「野球をする上での”技”を持っている」元メジャーリーガー 川上憲伸さん 身体障害者野球を観て感じた工夫の数々とは?

想像し、感じた身体障害者野球の意義

川上さんは試合に見入りながら、「野球人として見ていて嬉しいんですよね」と語る。一球一球必死に白球を追いかけ喰らいつく姿や勝利への執念、そしてお互いを讃えあうフェアプレーの精神。そういった姿勢がグラウンドから確かに伝わってきた。

選手たちの一生懸命なプレーを見ている中で、自身でもふと考えてみたことがあったと言う。

「もし僕がプロに行く前の学生で例えば交通事故で義手か義足になったとしたら、と自分に置き換えて考えてみたんです。野球を続けるんだろうけども、どう続けるかといった環境などは分からなかったと思うんですよね。

でも、身体障害者野球のチームが全国にあって国際大会もある。そういう方にとっての励みになるのではないかなと」

始球式後には試合を観戦し、魅力や感じたことを語った

川上さんの言葉通り、今プレーしている選手たちにとって身体障害者野球は再びグラウンドへと戻る大きなきっかけとなり、そして日々の活力になっている。

交通事故などで一度は「もう野球はできないだろう」と断念しかけた方たちが、松葉づえや車いすでプレーする姿を写真や映像を通じて知り、「もう一度野球ができるかもしれない」と再起へのモチベーションになったという選手も多くいる。

今大会で首位打者に輝いた小寺伸吾選手(神戸コスモス)もその一人

国際試合だからこそ見えること

川上さんはここで、WDBの素晴らしさをさらに挙げた。五輪やメジャーも経験したからこその視点があった。

「僕がこの国際大会がすごくいいなと思うのは、国の色が出ますよね。アメリカはメジャーのような力強い野球をやるとか、台湾が牽制などこまめにやるのはアジアの野球の特徴だなとか。

あとは、国際交流を通じた情報共有。世界全体でレベルが上がっていきますし、人としても成長できると思うんです。純粋に野球をする姿に感動します」

国境を超えて国際交流の場にもなった

川上さんは現在解説者としてTVや新聞、そしてYouTube「カットボールチャンネル」など様々な舞台で活躍している。最後に、現在の活動も踏まえながら今後の身体障害者野球への想いについて語って締めた。

「プロを引退してから、『野球ってこんなに楽しいんだよ』と発信しています。その中で、少年野球で指導をしたりYouTubeもやっていますけれども、身体障害者野球を見たことで野球を見る角度が増えましたし、始球式もやらせていただいてすごくいい経験になりました。もっとみなさんに知ってほしいですね」

今回のWDBを通じ、川上さんの豊富な経験にまた新たな1ページが確かに加わった。

開会式後、福本豊さん(中央)や在名古屋米国領事館首席領事のマシュー・センザーさん(右から2人目)らと記念撮影を行った

関連記事一覧