
原辰徳氏が子どもたちへ託した“ベストを尽くす”という原点 サンリオベースボールアカデミーで伝えた未来への道標
5月末に横浜スタジアムで行われた「サンリオベースボールアカデミー」。
神奈川県内の33チーム、339人の小学生が集まり、グラウンドは子どもたちの笑顔と熱気に包まれた。そして今回も総監督を務めたのが原辰徳氏。
2009年の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で侍ジャパンを世界一に導き、本アカデミーの持つ理念”世界へチャレンジしてほしい”を体現する名将は、子どもたちに野球そして言葉で未来への道標を示した。
(写真 / 文:白石怜平)
自ら説いたプレッシャーとの向き合い方
多くの子どもたちが白球を追いかける姿を見守った原総監督。この場所で最も強く伝えたかったのは“技術”ではなく、“野球ができることそのものの価値”だった。
「まず野球ができている喜びを感じてもらいたい。野球チームに入るというのは、監督さんであったりご両親といった周りの人たちに支えられながら、野球ができているんだと。
どこかに感謝という気持ちを持ってほしいですし、自分がチームに入って好きな野球をやれることはすごく幸せなことなんだ、というのを伝えたいですね」
冒頭の挨拶で原総監督は「皆さん、今日はベストを尽くして頑張っていきましょう」と呼びかけていた。感謝と共に託した“ベストを尽くす”に込めた想いも、会の取材で明かしてくれた。
「私は最初にそう言ったのですが、それはミスター・長嶋茂雄。我々が尊敬する野球人であるミスターはとにかくベストを尽くしたんです。
彼らはまだ無限の可能性があるわけですから、野球であったり学業であったり、社会のルールの中で常にベストを尽くしてほしい。そういう想いです」

守備編では内野手の動きを見ていた原総監督は、ノックを打つなどで子どもたちとの絆を深めた。守備練習を終える際に、大人になってからも活かし続けられる金言を授けた。
アマチュア時代は甲子園や全日本大学野球選手権大会の舞台で戦い、プロ入り後は巨人軍の4番そして監督を務めるなど、常に重圧と向き合ってきたからこそ語れる言葉だった。
「みんなプレッシャーに強いとか弱いとか言うよね?プレッシャーがかかっているということは、自分が一生懸命やっているということなんですね。
『プレッシャーがかかったなぁ…』と思うことは恥ずかしいことでも何でもない。『いいプレーをしよう!頑張るぜ!』という時は、みんなそういう気持ちを抱えています。
だから、プレッシャーを感じた時でも1つのプレーを大事にしてアウトにする。そしたらすごく気持ちが前向きになって楽しくなる。だから自分が“プレッシャーかかっているな”と思ってる時は、上手くなろうとしている証なんだよ」

“伝道師”として未来に野球の可能性を拡げる
昨今、競技環境の多様化や少子化といった外的要因もあって野球人口の減少というネガティブな話題がクローズアップされる。しかし、今日グラウンドに広がった子どもたちの笑顔には、野球界の明るい未来が凝縮されていた。
原総監督にこの日を踏まえて野球界の未来について抱いていることを質問した際、このように答えてくれた。
「子どもたちがプロ野球選手であったり、あるいは甲子園に行きたいとか、夢や目標を持って目指すことそのものが野球界として発展する要素なわけです。
私は少し格好よく言うならば“野球の伝道師”的な立場でですね、『野球って素晴らしいんだよ』『野球って難しいけども面白いんだぜ』といったことは伝えられますし、それが我々にとって一番の義務です。
そういう意味では、今日元気よく明るく夢や目標に向かっている姿というのは頼もしく見えました」

最後は子どもたちを教える指導者についても言及。野球の持つチームスポーツという要素を踏まえながら、指導者としての深い洞察に満ちた持論を展開した。
「野球にもルールがあって初めて成立するものですよね。チーム内でのルールであったり、あるいは野球のルールであったり。それはチームスポーツをやるうえで重要なことだと思います。
技術というのはね、早く上達する人もいれば、少々時間がかかって中学生あるいは高校生になって伸びる人もいるので人それぞれです。
なので技術先行というのをあまりせずにですね、全体で守らなければいけない規則や決め事を伝えて守っていくように努めることが必要だと考えています」
“野球の伝道師”として子どもたちの未来を照らした原総監督 。伝えた言葉の一つひとつには、長年野球界の頂点で戦い続けてきた重みがあった。
子どもたちがこの日の学びを胸に、どんな未来を描いていくのか。その歩みが、野球界の新たな希望となっていく。
(了)
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