
「3年ぶりの帰還」からプレーオフの主役へ クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 岡田一平が示す“一貫性”の価値
5月24日、秩父宮ラグビー場で行われたプレーオフトーナメント準々決勝。
レギュラーシーズン3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイは3連覇を狙う東芝ブレイブルーパス東京との一戦に挑んだ。
昨年決勝で対戦した両者が激突したこの試合、26-3の完勝でスピアーズはリベンジを果たしたが、その立役者の一人がSH岡田一平である。
試合開始のホイッスルとともにピッチを縦横無尽に駆け巡り、力強いディフェンスとテンポの良い球出しでチームを牽引した岡田に早くも見せ場がやってきた。
PGで先制を許した後の前半15分、ラインアウトからの自軍FWの猛攻によって得たPKのチャンス。ここで相手防御の一瞬のエアポケットを見逃さなかった。
「ペナルティを取れるだろうなとレフリーを横目で見ながら“ここはチャンスだな”と思いました」
電光石火のクイックタップから、自ら思い切ってインゴールへと飛び込んだ。「ああいう場面はすごく大好き」と試合後に語っており、大舞台でも堂々たるプレーを見せた。

約3年ぶりの出場で起こした見事な復活劇
今プレーオフという最高峰の舞台で眩い光を放っている岡田だが、そのターニングポイントとも言える試合がほぼ1ヶ月前にあった。
それが4月25日、スピアーズえどりくフィールドでの三重ホンダヒート戦。
前半26分、ここまでスピアーズのSHを担ってきた藤原忍が負傷しピッチを後にした。そこで今季初のメンバー入りを果たしていた岡田に出番がやってきた。
早大で主将も務め、16年にスピアーズへ加入。しかしチームの層が厚くなるにつれて公式戦のピッチから遠ざかり、その期間は実に約3年を要した。
チーム内でメンバー入りが発表された瞬間から、仲間たちからは「一平、行け!」と背中を押されていたという。23年4月8日以来となる公式戦のピッチ。名前がコールされると、スタジアムは大きな歓声で“帰還”を祝った。
「いつか出番は来ると思いながら続けてきました。辞めずにやり続けてきたことが、やっと出番につながりました」と当時試合後に語っており、チームそしてオレンジアーミーの期待にすぐに応えて見せた。
前半41分そして後半29分と計2つのトライを奪い勝利に貢献、プレイヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)に輝いたのである。
「元気のない自分をチームは求めていない。これまでも・これからも、元気な自分でありたいです」
その言葉通り、どんなに苦しい状況でもチームの“太陽”であり続けた男の執念が結実した、最高の復帰劇だった。

ピッチ内外で保ち続けた“一貫性”
16節後、チームは藤原の手術による長期欠場見込みと発表。そしてあの劇的な復活劇を飾った岡田が以降の試合でSHを務め、シーズン最終盤を戦い抜いた。
そしてプレーオフトーナメントの大一番でも変わらぬ輝きを放った要因について、岡田は“一貫性”を挙げる。
「ここまでいいパフォーマンスをしていい評価いただいたのは、しっかり一貫性を保ってやってきたからだと思います。特に前半すごいタイトなボールゲームの展開だったので、チームをコントロールすることを意識していましたね」
レギュラーシーズン最終節は、首位コベルコ神戸スティーラーズと対戦。29連勝中と圧倒的優位を誇っていたえどりくでの試合だったが、まさかの敗戦で不敗神話が崩れてしまった。
それでもすぐに切り替えたチームは負けたら終わりのトーナメントに向け、ここまで2週間を有意義に使っていた。
「試合の次の週に“ああやればよかった”・“こうすればよかった”というのも出ましたが、最終的に着地したのは自分たちがやってきたラグビーに立ち返ることでしたし、そういう期間になりました」

昨年の王者を開始4分・PGでの3点のみで、以降得点を与えなかったスピアーズ。レギュラーシーズンの失点数は357で、2番目に低い数字である守りを存分に発揮した。
岡田もこの堅いディフェンスに「誇りを持っている」と強く述べている。
「仲間を鼓舞しつつ、ディフェンスだから守るのではなく“しっかり攻めていこう”と声をかけました。前半の中盤からディフェンスの時間がすごく長かった。自分たちにボールが回ってくるまで・トライのチャンスが訪れるまで、我慢のしどころだと考えていました」
岡田の“一貫性”はピッチの中だけではなかった。出場機会に恵まれない時期もあった中、そのマインドセットは変わることはなかった。
16節の試合後にも「諦めたらそこで終わりなんで。やめないってことが自分の中では一本筋で通っていた」と語っていたが、ここでも「諦めない・やめないは当たり前です」と即答した。
「ただ頑張っているだけではなくて、しっかりアピールするところはアピールするし、しっかりやるべきことはやる。“やり切る”ことが大事だと思います。それは試合出る・出ない関係なく、それをこれからも続けていきたいです」

最後に述べた感謝の言葉
16節の際には「サプライズだった」とも語ったメンバー入りから、スターティングメンバーとして、スピアーズの救世主となった。その要因について問われると、謙虚にこう答えた。
「チームでも個人でもずっと積み重ねてきたものの中から、一つチャンスを見逃さなかったというだけだと思います。
ただ、そのために僕が特別何かをしたということはないです。思い切る背中を押してくれるチームメイトだったり、コーチだったりスタッフも僕を信じてくれているのが大きいです」
準々決勝を突破したスピアーズが次に挑むのは、31日に行われる埼玉ワイルドナイツとの準決勝。プレーオフの主役に躍り出た男が魂のタクトを振り、チームをふたたび頂点へと導いていく。
(写真 / 文:白石怜平)
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