現役引退を表明したニック・ファジーカス 「この決断は悲しいことではない」チームの合言葉に込めた想いと日本代表に残したものとは？
9月16日、川崎ブレイブサンダースのニック・ファジーカス選手が2023−24シーズン限りでの引退が発表された。
かつてはNBAでプレーし、数々の国を渡り歩き2012年に来日。
Bリーグが発足した初年度の2016-17シーズンに得点王・ベスト5に輝き、初代MVPを受賞（NBL時代を含めると2回目）。その後も活躍を続け、Bリーグ歴代最多の通算8789点（9月28日現在）をマークしている。
出陣式後の記者会見で、川崎での12年そして帰化後に大躍進した日本代表についてなどを振り返った。
（取材協力：川崎ブレイブサンダース、写真 / 文：白石怜平 ※以降敬称略）
最後の勇姿=ラストダンス
記者会見の冒頭、ファジーカスからは「この決断は悲しいことではない」とし、「ここから新しいシーズンが始まるので僕の最後の勇姿を見ていただきたい」と語り始めた。
出陣式で同期加入の長谷川技が言葉を詰まらせた場面について問われるとこう答えた。
「ファンの皆さまも感動してくださったと思いますが、僕も特別な気持ちになりました。長い間一緒にやってきた彼らの想いもあるし、僕も歩んできた時間もあるので、それを（今シーズン）噛み締めていきたい」
チームは今シーズン、「All-In この場所 この瞬間に すべてを懸ける」をスローガンとした。それに加え、英雄の最後に華を添える特別なシーズンに向けた表現として「NICK THE LAST」を掲げるという発表をした。
「スローガンやNICK THE LASTに加えて、チームの中では”ラストダンス”という言葉をよく使っています。僕たちが一緒にやれるのは最後ですし、ここで結果を出さないといけない想いが強いです。
北さんと一緒にNBL、天皇杯の優勝はしましたが、まだBリーグのチャンピオンにはなっていない。最後に僕が成し遂げないといけないのはBリーグの優勝。僕は全てをかけて優勝したいです」
北GMが語った日本で成功し続けた要因とは
記者会見には北卓也ゼネラルマネージャー（GM）も同席。ファジーカスが来日した当時のことを振り返った。
北GMがアシスタントコーチだった時、ファジーカスの存在は当時通訳だった大島頼昌さんから「面白いシュートを打つ選手がいる」と聞いていたという。
北GMは2011-12シーズンからHCへ昇格。ただ、就任1年目のシーズンは最下位に沈んでしまう。
得点力のある外国籍選手の獲得に向けて動いていた中、ファジーカスに白羽の矢が立った。当時マレーシアでプレーしていたため、その目で確かめに現地へと足を運んだ。
北GMがHCを務めていた際に獲得した選手だった
「日程の都合上1試合しか見れなかったのですが、映像では何度も見ていたのでシュート力は間違いないと。当時日本は平面のバスケットだったので、ニックの走力で日本のバスケにフィットするかは考えました。実際に見ると走力以上のものも見せてくれたし、あとは走れるなと。そこは”嬉しい誤算”でしたね（笑）」
来日して実際に見た印象としては、「こんなにシュートがうまい選手いるんだなと思ったし、すごく練習すると思った」という。
一方、ファジーカスも合流して約1週間ほどで、「（当時の北HCの）バスケや日本のバスケにフィットできている」と手応えを感じていた。
北GMは、ファジーカスがリーグ全体に変化をもたらした点も交えて日本で長く活躍できた要因も明かしてくれた。
「当時はローポスト主体のバスケが流行していたので、ニックは身長が大きな選手ですしニックを抑えないと、という思考になったと思います。（川崎でのプレーを見て）他のクラブも身長の高い選手を獲得するようになった。
日本のバスケットの主流がだんだん「ピックアンドロール」へ変わってきてもフィットできていた。シュートがうまいだけでなくクレバーなところが長く日本でプレーできた理由だと思います」
ファジーカスが日本代表で残した”レガシー”とは
