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西武・石井丈裕 「タケと心中」した日本シリーズと舞い上げた”でっかい花火” 92年激闘の記録

森監督が語った「タケと心中」

1勝1敗で迎えたホームでの第3戦、石井はシーズン通りのピッチングでスワローズ打線を抑え込む。広澤克己のソロ本塁打による1失点に抑え、完投勝利を挙げた。

そして3勝3敗で迎えた第7戦、負けたら終わりのまさに大一番の試合で石井は前回 149球の熱投からわずか中4日で敵地神宮での先発マウンドに立った。

対するスワローズの先発はこのシリーズ3試合目の先発となる岡林洋一。第1戦、第4戦で完投しておりこちらも中3日での登板となった。

お互いに満身創痍の中、一歩も譲らぬ投手戦となった。そんな中4回、無死2塁のピンチで2番・荒井幸雄のバントが石井の前に。しかし、悪送球となってしまい先制を許してしまう。

その後両者無失点に抑え、迎えた7回に再び試合が動いた。2死2塁の場面で

8番の伊東を敬遠。西武ベンチは代打を送らず、石井をそのまま打席に送り出した。森監督は森繁和との雑誌での対談企画で”タケと心中だった”と語っている。

「ピンチになるとタケは抜群のピッチングをするんだよ。だから僕は腹をくくったね」

チームリーダーの石毛宏典もベンチからメガホンで鼓舞する中、6球目のカーブを振り抜いた打球は右中間へ。センター飯田哲也はグラブに触れるも追いつかず二塁打に。自らのバットで振り出しへと戻した。

しかしその裏の守り、1死満塁のピンチを迎える。野村監督が告げた代打は初戦にサヨナラ満塁本塁打を放った杉浦亨。シリーズ名場面の1つとして語り継がれるシーンである。

球史に残る92年の日本シリーズでも主役になった

外野フライすらも許されない場面。「低い球で内野ゴロを打たせよう」と伊東のミット目掛けて投げ込んだ。杉浦のバットを折りながら打たせた打球は二塁・辻発彦の元へと飛んだ。(※”辻”は1点しんにょう)

辻は身体を回転させながら本塁へ。そして伊東がジャンプしながら、3塁走者の広澤をタッチ。間一髪でアウトにし、その後のピンチも切り抜けた。まさに黄金期の西武を象徴する鉄壁の守りだった。

その後も譲らずこのシリーズ4度目の延長戦に突入。それでも石井・岡林の両先発はマウンドから降りなかった。10回表、秋山幸二の犠牲フライで勝ち越すと裏のマウンドに石井は上がった。

古田、広澤、ジャック・ハウエルを三者凡退に打ち取りゲームセット。石井は胴上げ投手になりチームを日本一3連覇へと導いた。

当時西武の投手コーチだった森繁和も上述の森監督との対談で「92年はタケに助けられましたね」と語っており、石井がいたからこその日本一だった。

「日本一を目標にやってきましたし、ピンチの時に森監督がわざわざマウンドまで来てくれて、『ここはお前に任せた』と言われた時は目頭が熱くなりましたよ。その言葉でやっぱりやる気が湧きますよね。『よっしゃ、やったろう!』ってなりますから。さらにそこで結果を出せたのが何よりの恩返しだったと思っています」

92年、球界の頂点へと登った

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