千葉ドリームスター 「第23回全日本身体障害者野球選手権大会」初出場。発足10年で手にした夢舞台の記録(後編)

城の猛打と関東MVP篠原の好投で選手権初勝利

前日の敗戦が残る2日目。まだ緊張と悔しさから重い雰囲気がありながらも

「但馬に来たからには1勝して帰ろう!」

自然とナインの間で湧き出た合言葉を胸に、大会初勝利へと臨んだ。この日は第1試合、8:30プレーボール。前日同様に100分制で行われた。

対戦相手は龍野アルカディア(東近畿:以下、龍野)。ドリームスターは毎年静岡で開催される大会「ドリームカップ」で過去2度戦っておりいずれも敗れている。

今回3度目の正直で龍野、そして選手権初勝利を目指す。この試合、並々ならぬ想いで臨む男がいた。

投打でチームの主軸を担う城武尊(たける)。

大舞台での経験豊富な城

広島県出身の24歳は、両腕に1本ずつある橈(とう)骨が生まれつき左腕だけなく、左手の親指と人差し指がない障害があり、主に右手でプレーしている。

小・中学と健常者チームに在籍し、高校では身体障害者野球チーム「広島アローズ」に入団。同時にバドミントン部にも所属し、呉市の大会で準優勝を飾る。広島国際大学時代も軟式野球部でも主将を務めるなど高いレベルのプレーを続けてきた。

また、もうひとつのWBC”と呼ばれる世界身体障害者野球大会の日本代表にも選ばれており、身体障害者野球を代表する選手の1人である。

アローズ時代に何度もこの地を訪れていた若武者は、初戦の後も前回覇者の岡山桃太郎や今年の選抜大会覇者である名古屋ビクトリーの試合を最後までスタンドから視線を送っていた。

「自分たちも今グラウンドにいないといけなかった。スタンドで観てるのが悔しい」と自らを奮い立たせていた。

この日も「このまま負けられない」と前日2安打の勢いそのままにバットを振り抜いた。力強い打球はレフトへのタイムリー二塁打となり先制点をもたらした。

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