
世界を戦ったプロ野球OBによる豪華野球教室 野球を通じた笑顔あふれる空間から、世界へ羽ばたく第一歩を踏み出す
9月15日、「サンリオベースボールアカデミー in ジャイアンツタウンスタジアム」が行われた。
初めて女子野球でプレーする小学生を対象に行われた野球教室。世界を知るレジェンドOBたちとの指導を通じて、全員が笑顔あふれる場となった。
(写真 / 文:白石怜平)
世界を知るプロ野球OBが少女たちのチャレンジを後押し
本ベースボールアカデミーはサンリオの企業理念「みんななかよく」のもと、“野球を通じて子供たちの笑顔がもっとあふれてほしい”、という想いを込めて開催された野球教室。
今回は東京都・神奈川県の小学1年生〜6年生までの女子児童207名を対象に行われ、少女たちに世界へチャレンジしてほしいという考えから、講師は世界を知るプロ野球OBたちが担当した。
2009年にワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で侍ジャパンを世界一に導いた原辰徳さん(巨人前監督)が総監督に就任。
加えてコーチには高橋由伸さん(元巨人)・斎藤雅樹さん(元巨人)・松井稼頭央さん(前西武監督)・五十嵐亮太さん(元ヤクルト、ソフトバンク他)・里崎智也さん(元ロッテ)・笘篠賢治さん(元ヤクルト・広島)。久保文雄さん(元大洋)がコーチアドバイザリーを担った。
そして、リポーターを杉谷拳士さん(元日本ハム)を務める豪華なゲスト陣で開催された。

開会セレモニーでは各講師が挨拶。原総監督は冒頭で熱いメッセージを会場全体に寄せた。
「今、女子野球というのは伸びている競技だと思います。10年前と比べて、学校数もチーム数もはるかに増えました。
特にジャイアンツは女子野球チームに力を入れていますし、将来的には12球団の全チームが女子野球チームを全て持ってですね、女子プロ野球リーグができるという夢を描きながら、我々はお手伝いをします。
今ここにいる野球少女の皆さんには、ぜひ先駆者になって新しい時代をつくってもらいたいと思います。そのために今日我々は一生懸命教えますので、頑張ってください」

キャッチボールで大切な「リズム」と「回転」
野球教室がスタートすると、まずは全体に向けてキャッチボールから。斎藤さんと五十嵐さんによるレクチャーが行われた。
斎藤さんがボールの握り方と投げる際のポイントを解説した。
「指3本で握ります。ボールの縫い目があるよね?人差し指と中指を縫い目の下に当ててください。間は指1本ほど空けるようにして、下に親指を立てましょう。まだ短くて縫い目に届かなければ、薬指で添えても全然大丈夫です。
キャッチボールにはリズムというのがあると僕は考えています。1で足を上げる、2でトップを作って3で投げるというリズム。
2のトップを作ると言うのは、そのボールを持つ手を90度に曲げる。この体制です。それで投げる方向にしっかりステップすることが大切です」

五十嵐さんも斎藤さんの説明に補足を加え、理解を深めるように促した。
「指先に縫い目をかける理由は何だと思いますか?それは回転です。プロ野球選手も回転をすごく意識しています。遊びながら回転をかけながら上にあげてみましょう。これを2本の指と親指でしっかり回転をかける。
そうするときれいな縦回転になる。遊びながら覚えることによってボールを握ったときに指先にかかる感覚が分かりますし、より上手くなります。
斎藤さんがお話した1・2のリズムの時に指先にかかる感覚を持って、3の時にスピンをかける意識を持ってやってみてください。投げたときに、自分の回転がどうなってるかを意識してみると気づくと思います」

基本を分かりやすく説いた里崎さんによる捕手講座
続いて守備では投手・内野手・外野手・捕手の各ポジションに分かれ、講師陣のレクチャーそして野手はノックを受ける時間に。
捕手は里崎さんが担当。将来的に応用がすぐにできるよう、10分近くかけて基本を分かりやすくかつ徹底的に伝えた。
「基本ができていれば、あとあと体も成長して経験も重ねていけば、応用はいつでもできるようになってくる。今は誰でもすぐ簡単にできることをできた方がいいので、それを伝えるね。
まずはミットの構えから。360度どこにボールが来ても捕れるように、人差し指を12時の方向に向ける。
なぜかと言うと、そこから時計回りに180度・逆に180度動かせるので、360度カバーできるから。なので常に人差し指を12時の方向に構えて、少し脇が閉まる形にします」
根拠に加えて例を交えた実演を組み合わせることで、子どもたちも前のめりに耳を傾けた。

「最初からミットを下げてしまったら、この状態から動けない。それがミスを起こしてしまいます。
パスボールしてうまく捕れない人はアウトコースに構えていて、インコースの逆球が来たときに手だけで捕りに行くからミスが起きる。
人差し指を下げて脇を上げちゃうと、逆球になったらもうボールが見えなくなってしまいます。手のひらが面を向いてないとミスしやすくなる。
ミットは重いから力を入れないと下がるだけになるけども、常に肘が下にあると体に力が入りやすいから、どんな球でもスピーディーに動かせてミスなく捕れます」
さらに発展してどこで捕球するかについても解説した里崎さん。指導者たちが「自分にとってちょうどいいところ」という曖昧な表現に一石を投じるように、自身で言語化して子どもたちへ伝えた。
「どこで捕るのが一番いいですか?それは自分の一番力が入るところ。(全員でミットを叩きながら)そこを探してみましょう。
パワーポジションって言うんだけれども、それはこれからみんな成長していく中で位置が変わったとしてもパワーポジションという考えはずっと変わらない。今みんながチェックした1番力の入るところで構えてみよう」

打撃練習の前にはスーパースターからの助言も
打撃では全員がロングティーを行う前に高橋由伸さんによる解説が行われた。現役時代は打率3割超えを7回、通算321本塁打を放った大打者。
華麗なフォームでファンを魅了してきた背番号24から、タイミングを取るポイントが授けられた。
「相手ピッチャーはそれぞれタイミングやフォームがそれぞれありますが、持っているボールがバッターから一番遠くに行くタイミングが必ずあります。
その時に自分も一番遠くに引く(=テークバックを取る)。ボールと自身が“一番遠くなる時”に合わせることでボールとの時間をつくれる。これからロングティーをやると思うけども、前からでも横からでも一緒です」
ここで選手数名がマンツーマンでタイミングを取る動きをチェック。斎藤さんの投げる動作でテークバックを取り、一人ひとりに合わせてアドバイスを送った。

講義後に高橋さん・松井さん・里崎さんによる実演が行われ、柵越えで今も変わらない技術を披露。会場全体から拍手と歓声が沸いた。
最後にロングティーを行い、選手たちは全力でバットを振った。途中講師陣がグループ全員を集めて気づいた点を伝えたり質問したりするなど、互いに交流する時間になった。

また同時に、外野では笘篠さんによる走塁講座も開講。一塁を駆け抜けた際の走りを見てアドバイスしながら、選手たちもグラウンドを全力で走った。

「女子野球が伸びていることが伺えた」技術の高さ
約2時間半の野球教室はコンセプト通り笑顔あふれる会となり、幕を閉じた。
なお、イベントでは不要になった野球用具を回収しており、今大会ではヘルメット、ボール、グローブなど807点の用具を回収した。
回収した用具はJICAなどを通じ、用具不足に悩む国内外の子どもたちに寄贈される。

原総監督は、女子野球でプレーする児童たちを指導しての印象を以下のように語った。
「技術的に男子の選手と比べても全く劣っていないですね。 キャッチボールをしていても、我々が投げた球をしっかりと捕ってきちっと放れますし。
そういう意味でも、女子野球が今とても人気が上がっている・伸びている部分だと伺えるた気がしましたね」

開会式でも述べた通り、女子野球への希望や期待を抱いている一人である原総監督。今後プロ野球OBとして、女子野球のみならず野球界発展に向けて必要なことを語って締めた。
「まずは野球の楽しさを伝えていくことだと思います。 そして環境でしょうね。昨今、ボールを打ったり投げたりというのは限られたところでしかできない。
ですので、環境を整える。野球ができる場所を増やしていくことがまずは大事なことですし、何より、将来彼女たちは母親になっていくと思います。
その中で、子どもさんに『野球ってこんなに楽しいんだよ』と言ってくれるお母さんが増えていけば、野球界にとっても大変明るい未来になっていくと感じています」

初めて女子野球選手を対象に行った今回の野球教室。世界に羽ばたく道標が拓かれたと共に、野球界の未来を創る確かな一歩が刻まれた。
(おわり)
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