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元西武・高木大成 野球界そしてスポーツ界発展のために尽力する「セカンドキャリアの充実」〜著書出版記念特別インタビュー最終回〜

かつて西武ライオンズで「レオのプリンス」と呼ばれ、主力打者として優勝にも貢献した高木大成氏。(※)高はハシゴ高

05年に引退後、現在に至るまで同球団の社員としてライオンズを支えている。21年4月にその半生を綴った著書「プロ野球チームの社員(ワニブックス刊)」を出版した。

今回、これを記念したロングインタビューを全6回に分けてお送りしており、本編がついに最終回。高木氏が考える「セカンドキャリア」そして、その先に描く未来を語った。

第5回:「感慨深かったです」新生ドームで実現した理想の形はこちら

(取材協力 / 写真提供:株式会社西武ライオンズ、文:白石怜平 ※以降敬称略)

「元プロ野球選手」そのプライドは持たず、何事も素直に

少年時代から野球一筋。32歳という通常のサラリーマンとしては中堅に差し掛かろうという年齢で”新入社員”となった。

さらに9度の異動を経験し、どれも未経験からスタート。常に壁にぶつかりながらも乗り越え、結果を出し続けてきた。その源は一体何か。答えに高木の人間性が表れていた。

「素直にやっていくしかないですね、カッコつけずに。どうしても私の場合は『プロ野球選手』と言うのが皆さんのイメージの中で先に来ますので、そこを感じさせないようにやっていく。余計なプライドは持たずに分からないことは”分からないです”と素直に聞いてやっています」

“何事も素直に”この姿勢が高木を支えてきた(筆者撮影)

学生時代は、休みがないほどの猛練習で心技体を磨いてきた。アスリートの強みも今までの仕事にしっかりと盛り込まれている。謙遜しながらこう続けた。

「スポーツをやっていた経験もあると思うのですが、私は自分で壁にぶつかって体感することで理解できるタイプなんです。頭で理解してできる方いるじゃないですか?あれ羨ましいですよ(笑)

あとは野球の指導者も含めて、いい上司に恵まれたのが大きいです。上司じゃなくても例えば1つ上の方だったり、同僚だったりなどで参考になる方を見つけていくのは何かを習得する上では必要なことだと思います」

選手・球団の社員から感じるライオンズの魅力

前章でも触れたが、高木は両親の影響で少年時代からライオンズファン。地元の東京都八王子市から所沢にある当時の西武球場に何度も観戦へ訪れた。

そしてドラフト1位で入団し10年間プレー。球団の社員としてのキャリアも約10年と長い年月を積み重ねてきた。双方の立場を経験している身だからこそ分かるライオンズの魅力は何か。

「ライオンズは特に球団事務所と球場が隣り合わせなので、お客さまの表情や歓声、喜怒哀楽を感じながら仕事ができるのはすごく魅力的と考えています。お客さまとの距離が本当に近いです。あとプロ野球は12球団しかない。これも特別感だと思います。

1・2軍の本拠地、寮、球団事務所などが1つに集約されている。ライオンズならではの魅力である(写真:球団提供)

選手時代を振り返ると、ライオンズはすごく居心地が良いチームです。球場と室内練習場、寮が1つにまとまっている。野球をする環境としては大きなメリットです。

これも他の球団にはないものだと思いますね。あと、オールスターに出るとライオンズは羨ましがられましたよ(笑)”パ・リーグと言ったら西武”という印象がより濃かった時代でしたから」

野球の母数拡大のために「セカンドキャリアを充実させる」

多忙の合間を縫い、約1時間半に亘るインタビューに応えていただいた最後、高木の今後の夢を伺った。それは、日本の未来を意識したスケールの大きい夢であった。

「想いとしてはスポーツ界の発展に貢献していきたいです。私の場合は野球ですが、アスリートのセカンドキャリアは今後も充実させるべきと考えています」

今は野球人口が減り続け、キャッチボールすらできない公園も増えている。高木も心を痛めるとともに、危機感を抱いている。

「セカンドキャリアを充実させると、親御さんがお子さんに野球をさせてあげる可能性が増えると考えています。なぜかと言うと、選手を終えた後も仕事がある。そういった安心感を与えられるからです。

野球に限らずスポーツ選手って競技に一生懸命打ち込んできた半面、普通の会社員や仕事のことをあまり知る機会がないのかなと思います。その影響もあって途中で断念させてしまうケースもあります。引退後も安定した職業に就けることが分かれば、それがなくなると考えています」

野球を断念する学生が減ることは、つまり野球人口の母数が増えることを意味する。高木は国の発展という大きな観点から、重要性を捉えている。

「母数が増えれば、ポテンシャルのある選手が残る可能性が高まる。全体のレベルは上がっていくし、野球をやる環境を国として充実させることに繋がります。野球というスポーツがビジネスとしての日本の発展に寄与していくものだとしたら、環境をつくらざるを得ない。そう思っていただけるように貢献したいです」

野球以外の世界にも触れていく

今は球団の社員の傍ら、ライオンズ主催試合の解説も担当している。セカンドキャリアを充実させるには、外の世界に触れていくことは貴重な機会である。

「試合の解説などを通じ、『自分の言葉でどう相手へ伝えるか』をやるだけでも全然違います。野球界ではありますが、テレビ局の人たちと仕事をする、その先にはスポンサーさんもいますから。そのことを学ぶだけでも社会へ出ることになります」

主催試合の解説はライオンズOBが登場する。例えば、かつて抑え投手として昨年現役を引退した髙橋朋己は、今年からアカデミーコーチを担当。授業のない日には解説も務めている。高木も放送席で共にしながらアドバイスを送っているという。

中継の解説でも活躍を見ることができる(写真:球団提供)

「髙橋にも『テレビではこういう表現をしたほうがいい』などと伝えるようにしています。最初はどうしても体育会系の言葉遣いになってしまうんですよ(笑)

なので、解説などを通じて少しずつ外の世界に触れていく。いきなりやると抵抗があると思うので、私もサポートしながら、今後もOBの方たちに経験する場所を提供できればと思っています」

謙虚さとトライ&エラーを重ねて、いかなる高い壁も乗り越えてきた。今後どんなフィールドで活躍するのか楽しみであるとともに、”西武ライオンズ・高木大成”はどこへ行っても輝き続ける。

(おわり)

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