
世界一を知るレジェンドたちが未来へ残した言葉の数々 「BEYOND OH!PLAY KIDS」で届けた夢と挑戦のバトン
6月14日、明治神宮外苑で開催された「BEYOND OH!PLAY KIDS」。
「一般財団法人 球心会」が主催するイベントは、体験を通じて野球の楽しさを知るだけでなく、子どもたちの未来を育む学びの機会も設けられた。
終盤に行われたレジェンド・トークでは、第一部で王貞治代表が夢や目標の大切さを共有。第二部では世界一を知るアンバサダーも加わり、質問を通じて子どもたちへ金言の数々を授けた。
(写真 / 文:白石怜平)
MLBで世界一に輝いた2人のレジェンドが登場
レジェンド・トークの第二部で登壇したのは井口資仁氏と上原浩治氏。
共にMLBでワールドチャンピオンに輝いており、世界一を経験した2人でもある。この前には子どもたちとキャッチボールを行う「ドリーム・キャッチ」にも参加しており、引き続きの参加となった。

レジェンド・トークでは夢や目標がテーマとなっており、第1部では王代表が“世界の本塁打王”という大きな夢を掴むまでの過程を語った。
ここではまず、2人がMLBへの夢を抱き始めた時期についてが最初のトピックに。井口氏は、MLBを目指すようになったタイミングについて以下のように述べた。
「子どもの頃には考えたことなかったですね。私が大学生の時に野茂(英雄)さんが活躍されて、そこからようやくメジャーが少しずつ近づいてきた感覚でした。野手では2001年のイチローさんが先ですから、私はプロ入ったぐらいからですかね」
上原氏は大学時代に国際試合での活躍が評価されるなどで、MLBの球団からもオファーが来ていた。その当時の心境を思い出すように話した。
「僕はプロに入る時に、日本のプロ野球かメジャーかで迷いましたね。実際アメリカに視察も行きましたから」

そして井口氏は05年にホワイトソックスに、上原氏は09年にオリオールズに入団し念願のMLB挑戦を果たす。
井口氏は初年度から二塁手のレギュラーとして勝利に貢献しチーム88年ぶりのワールドチャンピオンの原動力に。
上原氏はMLB移籍2年目からリリーフへと転向し、13年に移籍したレッドソックスではシーズン途中からクローザーを務め、同年リーグチャンピオンシップシリーズのMVPに輝く。
そしてワールドシリーズでも世界一の瞬間をマウンドで迎え、“胴上げ投手”にもなった。
野球人として最高の栄誉を手にした2人だが、決して順風満帆だったわけではない。ここでは、途中壁にぶつかった時にどう乗り越えていったのかを問われ、それぞれ答えていく。まず井口氏が主に打撃面の観点から回答した。
「バッティングは3割打てばいいバッターと言われるぐらいで、10回やれば7回失敗します。なのでそこは自分の中でしょうがないと割り切ってやってましたし、守備でエラーした時もそうですけど、同じミスを2回繰り返さない。
繰り返してしまうとベンチの信頼性もなくなりますから。失敗することはもうしょうがないので、それをしっかり反省して、次にどう生かしていくか。
キャンプからポストシーズンまで考えたら200試合近くありますので、引きずらないようにしっかりとリセットして次の日に臨むっていう、切り替えをしっかりやっていましたね」

上原氏もMLBでは毎試合のように投げる可能性のあるリリーフを主に担っていたことから、切り替えの重要性を続けて語った。
「僕は中継ぎとか抑えになってからは、“12時”ですね。12時で日付を跨いだら『もう昨日のことなんだ』と、そういう気持ちの切り替えですね。特に“New Day”という言葉をアメリカの選手はよく使うですが、打たれた次の日のはもう笑顔で球場に行くようにしていました」

子どもたちの質問に3人が向き合う
中盤からは王代表が再び登場。井口氏はホークス時代、上原氏は06年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で監督と選手の間柄で、球心会では昨年12月の「野球界の未来会議」で共演して以来となった。
参加者はこれからの未来をつくる子どもたちが中心で、ここからは質問コーナーを通じて交流を深めた。
レジェンドたちに質問しようと次々に手が挙がり、多くの問いが寄せられた。打撃面では「チャンスの時は何を考えていますか?」という質問には、王代表と井口氏が答えた。
巨人の3番、4番としてV9など幾度の優勝に導いてきた王代表。通算打点はNPB史上最多となる2170と、チャンスでの期待に応え続けた大打者がその心構えを説いた。
「チャンスの時はやはり“打たなきゃ”という思いは強いです。だけどその強い気持ちが邪魔をしちゃってね、自分の本来の力を出せないケースもあるから。
僕もそういった経験があるんだけども、君たちはこれから大きくなったら、あんまりそういうことを考え過ぎないない方がいいね。その方が普段の自分の力が出せるんじゃないかなと思います」

井口氏も日米通算1222打点をマークし、ホークス時代には王監督の元で“100打点カルテット”の一角を務めたほどの強打者。チャンスに強い理由をここで知ることができた。
「私は常に『チャンスで回って来い!』って思っているタイプでした。なので、いつも想定して、『満塁で回ってこないかな』というのを必ずイメージしているので、チャンスで打席立った時にはリラックスして立ててましたね。
このイメージができてないと、急にチャンスになっても王会長が言われたようにマイナスになってしまうかもしれないです。なので常にチャンスをイメージしながら『自分に回ってこい!』思うことが大事だと考えています」

中にはチームに所属していないが、野球の練習を自主的に続ける小学生も参加していた。そんな野球少年から、「コントロールを良くするにはどうしたらいいですか」という問いが寄せられた。
制球力の高さで、NPBのみならずMLBでも注目された上原氏が答えた。
「一番基本はキャッチボールをしっかりとやって、狙ったところにきちんと投げるのと、あとは的当てですね。自分の場合は壁当てでしたけども、目標を作ってそこに投げれるようにやることが大事かなと。
バランスはまだそこまで気にすることもないですし、技術的な部分は中学・高校でも遅くはないと思うので、まずはきちんと投げることを大事にしてほしいな。
キャッチボールは胸あたりを目がけて投げるイメージ。胸あたりなので、狙い過ぎちゃうと『ここに行かなきゃいけない』となると、マイナスになってしまうので、先ほどの話のようにプラスのことを考えて胸の辺りでいい。
キャッチボールを何球も何球もやると、その自分の感覚を掴めると思うので、一生懸命練習してほしいと思います」

さらには他のスポーツをやっていて、野球が好きという小学6年生からメンタルについての質問も。4万人規模の大観衆の視線を受け、チームの勝敗を背負って戦ってきた3人が、それぞれの経験を明かしてくれた。
まず王代表が、打席での心境について語った。
「メンタルは大事だよね。僕はね、長く野球をやってきて思えたんだけど、『ここに立てるのは自分しかいないんだ』と。若い時はあまりそんな風には思えなかった。
思えなかったんだけど、打席に入るのは一人だからね。自分がやるしかないんだから、あれこれあれこれ考えてもしょうがない。だから自分のバッティングしようと考えるようになってからはね、だいぶいい結果が出るようになってきたよね」

井口氏も王代表のように選手そして監督も経験し、様々な選手と接してきた。プロ野球選手として成功する分岐点に、このメンタルも関係してくると考えていた。
「プロ野球選手の実力って同じぐらいだと私は思っています。それで最終的に成功するかどうかの分かれ目って、やはりメンタルが強い選手だと思うんですね。
そう考えた時に、『自分はこれだけ練習したんだから自信を持って臨める』となった時に自分に勝てると思うし、どこかで不安があったら乗り越えるのは難しいと思います。
なので普段の練習をしっかりやって、『これだったらいつでも試合で打てる』といった自信をつけられれば、メンタル面はクリアできると思いますね」

上原氏もキャッチボールの時に答えたことと一貫していた。シンプルかつ分かりやすく、少年の心に届く回答を送った。
「マイナスなイメージは絶対持たないことだと思います。自分がうまくいくイメージを持つ。そういうメンタルって大事だと思うんでね。
マイナスのことを考えると体もそっちの方に行ってしまうので、やっぱりプラスのことを考えて、いろんなことに臨んでほしいです」

第一部を含め約1時間近く行われたレジェンド・トークは学びに溢れた1時間となった。子どもたち、そして大人にとっても未来の糧になる言葉の数々は、野球を通じてまた明るい未来を照らすものになった。
(了)
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