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ミズノ主催のトークイベント「キャッチャーの”號(さけび)”」特徴や子どもたちに伝えたいキャッチャーの良さとは?

昨年12月23日、東京・千代田区で「キャッチャーたちの號 in MIZUNO TOKYO」が開催された。

中日・木下拓哉選手、ロッテ・田村龍弘選手、そして今シーズンより就任したヤクルト・嶋基宏バッテリーコーチ兼作戦補佐の3人がキャッチャーとしての”號(さけび)”を披露した。

ミズノブランドアンバサダーによる3名の”キャッチャー座談会”

チームの中でも希少で、かつグラウンドでも唯一反対方向を向き”扇の要”と呼ばれるキャッチャー。

投手への配球のサインや各ポジションへ指示を送り、試合を組み立てていることから、”グラウンド上の監督”とも称される重要なポジションである。

ミズノは今回、年代問わずキャッチャーとしてプレーする方々を応援しようと、昨シーズン現役としてプレーしたキャッチャー同士による座談会を開催した。

登壇したのは、ミズノブランドアンバサダーを務める3人。

まずは、ベストナイン・ゴールデングラブ賞に2回ずつ輝くなど通算1421試合に出場し、昨シーズン限りで引退した嶋基宏バッテリーコーチ兼作戦補佐(東京ヤクルト)。

東京ヤクルトスワローズ・嶋基宏バッテリーコーチ兼作戦補佐

20年から2年連続で最優秀バッテリー賞を受賞し、昨シーズンは両リーグを通じ、唯一捕手として規定打席到達を果たした木下拓哉選手(中日)

中日ドラゴンズ・木下拓哉選手

そして、2016年にベストナインと最優秀バッテリー賞を受賞し、18年にはチーム49年ぶりに全試合出場を果たした田村龍弘選手(ロッテ)。

千葉ロッテマリーンズ・田村龍弘選手

ユニフォームを着ている者同士かつ、同じポジションの選手たちが語り合うというオフならではの貴重な機会。予約開始後に即満席となったこのイベントには、抽選で選ばれた約35人が観覧で参加した。

ミットの違いからわかるプレースタイルの特徴と感覚

最初の話題は、3人が実際に使っているキャッチャーミットの形状について。

ミズノでは昨年、キャッチャーミット専用シリーズとして本イベントのタイトルにもなっている”號(さけび)”をリリースした。

その號で用意されたラインナップには「B-D(BIG & DEEP型)型」・「M-R(MIDDLE & REGULAR)型」・「S-S(SMALL & SHALLOW)型」があり、それぞれ木下選手・嶋コーチ・田村選手(その他ミズノブランドアンバサダーキャッチャー)の使用ミットがモデルとなっている。

”號”で用意された3つの型(ミズノ公式サイトより)

それぞれの特徴について、3人が自ら解説した。

木下選手「プレーの安定性を重視」

「2人の形状と比べると、ポケットが深くてサイズが大きいのが特徴です。キャッチャーはピッチャーのボールを捕る以外にタッチプレーだったり、キャッチャーフライなど、様々なプレーが絡んでくるので、各プレーの安定性を重視しています」

プレーの安定性を重視している木下選手

嶋コーチ「特徴がないのが特徴」

「僕は木下選手と田村選手のちょうど間くらいで、”特徴がないのが特徴”です。中学生や高校生などみんなが使いやすい形なのではないかと思っているのと、”遊び”がほしいので、少しゆとりを持って手にはめられるようにしています」

誰でも使いやすいと感じられる形状が特徴と説明した

田村選手「素手の感覚を大事に」

僕は、手の感覚を大事にしたいのでミットの形状は小さめかつ浅めです。スローイングでの握り替えを重視しているので、木下さんとは逆の形だと思います」

大事にしているのは”素手に近い”感覚だという

嶋コーチと木下選手は、2年前にお互いのミットを交換したという。両者が使ってみて感じた”違和感”がこのトークショーの面白さに味を加えていった。

木下選手は「実際に使わせてもらったのですが、使いやすくてボールの握り替えからスローイングまでの時間が速すぎて、逆に戸惑ってしまいました(笑)」

一方、嶋コーチは両選手のミットを使ったことがあるという、

「木下選手は硬すぎて・田村選手の浅すぎて心配と言いますか、両方ミズノさんに作ってもらったことがあったんですが、タッチプレーの時や際どいボールが来たときにちょっと怖いなと感じました。両方試した結果、結局2人の中間にたどり着きましたね」

20年にミットを交換したという嶋コーチと木下選手

田村選手は木下選手と真逆の形状であることから、上で触れた球の握り変えが速いことによる間の使い方について質問を受けた。

「僕は木下さんと違って肩が強くないので、極力捕って速く投げられる動作に繋げないといけないです。それで浅いミットになっていった形です。

元々は1軍で試合に出場させてもらうようになってから、嶋さんの型を使っていました。試合に出続ける中で、どんどんを軽く・小さくしていって最終的に今の形になりました」

改めてお互いのミットを確認した

それぞれの経験によって研ぎすまされてきた感覚により、他の選手のミットが自然と”違和感”を生み出し、それがむしろ個性へと繋がったことが分かるシーンであった。

追い込んでいると逆に難しい”2ストライク”のカウント

次に3人の質問タイム。それぞれが思っていることをそれぞれ疑問をぶつけた。ここでは1つ挙げるが、田村選手が聞いたのは

「これ僕だけなんですかね、終盤7回以降の2死3塁、0ボール2ストライクって一番嫌な状況なんですがどうですか?」

という質問だった。この背景を細かく説明してくれた。

「打たれたらまず終盤に重い1点を取られますし、『追い込んでいるのに何で打たれるの?』って問い詰められますし、かと言ってボール球で1球外すと相手を楽にさせてしまうので、勝負に行きたい。

それで変化球のサインを出したとしたら、低めに難しいワンバウンドの球がくることもあります。なので、できたら1-1で3球目を迎えた方が楽なのかなと思うんです」

田村選手から自身が最も苦手なシチュエーションを明かした

それに対し、嶋コーチが共感しながら回答した。

「おっしゃる通り、特に2ストライクって本当に難しくて。今の打者は頭いいので、ボール球だったら次は何ってしっかり考えています。

高めとか要求しちゃうと皆バットに当てたいですし、ヒットになってしまったら『なんで高めなの?って言われるので…じゃあフォークボールを投げるとしても、投手は思いっきり握って投げてくるので、とんでもないバウンドをするかもしれないですし。

2ストライクで特に考えるという

これら全てトータルで何を選ばなきゃいけないのかを考えるので、それだったら初球で打たれた方がいい。でも初球で打たれると『何で初球から打たれるんだ』って言われる(笑)ただ、そこは腹を括らないといけないですし、常にキャッチャーは根拠を持ってサインを出して打たれたら反省をすれば良いので、その追いかけっこだと思います。確かに難しいですよね」

キャッチャーのリード面で苦労することの1つである、結果について「何でこの球なの?」という話には、会場全体が”確かに”というリアクションと雰囲気に包まれていた。

子どもたちに伝えたいキャッチャーのよさ

最後の話題は、子どもたちに向けてキャッチャーをやりたいと思えるところはどこか。3名がそれぞれ、子どもたちに向けてメッセージを贈った。

田村選手
「自分を持っていないとできないポジションなので、自分の意見を言える子はキャッチャー向きなので、そんな子はぜひやってほしいです」

嶋コーチ
「難しいけどやりがいのあるポジションですし、レギュラーをとったら特に長く務められるポジションだと思います。ただ、子どもたちにはいろいろなポジションを経験してほしいです。その上で、最終的にキャッチャーをやりたいと思って選んでくれたら嬉しいですね」

木下選手
「チームの勝敗を握っているポジションなので、やりがいもあります。自分の責任で負けてしまう試合もあるかもしれないですが、それをやり返せるのもキャッチャーだからこそできることです。

なので、子どもたちも勝敗を握ってるんだというの感じながらやってほしいですし、勝ったら思いっきり喜んで、負けたら次勝てるように悔しさを持ってやっていければのがいいと思います」

キャッチャーは勝敗を握るポジションと説いた

「今後はもっとキャッチャーに来ていただきたい」

その後来場社の方々からの質問コーナーやじゃんけん大会といった交流を楽しみ会は終了。最後にイベントを振り返った。

ここ数年、コロナ禍でファンを招待するイベントが厳しい状況だった中、昨年末に開催できたことは3人にとっても貴重な機会であった。

木下選手
「今年はファンの方もいる中でできましたので、コロナ禍でまだ制限はあると思いますが、今日もすぐに完売したとのことですし、素晴らしいキャッチャーがたくさんいるので、もっと多くの方に来ていただけるようやっていきたいです」

嶋コーチ
「キャッチャーにしかわからない大変さや楽しさがあります。ミズノさんのキャッチャーミットを使っている方達をもっと集めて交流できたら、ファンの皆さんも楽しいと思うので、来シーズン以降もまたイベントができたらいいなと思っています」

田村選手
「いろんな球団のキャッチャーとお話ができましたので、またこんな日が来れたらと思いましたね」

終了後、囲み取材が行われた

トーク中、控室で顔を合わせた際に会話した3人。特に田村選手と木下選手は初めて会ったという。お互いに話は聞いていたというのも交えながらその内容を田村選手に訊いてみた。

「配球について会話しましたね、嶋さんは特に楽天時代から、シーズン中とかでも聞いて勉強させてもらったりしていたので、昔話といいますか、そんな会話もしました。

木下さんは、加藤(匠馬)さんからよく木下さんのことも伺っていましたし、恩師が伊東(勤)さんと中村武志さんと一緒なので、そんな話もしました」

キャッチャー談義に花が咲いたこのイベントは大盛況で幕を閉じた。3人がそれぞれの立場でどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。もうすぐ新シーズンに向けた春が到来する。

なお、本イベントの模様は後日「MIZUNO BASEBALL JP」の公式YouTubeチャンネルで公開予定となっている。

(おわり)

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