする」キャンプから目標は明確だった。

小川は開幕戦に4番・遊撃で先発。試合もエース星野伸之が完封勝利を決め幸先のいいスタートを切る。

しかし、4月は首位で終えるものの、5月以降は日本ハムに首位を奪われる。7月終了時で2位ながら4ゲーム差をつけられた。

前年とは逆に追いかける立場になったが、全く焦りはなかったという。

「前年の優勝を経験していたので、多少離されていても気にならなかったです。やっぱり逃げる方が辛いでしょう。ペナントレースの中で『ここは落とせない』という試合は落とさなかったですし、粘り強さというものは頭1つ抜けてたんじゃないかなと思います」

その言葉通り、終盤にかけて一気に加速した。8月と9月でそれぞれ貯金8ずつ記録し、首位を奪い返す。その間、日本ハムとの直接対決では8勝2敗2分、8月は1敗もしなかった。

そして9月23日、マジック1で日本ハムとの一戦に臨む。グリーンスタジアム神戸には前年果たせなかった地元での胴上げを観るべく、約4万人の観衆が詰めかけた。

試合はシーソーゲーム。8回に3度目のリードを奪われ、9回2アウトとなったその時、奇跡の逆転劇が始まる。代打で登場したD・J(ダグ・ジェニングス)が起死回生の同点本塁打を放ち、敗色濃厚の状況が一変した。

延長戦に入り10回表を0点で切り抜け、その裏ブルーウェーブの攻撃。先頭の2番・大島公一が安打で出塁すると打席は3番・イチローを迎えた。

あらゆる期待を背負い”イチローコール”に包まれる中、2球目外角の球を流し打ちレフト線へ。守備がもたつく間に1塁走者の大島は一気にホームイン。若きスーパースターがサヨナラ打で決めるというこの上ないストーリーとなった。

「もう本当にね、あの場面でちゃんとスターが決めるんですよ(笑)そこに打席が回ってきて、シナリオ通りに決めてくれたので。前年もですけれども何か僕らだけの力じゃないような気がしましたね。チームメイトがいてファンの方、被災された方たちが足を運んでくれてみんなで勝ち取った連覇だと思うんです」

セ・リーグの覇者は長嶋茂雄監督率いる巨人。この年は最大11.5ゲーム差を引っくり返し「メークドラマ」と呼ばれこちらも劇的な優勝を決めていた。

ブルーウェーブにとっては2年連続の日本シリーズ。前年の経験から、戦い方や個々の準備も万全にして臨めたという。

試合は前年とは真逆の展開に。東京ドームでの初戦からブルーウェーブの3連勝で一気に大手をかけた。第4戦は落とすも第5戦、ついに悲願の瞬間が訪れる。

3回表に先制されるもその裏にこのシリーズMVPを獲得するニールのタイムリーで逆転。小川も2点タイムリーを放つなど一挙5点を奪った。最終回、鈴木平が0点に抑え5-2でゲームセット。神戸での日本一を達成し、最後のミッションを達成した。

「それはもうね、一気に想いが爆発したというか、『俺たちはやったんや!』という感じでしたよ。神戸のファンの方の前で日本一を見せられたことが何よりも嬉しかったです」

この年は、110試合に出場して打率.288。遊撃をメインに守り1・2番以外の打順を打ち日本一に貢献した。

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