
クラブ通算100キャップ達成の松橋周平 チーム躍進の源は“ミスター・ブラックラムズ”のリーダーシップ
4月17日の秩父宮ラグビー場は試合後、ひときわ大きな拍手に包まれた。
NTTジャパンラグビー リーグワン第15節。リコーブラックラムズ東京が三重ホンダヒートとの一戦を制し、プレイヤー・オブ・ザ・マッチ(POTM)には松橋周平が選ばれた。
この試合でクラブ通算100キャップを達成した“ミスターブラックラムズ”。2016年の入団から黒のジャージを着て戦い続けてきた男が、節目の記録を打ち立てた。
この日もFLとして先発し、80分間フル出場した松橋。試合の入りから接点で前に出続け、ブレイクダウンでプレッシャーをかけながら試合の流れを引き寄せていった。
試合後、チームとしてあるテーマを持って臨んだことを明かした。
「最初の20分がキーになるというのは分かっていました。データ的にも、先にスコアを重ねたチームが勝つ確率が高いので、そこをすごく大事にしました」

その前の14節で対戦したコベルコ神戸スティーラーズ戦での反省を踏まえ、エフォートとフィジカルといった原点に立ち返って一週間準備を重ねた。その結果が、前半で39−0というリードに繋がっていた。
ここで述べられた“最初の20分”というのは、その直前に話を聞いた大西将史も同様に語っており、チームとして統一した意識であることを示していた。
では、なぜ入りの20分なのか。松橋にその根拠を問うと、データのみならず先を見据えたマインドセットがあった。
「フィジカルでのディフェンスを最初からどれだけ集中してやれるか。目の前の相手だけでなく、トップ3に対してもそれができるかできないかは大きなポイントになると考えているんです」
ブラックラムズの価値として輝くリーダーシップ
試合後、記者会見場にTJ・ペレナラが記念Tシャツを着て現れた。今季キャプテンとして牽引する世界最高峰のスクラムハーフは、戦友に対して賛辞を送った。
「グラウンド上での活躍は誰もが見ている通りだと思います。決して大柄な体格ではないですが、彼はヘビーなプレーができる。強いタックル、そしてブレイクダウンで相手を苦しめることができます」
接点での強さやボールへの影響力。それはすでに多くの人が認識している価値である。ただ、ペレナラはその先にある本質に言及した。
「我々のクラブにとって彼の最も大きい価値はリーダーシップだと考えています。
私はゲームデーのキャプテンを任されていますが、日本人ではないので異なる環境で育ってきた選手たちをリードすることは難しい部分もあります。ですが、その中で松橋がリーダーシップを見せてくれています。
ロッカールームでの姿勢など、皆さんには見えない部分での振る舞いでの影響が特に大きく、私はそういった点でも大きな存在だと感じています」

実際、松橋自身もその役割を自覚していた。
「人間なので緩みや慣れが出る時もあるのですが、長い間ブラックラムズに在籍しているので、気づいた時にはみんなを集めて言います。
外国人選手に対しても、もしスタンダードが足りなかったら遠慮せずにしっかりと伝えます。それが僕自身のやれる役割だと考えています」
誰がキャプテンかに関係なく、「全員がキャプテンとして振る舞う」チーム。その文化を創り上げる中心に松橋がいた。
「自分がコントロールできることに目を向ける」
なお、この試合までの1週間はチームメイトから祝福を受けながら過ごしたそうで、
「チームメイトがこの一週間、僕をサポートしてくれて、今日も記念Tシャツを着させてくれた。なかなかない貴重な経験ですし、本当に幸せです」と笑顔で語った。
ただここまでの道のりには、想像を絶する苦難の期間も短くなかった。大学時代に1回・ブラックラムズに入団後に2回と、計3回膝の前十字靭帯断裂を経験した。ワールドカップの日本代表入りを視野に入れながらもこの怪我で逃してしまったこともあった。
それでも、心が折れることはなかった。壮絶なリハビリの日々はむしろ成長の期間へと転換してきた。
「大怪我を2回・3回と繰り返して、代表のチャンスを逃したこともありました。でも、起きてしまったことに対してどうリアクションするか。自分がコントロールできることだけに目を向ける。
それが本当に大事なことだと思っています。他人に期待するよりも、自分がやれることをしっかりやる。その強い気持ちをずっと持ち続けることができたから、今があります」

今後も勝ち進むために「瞬間瞬間のディテールを意識」
節目の記録を達成したが、抱く向上心は決して留まることはない。自身のパフォーマンスも「今すごくいい感じに来ていると思っています」と手応えを述べる。
現在4位と現実味を帯びてきたプレーオフトーナメント進出を実現させ、以降も勝ち進むべく、自身の強い想いを最後に語った。
「バックローの選手たちがみんな素晴らしいパフォーマンスをするので、自分も負けたくないです。でも、そこで意識するのは“瞬間瞬間のディテール”です。
ジャッカルやボールキャリーといった個別のプレーもそうですが、80分間細かいプレーを高いレベルでやり続けたい。僕がそれを全うできれば、チームが勝つチャンスは必ず増える。そう信じています」

クラブ100キャップという数字は、不屈の闘志を示し続けた男にとってあくまで“通過点”。
己をコントロールし、スタンダードを追求し続ける松橋周平の背中は、これからもブラックラムズに決して揺らぐことのない誇りと勇気を与え続ける。
(写真 / 文:白石怜平)
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