
東京の15チーム共同プロジェクト「TOKYO UNITE」チームそして地域の絆を育み、スポーツ界のモデルケースへ
東京に本拠地を置く15のプロスポーツチームや団体から成る「TOKYO UNITE」。
22年7月の発足以降、競技の垣根を超えたからこそできる新たなムーブメントを起こしてきた。
チーム同士で培ってきた絆は、地域においても同様に築き上げられている。活動の意義にもある東京都そして区などの関わりについて、TOKYO UNITE事務局の井上哲さんにお話を伺いながら紹介していく。
(取材 / 文:白石怜平、表紙写真提供:TOKYO UNITE)
東京都から相談を受け実現した企画も
21年に北島康介さんから挙がった問いをきっかけに動き出し、競技の垣根を超えた14チームや団体はすぐに結束。22年7月に正式に発足した。
TOKYO UNITEが見せた結束はチーム間だけではない。東京都や区ともすぐに連携することができた。
事務局の井上哲さんは、立ち上げに向けて東京都にも相談へ足を運んでいた。
「14チームが揃う前の構想段階から、東京都の小池(百合子)都知事に相談していました。当時に聞いたのは、都でも子どもたちに向けた政策が部署で縦割りになっていたと。
そのため子ども向け政策を横串で連携する”子供政策連携室”というのをちょうど立ち上げようとしてたタイミングでもありました。担当者を紹介いただいて、都のさまざまな部署から課題感をヒアリングさせてもらいました」
TOKYO UNITEの活動軸の1つである社会貢献活動では、このような地域や社会課題に対し、スポーツを通じてアプローチしている。
さまざま行ってきた取り組みの一つとして、23年9月18日に行われた「TOKYO防災×スポーツチャレンジ in東京ドーム」。
この日行われた読売ジャイアンツと東京ヤクルトスワローズの試合後には防災について学ぶ機会を設けた。
「防災コンテンツ」と「スポーツ体験」のコーナーを設置し、チームで協力し身体を動かしながら、楽しく防災を学ぶプログラムを展開した。
「このイベントは東京都と共催したのですが、関東大震災から100年ということで、防災・減災の啓蒙活動を子どもたちに行いたい背景がありました。
ただ、学校での座学だと限界があるので、スポーツと組み合わせることで何かできないかと相談を受けて実現したイベントでした」
また、企画のきっかけとなる課題はスポーツの域を超えた。
23年2月に東京都が英語によるコミュニケーションを増やすために立ち上げたプロジェクト「LET’S T.E.A.M. UP!@Daimaru-Yu」にも参加した。
スポーツがメインではないプロジェクトではあるが、参加に至った経緯についてTOKYO UNITEの想いとともに明かしてくれた。
「英会話力が世界の大都市の中でも低いことが課題の一つにあります。TOKYO UNITEには英語圏出身の外国人選手がいるので、子どもたちからインタビューを受ける企画として提案し、実施しました。
我々は東京をホームタウンにしてるので、東京に恩返ししたい想いがあります。ですので、都が抱えている課題をスポーツで解決することは重要なミッションだと考えております」
地域そして更なるチームとの連携へと広がる
地域と連携し、社会課題にアプローチした活動はさらに広がっていく。
その一つとして、昨年11月に渋谷区で行われた「スローイング×マルチスポーツチャレンジ in笹塚中学校」。これは、区から直接相談を受けたことから生まれた企画だった。
「渋谷区内の小学生は遠投の記録が東京の中でも下位に位置しているということで、区の子どもたちの遠投記録伸びるプログラムがないか、区から直々に相談をいただきました。
そうであればただ投げるのではなく、投げる動作を身につけるために複数の種目で経験してみようとこちらから提案しました。それがTOKYO UNITEだからこそできることだと考えました」
ここでは読売ジャイアンツのアカデミーコーチの他にも、ハンドボール・リーグH男子ジークスター東京の選手や東京大学アメリカンフットボール部WARRIORSのコーチらが参加。
TOKYO UNITEに参加していないチームを問わず協力関係を築きながら、社会課題にもアプローチすることで、東京とスポーツを通じた輪がさらに広がる企画となった。

「他都市でも同じ流れがつくられ、日本全体を元気に」
発足から約2年半活動を続けているTOKYO UNITE。チームそして地域が一つになり、東京を活性化させている。
改めて、このプロジェクトの意義を井上さんに問うた。
「1000年以上ある日本相撲協会から90年以上の歴史があるプロ野球、産声を上げたばかりのチームもあるので、スポーツ界の先輩から学びノウハウをシェアできます。
そうすることで東京のスポーツが盛り上がれば、それぞれ自分たちにもメリットとして返ってくると思っています」
井上さんが語った”ノウハウのシェア”は現場からも聞くことができた。前編で登場した読売巨人軍 ファン事業部の後藤史旭さんは、このように語っていた。
「ジャイアンツでは、日本各地で子どもたちに向けた野球振興活動を行っているほか、東京都内では年間数百校もの幼稚園や小学校で出張授業をしており、TOKYO UNITEではその知見を還元できていると感じています。
ただ、バスケやラグビー・サッカーなどの他競技からも、まだまだ見習うところがあるとも思っていますので、学ばせてもらっている最中です」

そして、東京だけが盛り上がればいいという考えを誰も持っていない。こちらも前編で登場したアルバルク東京の浅野英朗さんはこのように展望を話していた。
「他の都市でも同じ流れがつくられることで、日本全体が元気になるようにつながっていけば嬉しい」
まさに井上さんも同じ想いを抱いている。今後TOKYO UNITEを通じて実現したい世界と共にこう語ってくれた。
「東京の子どもたちが、どんな環境下・経済条件でもスポーツができる。そんな世の中にしたいです。でもそれは”一丁目一番地”です。
このモデルが他地域にも広がり、あらゆる子がスポーツを自由に楽しめるできる世界をつくるために、この活動を続けることで大きくしていきたいです」
4期目を迎えようとしているTOKYO UNITE。東京を起点としたスポーツにおけるムーブメントは、さらに今後も発展を遂げていく。
(おわり)