
16歳の女子プロレスラー・咲蘭 「やられても、やられても立ち上がる」チャンピオンベルト獲得まで描いた5年間の軌跡
プロレスリングwaveの女子プロレスラーとしてリングに立ち続けている咲蘭選手。2月に17歳を迎える若手のホープはすでに5年のキャリアを持ち、昨年11月にはタッグでチャンピオンベルトも獲得した。
幼稚園時から「プロレスラーになりたい」とその夢を掲げ、今そのリングで輝きを放つ女子プロレス界の星に、ここまで歩んだ足跡を語ってもらった。
(協力:プロレスリングwave 取材 / 文:白石怜平 以降、敬称略)
物心がついた時からプロレスの虜に
咲蘭は物心がついた頃には既にプロレスと出会っていた。両親が好きで後楽園ホールなどへ観戦に足繁く通っており、幼少期から迫力あるプレーを肌で感じていた。
「何度やられても立ち上がる姿が本当にかっこいいなと思って、自分もあぁなりたいと思うようになったんです」
いつしかリングの上で戦う選手たちが憧れの的となり、幼稚園時代から将来の夢に「プロレスラー」と記していた。

本格的な挑戦を志したのは小学6年生だった2020年秋。地元にあったプロレスサークルの門を叩いたのがスタートだった。
当初はマット運動など基礎体力をつけるメニューだったことから、「早くプロレスをできるようになりたいと思っていました」と、技術練習を待ち望んでいたという。
プロレスサークルで鍛錬を積み、練習生を経て念願のリングデビューを果たしたのがそこから半年強の21年7月4日。当時中学1年生の”キッズレスラー“として、女子プロ界未来のスターへの第一歩を踏み出した。
デビュー戦の舞台は地元埼玉県で行われた「川口SKIPシティ大会」で、暗黒プロレス組織666のラム会長が相手に。ラム会長も小学生でデビューを果たしていたことから、咲蘭にとってはキッズレスラーの先輩と対することとなった。
「もうめちゃくちゃ緊張しました。それしかなかったです」と、当時のことを語った咲蘭。ラム会長から繰り出される数々の技を受け、緊張のデビュー戦を終えた時の心境は今も鮮明に残っている。
「全部の技が効いてやっぱり痛かったんですが、『これがプロレスなんだ!』って感動したんです。自分が立ちたかった舞台に立つことができたので、その喜びの方が強かったです」

「赤ちゃんの時から見ていた」憧れのレスラーとチャンピオンに
その後フリーで活動しながら経験を積んでいった中、昨年5月に転機が訪れる。現在所属しているプロレスリングwaveへの入団である。この入団は、咲蘭にとって縁深いものでもあった。
というのも、waveの代表取締役社長も務めながら看板選手として活躍を続ける桜花由美は、咲蘭が生まれる前から両親とは旧知の間柄。
「咲蘭が赤ちゃんの頃からずっと知っていました」と語っており、咲蘭にとっても桜花は物心ついた時から憧れを抱くプロレスラーであった。
入団発表の際に感激のあまり涙を見せた咲蘭を見た時、「思わず私ももらい泣きしそうでした」桜花はこんなエピソードを語ってくれた。
「咲蘭が生まれる前からご両親とは知り合いで、咲蘭が生まれる前から私はプロレスラーをしていました。
咲蘭のお姉ちゃんが小学生の時に『プロレスラーにならない?』とスカウトしていたけど、お姉ちゃんはレスラーにはならなくて、赤ちゃんの時からwaveを見ていた咲蘭がプロレスラーになった。そして、同じリングで戦うことになりました」

waveに入団後は「いろいろな技をやりたいので」と自らテーマを設け、桜花の助言でバリエーションも増やす取り組みを始めた。
咲蘭は「さらんらっぷ」と題した自身でアレンジした編み出した技を持っており、立っている相手を素早く丸め込んでフォールを奪うのを特技としている。それに加えて、現在習得に向けて励んでいることを明かしてくれた。
「今は逆打ちとウラカン(・ラナ・インベルティダ:高角度後方回転エビ固め)の練習をしています。逆打ちは相手の背中に乗ってから後ろに倒してフォールする技で、ウラカンは相手の背中に乗って丸め込む技です」

そして、2人はリングの上でタッグを組んで共闘することにもなった。運命に導かれた結果なのか、桜花と咲蘭は昨年新たな勲章を手にした。
これは、咲蘭にとってベストゲームに挙げた試合だった。
「桜花さんと組んで勝った試合です。自分が初めてベルトを巻いた試合でしたので、それが一番印象に残ってます」
その試合は11月2日、後楽園ホールで行われた「DUALSHOCK WAVE 〜WAVE認定タッグ王者決定戦〜」。この王座決定戦で優勝を勝ち獲り、初めてチャンピオンベルトを手にした。その瞬間を思い出すように振り返った。

「ベルトを巻けた時は本当に感動でしかなくて、『ベルトってこんな重いんだ』ってことを実感しました。技のやり方とか受け身の基本とかを、詳しく教えていただいているので、それがどんどん身についています」
一方で誕生時からの成長を知る子がやがて同じリングに立ち、初のチャンピオンベルト獲得のパートナーとして共闘した桜花。数々のタイトルを獲得した百戦錬磨のレスラーにとっても特別と感じる試合であった。
「あの赤ちゃんが大きくなって一緒にベルトを巻ける日が来るなんて思ってなかったので、本当に感慨深かったです。
咲蘭は私の人生の3分の1。まだまだ伸び代が沢山あって、沢山色んな事を経験していきます。
これから2人でチャンピオンとして防衛戦を重ね、沢山経験を積みお互い助け合い、チャンピオンとしてどんどん成長しながら歩んでいきたいです」
プロレスを好きになった原点がプレースタイルに
迎えた2026年、1月2日の防衛戦にも勝利してチャンピオンベルトを守る幸先のいいスタートを切った。
プロレスラーとしてのキャリアはデビューからもうすぐ5年。最初と比べてプロレスがどのくらい好きになったかを問うと、「もう100倍以上好きになっています!」と笑顔で答えてくれた咲蘭。
リングの上で見てほしいパフォーマンスを問うと、自らが惹かれることになった原点のフレーズと共に答えてくれた。
「やられても、やられても、立ち上がる姿を見せられたらなと思います。試合中に泣いてる時もあるんですけども、それでも立ち上がって向かってく姿を見せたいです」

そしてインタビューの最後、今どんな夢を抱いているのか、これからの想いを述べて力強く締めた。
「今後の夢は、たくさんの方にプロレスを見ていただけるように、そして自分もたくさんのチャンピオンベルトを持てるように頑張っていきたいです」
今も戦い続ける女子プロレス界のスターでありホープは、幼少期から抱いた夢を実現させ、今はその夢を与える立場としてリングに立ち続けている。
(了)