
“新しいバレーボールクラブ”をどうつくるか 東京グレートベアーズが発足から築いてきた独自のカルチャー
2022年に誕生したSV.LEAGUE「東京グレートベアーズ」が、5年目のシーズンを迎えようとしている。
著名アーティストやタレントとのコラボレーション・独自性の高いクリエイティブなどで注目を集め、観客動員数も右肩上がりに上昇を描いている。
なぜ、短期間でこれほど多くの人を惹きつけるクラブへと成長したのか。東京グレートベアーズ代表の久保田健司氏に、クラブ発足からの歩みとその裏側にある考えを聞いた。※全2回のうち1回目
(取材 / 文:白石怜平)
約3年で3倍以上の観客動員増の要因
東京グレートベアーズはFC東京バレーボールチームの活動休止を受け、株式会社ネイチャーラボがチームを譲受したことにより誕生。東京をホームタウンとする新たなプロバレーボールクラブとして歩みを始めた。
発足初年度の2022-23シーズンに4万4125人だったホームゲームの総来場者数は、2025-26シーズンには12万5400人へと増加。わずか3年間で約3倍にまで向上させた。
特にホームゲームの1試合を「10000人プロジェクト」として掲げて盛り上げるなど、東京体育館や有明コロシアムといった大規模会場で多くのファンを魅了している。
久保田代表は現在地についてまだまだ満足はしていないとしているものの、SV.LEAGUEでも屈指の人気クラブへと成長し、集客においても着実に成果を出し続けている。
そんなグレードベアーズだが、発足当初からクラブにはある考えがあった。
「試合を観に来てもらえれば、バレーボール自体は絶対に楽しんでもらえると選手からは聞いていました。であれば、我々が注力すべきは会場に来てもらうところだなと。試合だけではない部分にもさまざまな楽しみをつくっています」
会場を訪れたことがない人が“最初の一歩”を踏み出したことによって、チームの魅力を知り、次は友人や家族たちと共にアリーナへ帰ってくる。そのサイクルの構築が集客を支える一つの要因となっている。
「バレーボールの楽しさやチームの魅力を知った方々が、周りの方たちを観戦にお誘いしたいという方がたくさんいらっしゃるんです。
その時は『最初にバレーボールを見せるならグレベアのホームゲームを』という考えが広がっている。それがとても大きなことのかなと思います」
ホームゲーム後には渋谷のバーで試合を見返しながら盛り上がるファンもいれば、SNSや配信でもう一度楽しむファンもいるという。
「試合日になれば、起きてから寝るまでを普段と違う日にしてもらうために、何をすべきかを考えています」と語るように、“非日常”の創出に強い想いを表している。
参入当初から意識した『接点』
この“最初の一歩”を踏み出してもらうこと。グレートベアーズの発足当初から意識してきたのが、「チームの外に引っかかりをどれだけ作れるか」だと語る。
グレートベアーズを語るうえで欠かせないのが、そのクリエイティブ性。創設当初より活動方針のひとつに「クリエイティブインパクト」を掲げ、バレーボールの新たな魅力を発信している。
ホームゲームにはタレントや声優・アーティストなど、多彩なゲストが登場してきた。東京スカパラダイスオーケストラがクラブのオフィシャルソングを手がけるなど、音楽とのコラボレーションも行う。
加えてグッズやWebサイトなど、表現する全てのものに独自の世界観を持たせてきた。

このようにクリエイティブ性を打ち出した狙いについて、久保田代表は以下のように説明する。
「潜在的にバレーに関わったことがある人や、代表戦を見ている人は以前から多くいらっしゃると思います。
ただその先にプロチームがあることやリーグ戦をやっていることは、まだ認知しきれていない。そのギャップを越えて『チームがある』『いつ、どこで試合をやっている』という点にとにかく集中していました」
オリジナリティあふれる様々な取り組みは、ファンの日常へと着実に浸透している。久保田代表も街中を歩いていた際、そう感じられたシーンがあったという。
「我々のマスコットキャラクターグッズである『グレベアくんのしっぽ』を身につけている方を昨日2人お見かけしました。私も嬉しかったですし、そういう接点をもっとつくっていきたいと思いましたね」
日々工夫を凝らしているクラブは、グッズや演出の内容やクリエイティブを毎年変化を加えてきた。今シーズンもクラブとして初めてシーズンを通じたクリエイティブコンセプトを設定するなど、進化の歩みを進めている。
「今までこうだったから今年もではなく、さらに進化させる。その気持ちも込めて『RISES』になっています。皆さんの想像や期待を超えていきたいんです」
1万人を「クラブとファン共通の目標」に
グレートベアーズがシーズンで最も盛り上がりを見せる取り組みが「10000人プロジェクト」。
これは、有明コロシアムでのホームゲームで観客動員数1万人超えを目指すプロジェクトである。 発足初年度から開催され、毎年クラブ主管試合最多記録を達成するなど、リーグにとっても一大イベントとして注目を集めている。
ここでなぜ、“1万人”にフォーカスしたのか。久保田代表はクラブ経営に関わる考えが背景にあったと明かす。
「経営面でもファンを増やすという面でも、1万人のアリーナが満員になるクラブというのが、様々なハードルを超えるためにも目指すべきところだと考えました。
それを具体的に掲げることで、僕らの目標でありながらファンの皆さんも主体性を持って周りにお声がけいただけるようになりました」
発足1年目、久保田代表自身もスポーツクラブの経営に携わるのは初めてだった。「バレーボールのホームゲームにどれほどの観客が訪れるのか、何をすればクラブが成長していくのか。手探りのスタートでした」と語る。
試合会場は東京体育館や有明コロシアムといった場所で行われる。であればその会場を満員にできるクラブを目指す。その分かりやすい旗印が“1万人”という数字だったのだ。
この目標に向けて、通常のホームゲームとは異なる仕掛けも多く用意されてきた。
ただここでは集客力のあるゲストを呼んで一時的に数千人を上乗せする発想には決してせずに、同じ東京のチームと情報交換を重ねる中で、自らの思想に反映させていた。
「野球チームの平日ナイター集客の話を伺っていて、球場に行けば試合をやっている。そこで『ビールでも飲みながら野球観戦しよう』という固定のルーティーンが作れることがとても強いと考えていました」
グレートベアーズにおいてもプロジェクトを継続する中で、まずは「1万人プロジェクトにはまず行く」という目的地があり、そこからファン自身が「他はどの試合に行こうか」という流れが構築されている。
地方から駆けつけるファンも増え、さらにパートナー企業もこの日を意識するようになるなど、クラブのカルチャーが自然と醸成されていった。
「よく『今シーズンの1万人プロジェクトはいつですか?』という問い合わせを受けるんです。特別な何かというよりも、宣言し続けていることが積み重ねてできた感じです」

この「10000人プロジェクト」による影響はシーズン全体にも波及している。現在クラブは年間の来場者数目標を掲げており、ファン自身がその数字を意識し、“共に達成しよう”という機運がつくられている。
久保田代表も会場でファンから「来週は自分が行けないので、知り合いを10人誘って代わりに行ってもらいます!」などと声をかけられるという。
これは当初から計画していたものではなかった。クラブが目標を掲げ、ファンが応えることを繰り返す中で、自然と生まれたものだった。
「振り返ると、まず1万人プロジェクトで『よし、達成に向けて頑張ろう』というファンの皆さんの自主的な動きがありました。
そこから僕らが年間の動員目標も掲げ始めて、そこに対しても本当ありがたいことに主体的に動いてくださる方が増えたと感じています」
グレートベアーズ誕生後に初めてクラブとの接点を持ったファンが増えてきた一方、前身のFC東京時代から応援していたファンからも、今でも会場で感謝の言葉をかけられると語る久保田代表。
「クラブを自分たちも育てている」という愛着が時代の垣根を超えて、広がりを見せている。
ただ、グレートベアーズが見据えている成長はアリーナの観客席を満員にすることだけではない。クラブを支えるパートナー企業・東京や渋谷という地域、そして次世代を担う子どもたちなど全てのステークホルダーと共にする想いを抱く。
後編ではクラブの更なる可能性、その先に描く東京グレートベアーズの未来に迫る。
(つづく)
【関連記事】
「渋谷の“みるスポ!”2025 」発足! 区と5チームが手を取り、「チーム渋谷」で地域に明るい未来を
TOKYO UNITE 「第5回 キッズスポーツフェス」を開催 マルチスポーツ体験の場は、憧れの世界と未来の可能性を繋ぐ架け橋に