「福祉×スポーツ」を体現する2団体が特別講演! ダイバーシティサッカーとBaseball5が創出する共生社会を学ぶ

2月11日、桜美林大学プラネット淵野辺キャンパスにてシンポジウム「福祉×スポーツ インクルージョンの現場を目撃せよ!」が開催された。

スポーツと福祉の両立を図り、体現している2つの団体が様々な学びを発信する時間となった。

(写真 / 文:白石怜平)

福祉×スポーツを推進する2団体の代表者が特別講演

このシンポジウムは、桜美林大の社会福祉学専攻が主催したもの。

福祉とスポーツがどのような化学変化を起こし、新たな視点を示せるかをテーマに展開され、学生から企業の役職者といった約30名が参加した。

「福祉×スポーツ」をテーマとしたシンポジウムに

登壇したのは「NPO法人ダイバーシティサッカー協会」の鈴木直文氏(一橋大大学院教授)と、「一般社団法人ジャンク野球団」の若松健太氏(桜美林大准教授)。スポーツを通じた社会福祉のモデルケースがそれぞれから展開された。

まず鈴木氏による活動紹介。鈴木氏が代表理事を務めるNPO法人ダイバーシティサッカー協会は「スポーツで仲間はずれを生み出さない社会をつくる」という方針を掲げている。

活動の原点となっているのがダイバーシティサッカー。2015年に6人制フットサル大会である「ダイバーシティカップ」としてスタートし、8回開催でのべ1500人が参加する大会として20年まで行われた。

ホームレスや発達障がい、移民や難民など多様な背景を持つ当事者やチームが参加し、“みんな違うから、みんな同じ”という気づきを得られる機会が創出される。

ダイバーシティカップはダイバーシティリーグやダイバーシティサッカー・フェスティバルへと発展し、年間約500人にリーチされる催しとして現在も続いている。

最初に講演した「NPO法人ダイバーシティサッカー協会」の鈴木直文氏

続いて紹介したのがホームレスワールドカップ。

「ホームレスの存在しない世界」を目指し、広い意味でのホームレス状態である「不安定居住」になった方が一生に一回だけ参加できる大会で、同協会は日本チームの派遣を担う。03年からコロナ禍を除いて毎年開催され、170万人の“人生を変える”を実現してきた。

また、同協会は選手選考や派遣を担う日本のパートナー団体として日本チームを結成している。ホームレス状態の経験者に加え、児童養護施設や支援団体が提供する住まいに暮らす若者といった不安定な居住状態にある人らによって構成し、大会の出場をサポートしてきた。

その他にもスポーツを通じた居場所づくりを応援する事業などを展開している同協会は、解決したい課題として“社会的排除”を挙げた。

「お金がない・身寄りがいない・社会的な帰属がないという中で、“自分が楽しむ資格がない”と感じている方ともお会いします。それは本人の責任かというとそうでないことが多くて、既存の制度との相性もあったりします。

我々は世の中に“寛容さ”がないと、社会的排除という状態に陥りやすいと考えています。 この社会的排除をなくしていける仕組みをどう構築するかをスポーツを基点に考えています」

終盤からは鈴木氏が推薦したスピーカーとして、本活動に10年以上関わっている花渕信氏とプレイフルスポーツ・コーディネーターとして活動する毛塚泰樹氏が登壇し、協会を通じた活動について共有が行われた。

スピーカーを務めた花渕信氏(写真右)と毛塚泰樹氏(同左)

「ボール一つで誰でもできる」Baseball5による共生社会創出

続いて、若松氏がマイクを持ち壇上へ。ここでは5人制のベースボール型スポーツである、Baseball5を通じた取り組みについて講演を行った。

一般社団法人ジャンク野球団は草野球チームと、Baseball5のチーム「ジャンク5エレメンツ」の2チームを運営している。

ジャンク5エレメンツは2020年に発足し、日本選手権を3回中2度の優勝(24年・26年)を果たすなど、日本トップチームの地位を築いてきた。

Baseball5を起点に講演を行った若松健太氏

さらに若松氏の発案で桜美林大で授業と部活動を日本で初めて導入するなど、強化のみならず普及そして教育においても浸透させている。

特に24年は、侍ジャパンBaseball5代表監督としてアジアカップ優勝・ワールドカップ準優勝へと導いた若松氏は、

「たった一つのボールで、大勢の人たちが楽しめる。観ている人も楽しめるアーバンスポーツです。Baseball5さらには野球を世界に広めていきたい」と世界を知るからこそ感じた想いを語った。

これらの経験がテーマである福祉へと繋がっていく。24年には大学のある町田市および周辺地域の小中学生を対象にした、Baseball5の教育プログラムを展開し、子どもたちの運動能力低下といった社会課題にアプローチ。

加えて、五輪3大会に出場した元ショートトラック選手の勅使川原郁恵氏とのコラボイベントで、地元の小学校で体験イベントを開催するなど社会貢献活動を重ねた。

Baseball5の“誰でもプレーができる”特徴を熟知する若松氏は、昨年から特別支援学校での展開も促進してきた。

Baseball5との関わりについてストーリーが展開された

大学のある町田市や羽村市、府中市などの特別支援学校生を対象にした体験会を3回行い、今年の1月末には昨秋提携した3×3バスケットボールチーム「ADDELM ELEMENTS.EXE」と共催でアーバンスポーツを同時にプレーできるイベントも行ってきた。

上述した日本選手権では、ジャンク5エレメンツの他にも桜美林大から2チーム、そして体験会に参加した特別支援学校生たちだけで構成された「パラジャンク5エレメンツユース」も参加した。

これらの取り組みは世界初であり、競技を制定したWBSC(世界野球ソフトボール連盟)からも興味関心が寄せられるなど、国際的な影響も巻き起こしている。

ここで若松氏は、2人の特別ゲストを招いていた。パラジャンク5エレメンツユースで選手権に出場した北村真大選手と母・亜希子氏である。

パラジャンク5エレメンツユースを代表して登壇した北村真大選手と母・亜希子氏

北村選手は特別支援学校生が硬式野球でプレーする「甲子園夢プロジェクト」のメンバーとして活動していた。体験会をきっかけにBaseball5の二刀流への挑戦を始めた。

今も競技を続けるとともにイベントでは運営として特別支援学校生たちと選手たちのハブ役を担っている。壇上に上がった北村選手はBaseball5を始めた理由を明かしてくれた。

「音楽やファッションが好きなのですが、アーバンスポーツは音楽やファッションに結びついたスポーツだと感じました。

どんなスポーツなのか動画を見て、それが日本とキューバの試合(24年ワールドカップ決勝)でした。すごく選手達がカッコ良くて、自分もやりたいと言ったのがきっかけです」

北村選手はチームの主将。試合で躍動するのに加えてチームを鼓舞し続けた。真剣勝負を戦った1日をこう振り返った。

「大会に出た感想としては、知的障がいがある選手だけで一つのチームを作って戦うことができたのですが、障がいがあってもスポーツができることを世界中に証明できたと思います」

自身も野球やBaseball5でのプレーを通じて世界中に証明した

亜希子氏も、Baseball5との出会いから大会出場へと瞬く間に進んでいったことに驚きと感謝を述べた。

「半年前には想像もしていないような世界です。甲子園夢プロジェクトに参加した縁から始まって、若松さんそしてチームの皆さんと一緒に本当に幸せかつ温かい時間を過ごせています。

母として一層応援して支えていきたいとともに、今後も自分たちは“みんなと一緒にやっていける”ところを見せたり、頑張ってる姿を見せ続けられたらと思っています」

選手や保護者にも参加してもらい、想いを共有する1時間となった若松さんの講演。最後に、今後の取り組みに向けての展望を語って締めた。

「ダイバーシティサッカー協会さんの話も聞いて見習うべき点がたくさんありました。ダイバーシティへの想いや誰でもできるという競技特性は共通していると思いますし、競技の枠を越えて今後もやっていくことは欠かせないと考えているので、僕もさらに頑張っていきます」

共生社会創出に向け、他競技との連携を深めていく

両者による講演を終えた後はトークセッションに加えて、ワークショップを行った。トークセッションでは質問コーナーが設けられ、ワークショップには講演者も各テーブルを回りながら参加するなど、直接交流を深めた

スポーツと福祉の可能性を模索し、実践している両代表からの講演は、参加者に新たな学びを提供する時間となった。

(了)

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