
S東京ベイ・紙森陽太「みんなが気持ちよくスクラムを組めるように」 チームにもたらす“安心感”が強いFW陣の原動力に
NTTジャパンラグビー リーグワン第13節、クボタスピアーズ船橋・東京ベイは東芝ブレイブルーパス東京に51-7で勝利した。
聖地・えどりくでの28連勝を挙げたと共に、プレーオフトーナメント進出を一番乗りで決めた。
この試合も1番で先発したのがPR紙森陽太。スピアーズが誇る強力フォワード陣の一角として、チームに安定感をもたらす存在として輝きを放っている。
「並々ならぬ思い」で臨んだ一戦
今季2試合目となったブレイブルーパス戦、チーム全体に強い意識が共有されていた。
昨季は決勝で対戦したが惜しくも涙を飲み、今季も1月28日の第6節で開幕からの連勝を止められるなどここまで5連敗を喫していた。
リーグワン制覇を見据える中で必ず勝たなけばならない相手であるだけに、チーム全体で認識を統一させていた。
紙森も「チーム全体が本当に言葉通り東芝戦に向けて並々ならぬ思いでやったと思います。今週もすごくいい準備ができて、それを今日全部出すことができたのではないかと感じています」
と語っており、その言葉からもこの一戦に懸けた思いの強さが伝わってきた。
また勝因の一つとして、相手をイメージした練習がそのまま試合の再現性へとつながっていた。紙森はこの試合に向けての準備の一端を明かしてくれた。
「ディフェンスもアタックも、相手(ブレイブルーパス)をすごくイメージした練習ができていましたし、その精度も高かったです。
特にリッチー・モウンガ選手が積極的にアタックしてくると思いましたので、そこに対してしっかりとプレッシャーをかけていけば、自分たちのペースで進めると考えていました」

スクラムを進化させる「コミュニケーション」
重要な一戦となったこの試合。臨むにあたって、紙森は明確なテーマを掲げていた。
「僕はセットプレーが一番大きな仕事です。そこでしっかりまとめていく気持ちで挑みました」
スクラムは単なるリスタートではない。自陣を守ることや相手陣地の獲得に加えて、チームの心理的優位を生み出す起点となる。実際この試合でもスピアーズはスクラムで優位に立ち、ペナルティを獲得する場面もあった。紙森は試合のシーンを交えながら、その優位性について言及した。
「今日は特にスクラムでペナルティを取れたことが大きかったです。ペナルティを取れると前に進めますし、チーム・特にフォワードもエナジーが出てくる部分もあります。
そういったところで貢献すると、みんなが安心感を持ってくれる。なので、仮に味方がノックフォワードをしてしまったとしても大丈夫だと思ってくれることが一番僕としては嬉しいですね」
紙森の強みはフィジカルだけではない。プロップとしてHOマルコム・マークス、3番PRオペティ・ヘルと連携し、スピアーズの強いスクラムを生み出している。両外国人選手と調和をとるために、心がけていることがあった。
「積極的にコミュニケーションを取ることを心がけています。毎スクラム毎スクラム、一緒に組んだ2人にどうだったのか感触を聞いて、フィードバックを受けるようにしています。
みんなが気持ちよくスクラムを組めるようにしたいと常に考えています。強いフォワードがスピアーズの武器なので、しっかりと押し切っていきたい。そんな想いで日々取り組んでいます」

紙森が組む2人は世界の舞台を知る大型外国人選手。さらに共に桜のジャージを着て日の丸を背負う為房慶次朗らとも組む。自身が上述した安心感をチームにもたらすためにも重要になるのが、意思疎通と微調整であった。
角度やタイミング、プレッシャーのかけ方を細かくすり合わせることで、スクラムの完成度を高めている。個々の強さだけでなく、ユニットとしての完成度。それがスピアーズの強さを支えていた。
チームのバランスは日々の練習が源に
現在スピアーズの得失点差はリーグトップの+292と、攻守で高いバランスを誇る。FWとBKの潤滑油を担うSHの藤原忍が「今季のテーマとして責任を持って取り組んでいる」と語るなど、チームで浸透させている。
このバランスの要因について、FWとしての立場から紙森に問うとこのように答えてくれた。
「コーチ陣がいいシステムを構築してくださったり、いいアドバイスを常にもらっています。
そのアドバイスを安定させるのが僕たちです。ラインアウト・スクラムといったセットプレーを安定させなければいけないと特に意識していますね」
さらに、上述した相手を意識した練習。この質にもチームでこだわりながら、ハードに鍛錬を積んでいる。
「あとは全員が毎練習毎練習、試合を想定した強度やマインドセットでやっています。その精度がどんどん上がっていることがバランスの要因ではないかと考えています」

この日々の練習における基準の高さを示した話を明かした紙森であるが、自身も細部へのこだわりも欠かさない。それは日本代表での経験を通じて、ある意識がプレーへと活かされていた。
「練習の中での移動の速さをさらに意識するようになりました。練習中の移動にもジョギングを取り入れたのですが、“試合を想定して素早く動くこと”を常に意識してやってます。それが特にラインブレイクされた時とかに反映されていると思いますね」
このような小さな意識の積み重ねがグラウンドで大きな差となって表れる。チームの完成度は、こうした個々の積み重ねによって生まれるものであった。
「まずは目の前の一戦に全力で」
この勝利によりスピアーズは再びDivision1の首位に浮上した。ただ、3年ぶりのリーグ制覇に向けてまだまだ熾烈な戦いは続いていく。昨年紙森も決勝の舞台に立ったが、あと一歩のところで届かなかった悔しさは決して忘れていない。
「去年優勝できなかったので、今年は絶対優勝したい気持ちがあります。そのためにも、まずは目の前の一戦に全力で取り組むことが大事だと思っています。
そこに対しては準備も大事ですけども、まずは目の前の一戦に全力で取り組むことが、プレーオフでもいいパフォーマンスを発揮できる要因にもなってくると思います。なので、まずは目の前の試合を頑張っていきたいです」

開幕から1番としてチームの躍進を支える紙森。スクラムでチームのピンチを救うのみならずチャンスを呼び込み、勝利を積み重ねる強固なピースとなっている。
(写真 / 文:白石怜平)
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