
初の決勝で響かせたスティールの雄叫び 廣瀬雄也が新たに築くスピアーズの未来
6月7日に国立競技場で行われた NTTリーグワン2025-26 プレーオフトーナメント決勝。クボタスピアーズ船橋・東京ベイはコベルコ神戸スティーラーズとの激闘の末13−22と敗れ、2年連続で優勝にあと1勝届かなかった。
ノーサイドを告げるホイッスルが響いた瞬間、スピアーズCTBの廣瀬雄也は、静かに天を仰いだ。敗戦の悔しさを受け止めながらも、前を向いて試合を振り返った。
「自分がもう少し動けば防げたペナルティもあったかもしれないし、逆に3点につなげられたプレーもあったかもしれない。今は判断できないので、しっかりと映像を見て反省しながら次に成長できるようにしたいです」
昨季もシーズンから出続けていたが、最後の出場は準々決勝まで。つまり決勝で国立の舞台に立つことは叶わず、決勝はスタンドから見つめていた。
そこから一年、今季同じ舞台にスターティングメンバーとしてピッチに立った心境は特別なものがあった。
「去年は出ずに負けたので悔しさがありました。今年は実際に試合に出て、自分の力不足も含めて新しく経験できたことがたくさんありました。
大学(明大)の時の決勝とはまた違いました。周りを見れば世界のスーパースターたちがいて、その中で自分がこのフィールドに立っているというのはすごく誇りでしたし、自分にとっていい経験になりました」

決勝の舞台でも攻守にわたって存在感を示し、スピアーズに欠かせない存在へと成長したことを証明した。それは前半34分、相手ペナルティを誘ったスティール成功の瞬間である。
ホイッスルが鳴った瞬間、大きく吠えて感情を爆発させた。その姿は国立のスクリーンに映し出され、50,451の大観衆に強いインパクトを残した。
「あれはずっとストーミー(スコット・マクラウド アシスタントコーチ)から『センターもジャッカルを狙え』と言われていて、昨日までストーミーと1on1で練習していたんです。その成果が決勝の舞台で出せたので自信になりました」

大舞台で生まれたプレーは決して偶然などではなかった。シーズンを通して取り組み続けてきた課題であり、かつ決勝の前日まで反復していた練習の成果だった。
ビジョンに映し出された自身の姿も目に入ったそうで、少し照れながらも自信を述べた。
「決勝の場でできたことがすごく自信になりました。ただ、叫びすぎて自分の映像を見た時にちょっと冷めてしまいましたね(笑)。
一つの大きな武器になると思うし、しないといけない。フォワードの選手たちも『バックスが取ってくれたらありがたい』と言ってくれましたし、自分の中でも新しい武器になると思います。来年はもっと狙っていきたいです」
今季の廣瀬は第5節にシーズン初出場すると、以降この決勝戦まで全て出場を果たしてチームを支え続けた。
リーグ戦からプレーオフまで戦い抜き、さらに日本最高峰の舞台で経験を積み重ねたことで確かな成長も感じている一方、決して満足などしていない。シーズンを通じて成長したポイントを明かしてくれた。
「スキルはまだまだ伸びるところがいっぱいあります。トライにつなげられなかった場面もありますし、振り返れば改善できるところはいくらでもあります。
ただ、このシーズンを通してリーグワンのハイコンタクトにも少しずつ慣れてきたと思います。ただ、来年の開幕で元に戻っていたら意味がないので、継続していきたいです」

チームでは世代交代も進みつつある。これまでスピアーズを支えてきたピーター”ラピース”ラブスカフニやバーナード・フォーリー、ゲラード・ファンデンヒーファーなどがチームを卒業する。
ベテランたちから、新たな世代へ。その中心を担う一人として、廣瀬も自覚を強めている。
「自分たちがスピアーズに入る前に、ここで勝ちました。(23年のリーグワン制覇)。さまざまなことを経験して、スピアーズの歴史が築き上げられていると思いますので、この悔しさや新たに経験したことをしっかりと次にスピアーズに受け継いで、またここに戻って来たいです」

世界を知る偉大なベテランたちがチームを支える時代から、新時代へ。廣瀬の視線は、すでにスピアーズの未来を背負う当事者としての覚悟に満ちていた。
スピアーズのジャージをまとった若き万能BKの進化の時計は、この敗戦の瞬間からより一層激しく、力強く回り始めている。
(写真 / 文:白石怜平)
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