「テンションであり、プレッシャーではない」WDB日本代表 世界一連覇の大一番を前に主将が説いた”緊張”の意味

試合前に松元主将が語った”緊張”についてとは?

そしてこの日2試合目のアメリカ戦、勝利すれば世界一連覇が決定する。ナインから余裕の表情を見せるどころか、初戦以上の緊張感すらも漂わせた。

今年1月下旬に松山で合流してから約7ヶ月間、寒い日も暑い日も共に切磋琢磨し、結束力を高めてきたメンバーと一緒に行う最後の試合。控室そしてベンチ前で2度肩を組み合い、最後の一戦に向けて集中力を高めた。

試合前、ナインが輪になった

試合前は雰囲気の通り、選手たちは緊張どころか不安すらもあったという。その時の様子を、ここまでリードオフマンそして4番も打ち、打線を牽引していた小寺が明かしてくれた。

「実は、前の試合中にアメリカ代表とは(ビジター側の)ブルペンを一緒に使っていたんです。そこで相手投手の投球練習も見えるんですよ。上から見ていてもすごい球を投げていて、チームが『え、やばい…』というような雰囲気になったんです。そこでキャプテンの松元さんが緊張にまつわる話などを話をしてくれて、そこから雰囲気が変わりました」

アメリカ戦前のエピソードを語った小寺

実際どんな話をしたのか。松元に話を訊いた。

「そこで話したのは、『緊張を解く魔法の言葉は知らないけど、緊張に関する話を聞いたことがあります』と。緊張とは何者なのか?その言葉の意味は、張り詰めたとか糸が張った状態をいいます。英語にすると、”テンション”。

”緊張するな!リラックスしていけ”と言いますが、”テンション上げていこう!”とも言います。矛盾していますよね。つまり緊張=テンションであり、プレッシャーではない。

ここを間違えないように理解しよう。テンションを上げていこう!とみんなにはそう伝えました」

松元主将(写真右端)が試合前に緊張を力に変えた

日本はここでも初回から試合の主導権を握った。1番の小寺が安打でチャンスメークすると、3番・DHの藤川が中前にタイムリーで先制。さらに5番の早嶋も中前に弾き返し、2点を先制した。

藤川は「あっぱれ」の扇子でスタンドにアピールした

最後の大一番で先発マウンドに上がったのは早嶋。秋の全国大会で昨年まで連覇、春の大会でも優勝した岡山桃太郎でもエースを務める男は大舞台が主戦場。

アメリカ打線も抑え込み、スコアボードに0を並べた。4−0で迎えた最終回、二死ながら満塁のピンチとなるも最後の打者を三振に斬って取りゲームセット。日本が全勝で世界一連覇を決めた。

早嶋が両手を突き上げ、遊撃からは松元が涙を見せながら真っ先に駆け寄った。野手が続々とマウンドへと集まり喜びを表した。

世界一決定の瞬間、主将の松元がマウンドに一番に駆け寄った

早嶋が両手を突き上げ、遊撃からは松元が涙を見せながら真っ先に駆け寄った。野手が続々とマウンドへと集まり喜びを表した。

松元は主将として先頭に立ち、発信等も積極的に行ってきた。勝利の瞬間は様々な想いが交錯した。

「マウンドに駆け寄った時は、ホッとしたというか、何か報われた気がして、ただただ嬉しかったです。試合終了の挨拶時にスタンドを見て、応援に来てくれた方々、多くのお世話になったみなさんと共に戦い、喜び合えたことに、凄く感動しました」

早嶋も世界一が決まった瞬間の気持ちを語った。

「ほっとしました。みんながマウンドに駆け寄って来ると同時に嬉しさがこみ上げてきました。学生時代、野球から逃げ出したいと思う時もあったけど、改めて野球をやってて良かったと思いました」

スタンドからも2日間で一番大きな拍手が送られた

MVPは早嶋が2大会連続受賞、長嶋茂雄賞は小寺に

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