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谷口雄也さん ビジネスマンと野球人の二刀流か描く未来「今関わっている子どもたちがプロ野球選手になって戻ってくる姿を見たい」(全5回 最終回)

「僕なりの発信の仕方がある」凝らした工夫

谷口さんが抱えた大きな役割は約1年後に開場する「ES CON FIELD HOKKAIDO」や「HOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE」のプロモーションだった。

球場の外観ができていくことで、ファンのワクワク感が増えていく一方、谷口さんたちは人知れず苦労を抱えていた。

「雪が多く積もっている22年1月からでしたけども、各メディアさんやファンの皆さんが”来年いよいよ開業だ”などとボルテージもどんどん上がり始めの時だったと思うんですよね。僕も当時からメディアに多く出させていただきましたが、何を話してもやはり工事現場なんですよね」

谷口さんは建設中の時からプロモーションを行っていた(22年3月当時)

その際は完成イメージのパース図を使って説明していた。映像や写真を通じて伝えられるのはその図や工事現場の様子であるため、

「一緒に働いている現場の方そして僕も同じなのですが、完成イメージが湧かない中で見ている方々にどう伝えていいんだろうか、そこがすごく苦戦していたと思います」

そんな中で谷口さんは”自分だからこそできる”ことを見つけ、それを発信した。

「僕なりの発信の仕方があるのではないかと考えた時、『選手でしたらこんなところが気になりますよ』と、選手目線での話を交えること。この工夫はしましたね。

皆さんが求めているものって何なんだろうと思ったときに。『〇〇選手がこう言ってました』『〇〇選手はこう感じていました』というのを、近い距離でいるからこそ吸い上げるべきなのではないかと。

なので何気ない会話をしている中でも、『これは次テレビに出たときに話せるな』などとアンテナを張っていました」

建設中の頃から工夫を凝らしプロモーションを行った【©H.N.F.】

前年までユニフォームを着て共に戦ったチームメートの言葉を近い距離でキャッチできる。谷口さんでないと話せない唯一無二のネタであった。

建設はその後予定通り進み、6月に開閉式の屋根が稼働すると10月にはついに天然芝が張られるなど、パース図だけだった世界がついに具体として姿を現し始めた。そこで谷口さんから発信される言葉の力がますます説得力を帯びてきた。

完成はゴールではなくスタート

そして1月4日に「ES CON FIELD HOKKAIDO」は竣工。翌日に晴れて竣工式を迎えた。谷口さんら球団スタッフもグラウンドでその門出を祝った。1年間、工事現場の時からこの姿をイメージして発信を続けただけに喜びもひとしおだった。

「竣工式での映像を見た時、暑い夏の日も冬で雪の降る中でも作業いただいていたシーンがありました。骨組み一つにしても、たくさんの人の力が合わさったのだと思うと、本当に頭が上がらないです。建設に携わった約65万人の魂が宿ったと考えると武者震いがした。何かそういう言葉が一番似合うのかなと感じましたね」

1月5日の竣工式には谷口さんもグラウンドで迎えた

そして、3月のチーム練習から使用が開始し、オープン戦でも7試合が行われた。初めて使用した時の選手たちの反応も間近で見ていた。

「選手の表情を見てると”みんな野球少年だな”って感じました。こんなキラキラした顔で野球するのは久しぶりなんじゃないかって思うぐらいでした(笑)。他球団の選手もエスコンフィールドに来たときの表情は新鮮でしたね。

あと、僕らも職場が札幌ドームから移ったのですが、職員の皆さんもすごくいい顔していてほっこりしたのは客観的に見ながら感じてはいましたね」

そしてシーズンが開幕。ファイターズファンだけではなくビジターのファン、交流戦で対戦するセ・リーグのファンも目を輝かせながら球場へ足を運び、ボールパークの中を歩き回る光景が見られたという。

「球場でお会いする方々に『エスコンフィールドすごいですね!』と言っていただけるので、すごくありがたいです。ここに来る方たちの表情を見るのが、今の僕の安定剤という表現は変かも知れないですけども、今頑張れてる原動力になっています。『皆さんのこういう表情が見たかったんだな』と持って嬉しい気持ちで取り組ませてもらっています」

来場者の笑顔が何よりのやりがいと語った【©H.N.F.】

もちろんここで満足をしているわけではない。「完成がゴールではなく、スタートだと思います」と語り、より一層気を引き締めた。1シーズン終えることができたが、まだまだ”世界でまだ見ぬボールパーク”は進化し続けている。自身の立ち位置を踏まえ、今後の展望を語った。

「遠方から北海道に来たらどこに行こうと考えた時に、旅の行程にFビレッジがあると嬉しいです。僕もそのためにコミュニケーションツールとしての一人として、その魅力を最大限伝えられるように、勉強していかなきゃいけないと思っています」 

「子どもたちが大人になってエスコンフィールドへ帰ってくる姿を見たい」

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