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【Dリーグ連載 第2回】avex ROYALBRATSのJUMPEIが明かす漫才ダンスの誕生秘話「0か100だと思っていた」

世界初のダンスのプロ、Dリーグはラウンド8が行われ、avex ROYALBRATSは音楽がない漫才の音源で踊り切り、4-2で勝利を手にした。異例のパフォーマンスは、ジャッジの賛同が得られなければ大敗の可能性もあった。リーダーJUMPEIはラウンド後、発想の原点と、挑戦への覚悟を口にした。(取材/記事:飯島智則、表紙写真は©D.LEAGUE24-25)

回らないお寿司屋さん

「どうも~」
「オレさあ、回らないお寿司屋さんに行ってみたいんだ。でも、緊張しちゃうんだよね」
「じゃあ、練習しておいた方がいいね」
「お願いします」
「ガラガラガラ(引き戸が開く音)」
「どうぞ、カウンターの方にお座りください」
「ありがとうございます」

avex ROYALBRATS(通称aRB)のパフォーマンスが始まっても、音楽が流れない。漫才の語りが続くだけだ。まあ、前振りで、そのうちテンポのいい音楽が始まるだろう。多くのファンもそう思っていたのではないだろうか。まさか漫才だけで踊り切るとは……

aRBのパフォーマンス ©D.LEAGUE24-25

「いやあ、やっぱり雰囲気あるなあ」
「うちは色々とルールがありやすんで」
「ルールがあるんですか?」
「ご理解ください」
「さすが高級店」
「わかりました」

スーツ姿の客を演じるKohsuke Hattoriとかばおの漫才が続き、その後ろに陣取る板前の姿をした他のメンバーは動かない。

「まず、お茶はそこの粉を入れて自分で作ってください」
「いや、完全に回転寿司じゃねえかよ」
「あと食べ終わったお皿は、その穴の中に捨ててください」
「いや、だから回転寿司じゃないか」

©D.LEAGUE24-25

音楽は流れないまま、漫才の声に合わせてメンバーが踊り始める。音楽がないにもかかわらず、メンバーの動きはぴったりと合っている。Shiggyのエースパフォーマンス、そしてシンクロパフォーマンスは「ドンドコドコドコ」というリズムに合わせて完全に動きをシンクロさせた。結局、音楽が流れないままパフォーマンスは終わった。

漫才だけで踊り切るという異例の作品に対し、ジャッジがどう判断するかが懸念されたが、4-2で見事に勝利を収めた。

音源聞き「さあ、どうしようか…」

ラウンド後の会見で、リーダーJUMPEIが言った。

「今回は2分15秒フルで漫才の音源のみだったので、すごくタイミングを合わせるのが難しかったです。メンバーで何度も何度も合わせて、この音が聞こえたら動き出そうとか、そういう部分をすごく意識しました」

音楽が流れず、漫才でダンスをするという異例の作戦。一体どのように作ったのか。

「今回の作品は、実は松田鼓童さんという方がいらっしゃるんですけど、その方が舞台のワンシーンで漫才でダンスをするという作品があって、そこからインスピレーションがあり、松田鼓童さんにも連絡させてもらって、こういう作品をDリーグでやりたいと言ったところからスタートしました」

©D.LEAGUE24-25

「どうも~」から始まる音源が出来上がり、メンバー全員で聴いた。

「一度聞いてから『さあ、どうしようか?』となりました。シンクロとエースの場所を決めるのも大変でしたし、漫才は2人なので、それ以外の人はどうするのか。全員が漫才師になるのか? 黒子になるのか? そういう部分から試行錯誤して、あの形になりました」

冒険ともいえる作品に不安はなかったのか。結果的に勝利は収めたものの、ジャッジがどう判断するかは微妙で、一歩間違えれば大敗もありえた。会見を終えたJUMPEIに話しかけると、彼は立ち止まって答えた。

「0か100と思っていました。スイープするか、スイープされるか? (ジャッジ4-2)割れるとは思わなかったけど、取れなかったテクニックとコレオグラフィーも含めて、各項目で振り切れているんじゃないかと思います」

トータルランキング(順位)は7位まで上がり、チャンピオンシップ(CS)進出圏内の6位も近づいてきた。もちろん、CSは大きな目標である。しかし、aRBの目標はそれだけにとどまらない。

「今後も残り半分、僕たちにしかできないものがまだまだあると思いますので、勝ちはそうなんですけど、勝ち以外に何かおもしろいもの、新しいものを追求できたらと思います」

この日のラウンド前には会場外の寒空で、ファンと「あっち向いてホイ」でバトルするイベントを開催した。短時間であったが、ファンとともに大声で笑い合う姿があった。

あっち向いてホイから漫才。aRBの周辺には、この日も笑顔があふれていた。

ファンとの「あっち向いてホイ」でKooDaが連勝する

【順位】
❶CyberAgent Legit
❷KADOKAWA DREAMS
❸Valuence INFINITIES
❹SEPTENI RAPTURES
❺KOSÉ 8ROCKS
❻LIFULL ALT-RHYTHM
❼avex ROYALBRATS
❽DYM MESSENGERS
❾dip BATTLES
❿Medical Conciege I‘moon
⓫List::X
⓬SEGA SAMMY LUX
⓭Benefit one MONOLIZ
⓮FULLCAST RAISERZ

◆飯島智則(いいじま・とものり)2025年からフリーのスポーツライター、大学教員の二刀流で活動を始めた。
1993年に日刊スポーツ新聞社に入社し、主にプロ野球担当として横浜(現DeNA)巨人などを担当。2003年からは松井秀喜選手と共に渡米して大リーグを、帰国後は球界再編後の制度改革などを取材した。近年はDリーグに力を入れている。
著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「横浜大洋ホエールズ マリンブルーの記憶」「メンタルに起因する運動障害 イップスの乗り越え方」(企画構成)。ベースボールマガジンでコラム「魂の野球活字学」を連載中。

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