車いすバスケットボール 節目の第50回天皇杯開催 「NO EXCUSE」は”連携のバスケ”で3位入賞に

1/31〜2/2の3日間、東京体育館で「天皇杯 第50回記念日本車いすバスケットボール選手権大会」(以降、天皇杯)が開催された。

節目の記念大会に臨んだ「NO EXCUSE」は3位に入賞し、今シーズンを終えた。

(写真 / 文:白石怜平)

結成22年目、天皇杯準優勝5回の強豪チーム

NO EXCUSEは2003年に結成し、20年を超える歴史を持つ。東京都や千葉県を活動拠点とし、天皇杯では準優勝5回を果たすなど、全国屈指の名門チームである。

選手は16名在籍し、主将の香西宏昭選手は日本代表として4大会連続(北京~東京)でパラリンピックに出場。21年の東京大会では銀メダル獲得に貢献するなど国際大会の経験も豊富な選手である。

日本の車いすバスケ界の象徴とも言える香西宏昭選手

また、千葉県市川市の地域スポーツクラブ「市川スポーツガーデン国府台(ISG国府台)」と協力し、「車いすバスケットボールフェスタ」を開始するなど、地域との関わりも積極的に深めている。

昨年2月のファン感謝デーで及川晋平HC(東京パラリンピック男子日本代表HC)は、「皆さんと一緒に力を合わせて、天皇杯優勝に向けて、NO EXCUSEらしい経験を作っていきたい」と意気込みを語っていた。

22年から「車いすバスケットボールフェスタ」に参加している

天皇杯では連勝で準決勝へ

いよいよ始まった今年の天皇杯。NO EXCUSEは東京都の予選1位通過し、この舞台に帰ってきた。昨季は4位に終わった悔しさをチーム全員が抱きながら臨んだ。

初戦は千葉ホークスとの一戦。昨季発足した新リーグ「WBスーパーリーグ」でもしのぎを削っている相手に最初は接戦の様相を見せた。第1Qにリードするも、前半終了間際に逆転を許し30−32で折り返した。

初戦はリーグ戦でも戦う千葉ホークスが相手に

しかし、ここから再び勢いを取り戻したNO EXCUSEは第3Qで逆転すると第4Qでリードを広げ、61−51で勝利し準々決勝へと駒を進めた。初戦終了後に及川HCは試合のポイントはリバウンドにあったと語った。

「ディフェンスでリバウンドを獲ってどう攻撃に転じれるかがポイントでした。オフェンスでもリバウンドから攻め込まれると相手のペースになってしまうので、こちらのペースに持って行けたと思います」

初戦はリバウンドを勝負のポイントに挙げた及川HC

金曜日のこの日、スタンドでは黄色い声援が選手を後押ししていた。台東区立・谷中小学校の5年生の生徒たちが応援に駆けつけた。

というのも、日本車いすバスケットボール連盟(JWBF)と日本パラリンピック委員会(JPC)が共同で教育プログラムを展開しており、その一環で子どもたちを招待した。

プログラムの中には車いすバスケットボールの体験会があり、NO EXCUSEからは森谷幸生選手らが参加していた。その時交流を深めた生徒たちが手作りの応援グッズを掲げ、精一杯声を届けた。

スタンドからの応援も力になった

及川HCもその声は「聞こえていましたよ」と語り、「とても力強い応援でした。相手のペースになっても、子どもたちの声でもう一度流れを呼び込んでもらいました」と大きな”戦力”に感謝した。

翌日行われた準々決勝のワールドBBC戦では、前半に34−25と主導権を握ると後半もリードを保ち63−45と連勝。準決勝に進出した。香西はチームがここまで勝ち進めた要因について振り返った。

「一人・二人が引っ張っていくのではなく、みんなで連携して得点を決められるのが我々の強さです。この”連携”を40分間常に続けていけたことが勝因だったと感じています」

チーム勝利の要因は連携にあったと語った香西

王者・神奈川に屈するも3位決定戦に勝利

そして準決勝は神奈川VANGUARDSとの対戦に。神奈川はこの大会も制覇し天皇杯3連覇を果たしている王者。昨年12月のリーグ戦でも敗れ、リーグ初優勝のタイトルを奪われた相手でもある。

森谷も「神奈川には練習試合含めて勝てていなかったので、最大のヤマ場になるという認識はみんなが持っていた」と、照準を置いて臨んだ。

神奈川戦を「最大のヤマ場」と語っていた森谷幸生

しかし、鳥海(ちょうかい)連志選手ら東京パラ代表3選手を擁する神奈川は序盤から猛攻を見せた。
点差が広がっていく展開となりながらも必死に喰らいついたが、49ー79で敗れ優勝の望みは絶たれてしまった。

森谷は「結果がついてこなかったのは残念だったが、最後までチームとしてやるべきことを意識し続けて戦い抜けた40分でした」と振り返り、

「最後はここに向けて準備してきましたが、うーん…神奈川が上回ったのが全てです」と悔しさを滲ませた。

翌日切り替えて臨んだ富山WBCとの3位決定戦は58ー38で勝利。全国制覇には届かなかったが、3位という成績を成し遂げた。また、個人賞であるオールスター5ではクラス4で朏(みかづき)秀雄が選出された。

オールスター5に選出される活躍を見せた朏秀雄

昨年4月に埼玉ライオンズから移籍し、ベテランの年齢にしてさらなる成長を遂げた朏は、本大会でチームの得点源として幾度となく得点機を演出した。

その朏への激しいディフェンスの中、針の穴を通すようなパスを供給した香西は同級生でもある朏を讃えた。

「秀雄も去年の4月に入ってからタフな一年になっていると思うけども順応してくれたし、自身のパフォーマンスを発揮しています」

大会では目標の優勝を果たせず悔しい想いもあったが、アリーナ席や2階・3階のスタンドをオレンジに染めるほど多くのファンが背中を押した。

コート内外での「連携」を強みとしたNO EXCUSEは、歩みを止めずにこれからも走り続ける。

(おわり)

【関連記事】
ISG国府台「車いすバスケットボールフェスタ」第3回目はNO EXCUSEのホームで繰り広げられる真剣勝負の場に

NO EXCUSE ファン感謝デー開催 及川晋平HC「皆さんと力を合わせて天皇杯優勝を目指す」地に足付ける一年から今シーズンの飛躍へ

ISG国府台×NO EXCUSE 車いすバスケットボールフェスタ2023開催 笑顔と活気のあふれる地域のコミュニティ形成に

関連記事一覧