北海道日本ハムファイターズ 新球場に込められた挑戦「コミュニティ形成に寄与する球場へ」

日本初、開閉式ドームと天然芝

球場を建設するにおいて、まずは選手のパフォーマンスを最大限に発揮できるようにする事が最も重要である。

注目ポイントの1つは開閉式の屋根と天然芝。国内でこの2つを両立する球場は初めてである。この構造はどのように決まったのか。
 
「重視した要素の1つとして、選手やチームのプレー環境を最大化させる施設を作ることでした。その観点から天然芝が最もベストな環境という結論に至りました」
 
天然芝はチームからの要望が強い意見だった。故障のリスクも軽減され、さらなるパフォーマンスの向上が期待できる。そして屋根についても議論を重ねた上で出した答えだった。
 
「北海道という寒冷地で、天然芝を実現するとは一定のハードルがあります。固定式の提案もありましたが、天然芝をどう実現できるかと言う観点から開閉式がベストということになりました」
 
球場の屋根は2枚構造でうち1枚が可動し、フィールド後方の壁面は透過性の高いガラス壁を使用する。12月から2月までの平均気温が氷点下になる北海道で、天然芝を養生するために日光が当たるような構造になるよう工夫されている。

グラウンド上は芝生養生のため透明の屋根を使う

世界初「温泉に浸かって観戦」

プロジェクトを進めるにあたり、軸となるのが「ファンや地域、観光客の方も訪れたくなるようなエリア・球場」である。

観戦スタイルにさまざま仕掛けが盛り込まれている。日本で温泉地の数が一番多いという北海道らしさを出すため、レフト上段に温浴施設が設置される。

「周辺でも温泉がありますし、ここでも実際にやってみたいなと。周辺地域を調査してある程度湧き出るという見込みが立ったので採用することになりました」

レフト上段にある温泉施設。世界初の試みである

また、球場建物の外側からもグラウンドの様子が見えるエリアを設置。球場の外から雰囲気が伝わるような構造になっている。

「球場に入らなくても雰囲気が伝わってきたり、楽しめる場をつくります。F.VILLAGEと連動性をとって、球場に来るきっかけにしていこうというのが思想にあります」

エントランスのイメージ図。グラウンドの迫力が伝わる構造になる

現時点が完成形ではない。常に現場とコミュニケーションをとり、要望を随時設計に組み込んでいる。

「ダグアウトやロッカールームといった、試合以外で選手やチームスタッフが長く時間を過ごす空間にも重点を置いています。これまでの国内の球場のスタンダードにとらわれることなく、アスリートが試合を迎えるまでの環境も世界トップレベルにしたいです」

次ページ:国外のスタジアムを数十箇所視察

関連記事一覧